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本書は小学館新書のひとつだ。新書というのは一般的に大きく分けて2タイプあり、一つは岩波や中公などの「教養新書」(時事的なテーマもこちらに含まれる)、もうひとつは私も携わるじっぴコンパクト新書などの「雑学新書」である。どちらも執筆者は読者になにがしかを「教える」ことが共通している。しかし、本書はそのどちらにも当てはまらない。

たぶん、著者も編集者もそれぞれ相当に悩んだのではないかと思う。なぜならば、普通の出版社・編集者ならば、「456回の記録を全部、羅列して下さい」というに違いないからだ。ところがそういう本ではない。悩んだ軌跡はタイトルが物語っている…と思う(この段落は私の妄想)。

僭越ながら、よくぞ著者はこの形で書き切った…とさえ感じる。旅と人生の吐露。決して「456回の記録」という書き方ではないのに、456回の思いは十分に感じ取ることができる。いや、乗車だけではない。その何倍もの「見送った」回数の思いも、さらに全ページの行間を厚くしている。私が大好きな「この著者でなければ書けない、著者の思い」がたっぷり詰まっている。これまた僭越ながら、見守った編集者にも賛辞を贈りたい。

読んだ人に気づいて欲しいので詳しく書かないが、帯のイラストは大変重要な意味を持っている。本書の緻密な設計が、当初からのものなのか徹底した話し合いの産物かはわからないのだけれど、「新書」のパッケージながら「新書」らしからぬ形で、とにかくすべて完璧な方向で仕上がっている。安価ということもあり、多くの旅好き、とりわけ北斗星に一度でも乗ったことがある人、北海道への思いを募らせている人たちに、読んでほしいと思う。

* * *

さて、そもそも鈴木周作さんが北斗星に乗るようになったのは、あまりに多忙な日常から突発的に抜け出すときに北斗星に乗ったことから始まる。そのくだりを電車の中で読んでいて、目頭が熱くなってしまった。なぜなら、同じようなときに、私も北斗星を含む「北海道」に助けられたことがあるからだ。以下はすべて私の話だ。

5年間ほど、休日などまったく取れない日々を送っていた時期があった。2002年1月は、20日頃までにしなければならないことが、10日木曜日になっても決まっていなかった。その週末の3連休は、気持ちばかりは焦るが、することがない。ならば…ということで、有楽町駅に向かい、ぐるり北海道フリーきっぷと、11日金曜日夕方発のやまびこ49号、はつかり25号、はまなすを予約した。娘はまだ小さかったので家を空けるのはためらわれたが、妻は出かけるのを薦めてくれた。



2002年1月11日金曜日の夕方、2、3泊分の簡単な着替えと、でかい三脚、カメラとレンズ2本をモンベルのダッフルバッグに入れて東北新幹線に乗った。まだ盛岡までの時代だ。はつかり、はまなすと乗り継いだ。深夜の函館駅での機関車交換作業は、見ている人などだれもいなかった。

 

札幌に着き、そのまま稚内へ向かった。ただ、果てに向かいたかった。音威子府で各停に乗り換えた。どうせ稚内からの折り返しまで間があるので、確か下沼と兜沼か、ふたつの無人駅に立ち寄った。


スーパー宗谷4号が発車する頃には夜のとばりが落ちていた。

まったくのノープラン。札幌で、帰り…13日日曜日発の北斗星4号のB個室寝台を確保する。15日月曜朝に帰ってもよかったのだが、もう満喫したのでちょっと早めに帰ることにした。その晩は札幌に泊まり、13日日曜は根室まで往復して南千歳から北斗星に乗った。個室の中で、空を仰ぎ見ながら、いろいろとしみじみしてしまったことははっきりと記憶している。スリーブが見つからないので、マウントしてあったED79への交換を貼る。電源車は50系改造のマニ24 500番台である。



* * *
北斗星に初めて乗ったのは1996年12月。それ以前に3回、鉄道で渡道しているが、はまなす/海峡、海峡/海峡、はまなす/はつかりで、北斗星に乗ろうとはたぶん思ったことがなかった。以降の乗車記録。基本的には、いい「移動手段」だった。思ったよりも乗っていないなと思った。

・1996年12月 上野→札幌 B開放 ディナー利用(旅行)
・2002年1月 南千歳→上野 Bソロ(突発)
・2003年1月 札幌→上野 Bソロ(撮影)
・2004年12月?(撮影)
・2005年6月?(撮影)
・2005年10月 上野→南千歳 (家族旅行で一人先に)
・2007年8月 札幌→上野 B開放(家族旅行で一人帰京)
・2008年6月 上野→洞爺(撮影)
・2008年6月 洞爺→上野 B開放(撮影)

こうして北斗星のことを思い返すと、もう一度乗っておきたくなる。それも「移動手段」として。5月か6月頃、なんとかやりくりして行ってきたいものだ。そして、乗るなら「下り」がいいと思っている。

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