昭和59年(1984年)3月末に廃止された国鉄赤谷線の、東赤谷駅の先に日鉄赤谷鉱業所の専用軌道があったのは広く知られている。平成10年(1998年)に廃止になった…はず。いま思えば、クルマやバイクなら自宅から1時間ちょっとで行ける場所にこんな鉄道があったなんてにわかには信じ難いが、自転車で30分の距離にあった専用線すら行ってないのだから灯台もと暗しというかなんというか。
周辺にはひとつ有名なプラットトラスがあるのだが、今回はこちらの鈑桁。 けっこうな高さがある。スパンは十数メートル程度か。このプレートガーダーは、まるでターンテーブルの桁のような魚腹型をしている。この手の桁は、ターンテーブルとかクレーンのビームでしか見ない気がする。桁の中央部がもっとも力がかかるので理にかなってはいるのだけれど、不自然さは残る。 桁の向こう側には旧橋の橋台が残る。 向かって右の柵ごしに。 その柵の手前には駒止つきの路盤跡。画面左下方向には比較的新しいコンクリート製の隧道があり、数メートル奥でコンクリートで封鎖されている。 対岸から桁の上面。こうしてみると、軌道幅610mmというものの「狭さ」がよくわかる。同時に、ここまで幅広いフランジ(桁上面。I型の桁の上面)が必要なのかとも思ってしまう。もっとフランジ幅を狭くしてもいいのでは? なかなか厳しい場所にあり、桁を接近しづらい。この桁の出自がわかると面白いのだけれど。 PR
ハイキングというか、そういう感じの人たちがたくさんくつろいでいる聖湖のすぐ近くに、三菱石油がある。勾配の途中にあるので、真正面から撮ろうとすると、迷う。偶然、ネットでこの給油所を見つけて行ってみたのだけれど、そこに掲載されていた状態からずいぶんと劣化してしまったようだ。数年前まではきれいだったようだ。
サービスルームの真正面にはガソリンの計量器。右のメーターの上には「ダイヤモンド」。メーターの下には、ほとんど読めないけれど「有鉛」。左のメータの下には「無鉛」。この計量器は昭和47年10月タツノ製、型式はSW-722、使用期限は昭和52年10月。 ということは、閉鎖されてから25年以上たっているというのか。 サービスルームの庇に書かれた「三菱石油聖高原給油所」、こういう直線的な字体は大好きだ。1990年代後半からずっと人気が高い、なんというのだろう、カタカナにマッチするフォントに通じるものがある。右の破れた窓に描かれた文字は「マスヤ石油」と読める。計量器の左に転がっているのは、タイヤ保管庫だろうか。 北側の防火壁。南に面している。 南側の防火壁。北に面しているからか、こちらは色が残っている。オレンジの上に小豆色、そのさらに上にスリーダイヤを貼り付けたように見える。 Veedol MOTOR OIL。Hi DIAMOND HI-DELUXE。これは正面奥、東を向いている。 NO SMOKING。 サービスルームに向かって右にあるこの計量器は、ガソリン? 銘板から文字は消えているが、刻印が「SPM-605」「43年10月」とある。 そして。 三菱灯油。子どもの頃、空き地によく一斗缶が転がっていた。そこにはたいてい、この太陽のマークが描かれていた。この計量器のものは手書き。ここで働いていた人の動きが見えるようだ。 太陽マークに出会えないかちょっと気にかけていたのだけれど、やっと出会えた。…どこかに一斗缶が転がっていないだろうか?
