水内橋を渡り、県道166号を西へ走る。影谷という谷を詰めると、峠の手前に「奥」という集落がある。そこで目にしたのが、この上路トラスだ。このあたりの県道はとても細くなっていて、この橋は私道のようにも見える。
普通の上路トラスは下弦が兄弟と接しているが、この橋は上弦が橋台と接している。なので「上路」とだけ呼ばずに「逆」と呼んでみることにした。この場合でも部材が受け持つ圧縮と引張の位置関係は変わらないと思うが、なんともお手製のようなこの橋は、さて。
(画像は中公新書のサイトより)
同名シリーズの第三弾。カラー新書で256ページもあり、それでいて1050円という驚くべきボリュームの本だ。 既刊の『地図と愉しむ東京歴史散歩』『同 都心の謎篇』は、どちらも1万分の1地形図などを掲載しつつ、地図から見つけられる不思議なことを紹介していくものだった。地図をテーマとした本は数多あるが、たいていの場合、著者が見つけて披露したいことと、読者が興味を持つ場所とは異なる。読者が関心を持っているのはかなり狭いエリアではないかと私は思っている。 本書のように「東京」と絞るのは、一見、本の売り方のセオリーに反するのだが、東京の人口、知識欲のある人の割合の高さ(※個人の印象です)からして東京オンリーというのは十分になりたつ。本書は、内容をこの2年ほど特に世間的な関心が高まっている地形に振ったものだ。地図にも、新たに5mメッシュ標高データをカシミール3Dで重ね合わせたものとなっていて、直感的にわかりやすい地図となった。 * * *
第一部として「東京の不思議な地形を歩く」、第二部は「東京お屋敷山物語」と題して全11章仕立て。本書の特色というか、著者が書きたかったのはこの第二部だろう。 第八章 元老・元勲の山 第九章 宮さまの山 第十章 華族の山 第十一章 富豪の山 都心の「山」のお屋敷リスト という構成となっている。よくもまあ、これだけの動静をまとめたものだ、と思う。 『「水」が教えてくれる東京の微地形散歩』を制作したとき、五千分一東京図測量原図(いまはカシミール3Dのタイルマッププラグインで簡単にできる)や大正6年の地図に標高データをカシミール3Dで与えたところ、とくに東京の南部は高台の上が真っ白=大邸宅であることが顕在化した。当時の地図において、お屋敷は、どういう基準なのか私にはわからな いが、「閑院宮邸」「三井邸」「山本邸」(権兵衛)等の情報が書いてあった。それらを丹念に拾い、現在の地図ではどうなっている かを見て、そこから考察に進めていく。そのためにはそこに住んでいた人の家系、業績も知っていなければならず、著者が本書のため にした下調べの量を考えると気が遠くなる。 本書でおもしろいのは、単に事実の羅列をひたすら展開するのではなく、例えば宮さまがなぜそこに住んだのか、なぜその土地を手放したのか、その後どこに転居したのか、その後土地を手に入れた人は誰で、どういう考え方をしているのか…等まで考察されているこ とだ。これは、従来の、土地を読み解くだけの本ではなしえないもので、著者の丹念な調査あってのものだろう。しかし、両刃の剣でもあり、そこに出てくる名前や業績を、つい手元の端末で調べながら読んでしまう。だから、なかなか読み進まない。 これは、単なる土地利用だけでなく、土地やその形状は人(ここでは政治家や実業家)の生活とも密接に結びついていることの裏付け でもある。本を読み進むことによって、土地と人との関係を自然に感得できるのが、この本のすばらしい点だ。 とはいえ、まとめた地図と文章だけでは、宮さまや将軍家の幕末~明治時代の動きを知らない私のような者には、いささか頭に入ってきづらい。実業家だって、彼らの閨閥が頭に入っているわけではない。こういう場合に電子地図または電子書籍が活用されるといいなと思う。たとえば宮さまの邸宅は赤、実業家は青、政治家は緑…というように色分けし、それをべきで、明治初期・中期・後期・関東大震災後・戦前・戦後・昭和30年代・40年代の地図にプロットしてアニメーションにすれば、宮さまの邸宅ができ、実業家の手に渡り、やがて庶民のマンションになる、というようなことや、潮が引くように都心から大邸宅がなくなり、そこが公共または商業施設になっていくさまがよく飲み込めると思う。 電子地図会社が音頭を取って、各社の地形本をそのようにする、などという動きがでないものだろうか。といっても、課金がなあ…。 |
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