ふだん、小説はほとんど読まない。嫌いなわけではまったくなくて、興味を持った分野の解説書を読む以上の時間がないからだ。書店に行けば、なんと魅力的な装丁とストーリーを盛った文芸書がたくさんあることか。私はそれらには目をつぶっている。
柴田よしきさんの『夢より短い旅の果て』を手に取ったのは、カバー写真を丸田祥三さんが手がけたこと、柴田さんが鉄道がお好きな作家さんだとうかがっていること、角川書店の『本の旅人』で本書の書評を友人のオオゼキタクさんが書いていること、などで興味を持ったためだ。 とにかく面白かった。どう面白いとか書くとネタバレになるので書かない。鉄道が好きだろうとそうでなかろうと、自分が学生時代に戻ったような気持ちになって、かつ「いまの」学生の立ち位置を想像しながら、吸い込まれるように一気に読んだ。丸田さんのカバー写真が内容に即しているかどうかといえば、それはとてもあっていると思った。少女が、年齢がよくわからないくらい小さく写っていることが、いろいろと想像させてくれる。
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ネタバレはしないけれど、もっとも印象に残ったフレーズだけ、書きたい。 (一ヶ月間で全路線を乗り尽くす旅を終えたことを思い出しながら)「帰ってきて自分のアパートに入り、すわりこんだ時にね、じわっと思った。ああ、自分は日本中を、日本全土を旅して来たんだ、って。自分が生まれたこの国を、自分の目で見て来たんだ、って。」 これは、旅好きな人ならみんなじんわり感じることなんじゃないかな。その手段を問わず。私がそれを感じたのは残念ながら鉄道ではなくて、登山だったり自転車だったりバイクだったり。柴田さんは、旅をわかってる方だ。このフレーズに出会って、私はこの物語により吸い込まれた。柴田さんが好きになった。
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本書をきっかけに、思ったことがある。ここから先は、本書と直接の関係はない。 なぜ、こうした小説に登場する人物は、みな身軽に旅行できる身分ばかりなのだろう?(決して、本書にケチをつけるわけではない) 読者のどれくらいが、同じ境遇、つまり独身で、時間もお金も自分だけのために使えるのだろうか。世の中の鉄道ファンの何割が結婚して家庭を持っているのかはわからないけれど、そちら側の感覚が、世の中、あまりにほっとかれすぎてないか。それとも、後者はみな前者に憧れてなきゃいけないのか? 宮脇俊三氏は、あえてそのあたりをすべて捨象して作品を描いていた。それは、氏以前にそのジャンルがなかったから、一番の王道を考えてそのようにしたものだ。以後、旅行記の類は、ほとんどが「自分が旅で感じたこと」ばかりを描いていて、会社員と家庭内での立場というようなことに触れたものは見たことがない。そこをうまく汲んだのが、『週末夜汽車紀行』(西村健太郎/アルファポリス)だと思う。ごくふつうのサラリーマンの家庭の感覚、金銭感覚、会社の感覚。 これを汲んだ小説を待っている。それも、志賀直哉のように、何事も起こらないのにきちんとした物語になっている作品を。
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もう一つ、舞台が実在か架空か、ということを語りたいのだけれども、うまくまだ本書と関連づけられないので後日。
「モービロイル」という表記(1)の続き。
この壁の向こうはプロパンガスのボンベ置き場というか捨て場というか、向かって右側の清潔さとは対照的に、雑草に覆われていた。給油所側と同じく「宮下燃料」という名前が掲げられていたので、関連施設なのだろう。 その前が空き地になっていたのでそこにクルマを停めて写真を撮っていたこともあり、こちら側はあまり撮っていない。いま、猛烈に後悔しているが、少しだけ。 「モービル」 「ガス」。 右には赤いペガサス。 ここにクルマを停めていたのだが、帰り際にふと見ると、そこにエロ本の自動販売機があった。道行くクルマは「練馬ナンバーのクルマが国道沿いの自販機でエロ本を買ってるな…」と思って見ていたに違いない。
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前回の記事に対してg_stand さんか らいくつか貴重なご指摘をいただいた。「モービロイル」の壁は、よく見ると「ル」のあたりに「es(so)」と見えている。つまり、防火壁は短縮されているうえいに、モービルからessoへ、またはその逆のブランド替えがあったことになる。これに私は気づかなかった。なんというザル。 また、この「ル」から直角に、つまり道路と並行にコンクリートブロックが積まれている。私はそれを「エロ本の自販機隠し」だと思ったのだが(当日にそう思ったことを、いま思い出した)、それはおそらく道路拡幅の際に防火壁にさわったためと思われる。…… いつもながらの貴重なご指摘に感謝いたします。
内村川の谷間の国道を東に向かって走っていると、畑の中に「モービロイル」と書かれたブロック塀が現れる。ほとんどは空色(が褪色した色)、下部は小豆色(が褪色した色)で塗られた防火壁。
その向かい、つまり右には本殿がある。 広大な敷地に、荒らされもせずに残るモービル石油の給油所。 防火壁には「軽油89円」とある。いつの水準だろう、2006年には軽油は100円こなっていた気がする。 ガソリンスタンド然としたたたずまいのサービスルーム。かつてはこの大きなガラス窓の向こうにドライバーが休むソファがあり、事務机の付近は書類で溢れており…。いまも室内には当時販売されていたままの商品が未開封(多分)のまま残されている。 いわゆる「廃墟趣味」はないので、侵入などはしない。あくまでも「自由に勝手に歩いても(たぶん)怒られない対称」として閉鎖された給油所で観察しているの。 外にはほとんど遺留品はないのだが、ここに目が行った。 (上) 「使后は元の所え 空気圧力計掛ケ」 (下) 「空気バルプは 使用后はしめる事」 そして。 「モービロイル」という、Mobil Oilを英語で読むと続いて聞こえてしまうという表記をそのまま採用したこと。そこにあったエアゲージは、イギリスのPCL製だったこと。モービルはアメリカの企業であるし、この二つはまったく関係ないのだけれど、なにか嬉しい気がした。 なお、PCLはいまも存在する。 http://www.pclairtechnology.com/ (続き) |
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