柴田よしきさんの『夢より短い旅の果て』を手に取ったのは、カバー写真を丸田祥三さんが手がけたこと、柴田さんが鉄道がお好きな作家さんだとうかがっていること、角川書店の『本の旅人』で本書の書評を友人のオオゼキタクさんが書いていること、などで興味を持ったためだ。 とにかく面白かった。どう面白いとか書くとネタバレになるので書かない。鉄道が好きだろうとそうでなかろうと、自分が学生時代に戻ったような気持ちになって、かつ「いまの」学生の立ち位置を想像しながら、吸い込まれるように一気に読んだ。丸田さんのカバー写真が内容に即しているかどうかといえば、それはとてもあっていると思った。少女が、年齢がよくわからないくらい小さく写っていることが、いろいろと想像させてくれる。
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ネタバレはしないけれど、もっとも印象に残ったフレーズだけ、書きたい。 (一ヶ月間で全路線を乗り尽くす旅を終えたことを思い出しながら)「帰ってきて自分のアパートに入り、すわりこんだ時にね、じわっと思った。ああ、自分は日本中を、日本全土を旅して来たんだ、って。自分が生まれたこの国を、自分の目で見て来たんだ、って。」 これは、旅好きな人ならみんなじんわり感じることなんじゃないかな。その手段を問わず。私がそれを感じたのは残念ながら鉄道ではなくて、登山だったり自転車だったりバイクだったり。柴田さんは、旅をわかってる方だ。このフレーズに出会って、私はこの物語により吸い込まれた。柴田さんが好きになった。
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本書をきっかけに、思ったことがある。ここから先は、本書と直接の関係はない。 なぜ、こうした小説に登場する人物は、みな身軽に旅行できる身分ばかりなのだろう?(決して、本書にケチをつけるわけではない) 読者のどれくらいが、同じ境遇、つまり独身で、時間もお金も自分だけのために使えるのだろうか。世の中の鉄道ファンの何割が結婚して家庭を持っているのかはわからないけれど、そちら側の感覚が、世の中、あまりにほっとかれすぎてないか。それとも、後者はみな前者に憧れてなきゃいけないのか? 宮脇俊三氏は、あえてそのあたりをすべて捨象して作品を描いていた。それは、氏以前にそのジャンルがなかったから、一番の王道を考えてそのようにしたものだ。以後、旅行記の類は、ほとんどが「自分が旅で感じたこと」ばかりを描いていて、会社員と家庭内での立場というようなことに触れたものは見たことがない。そこをうまく汲んだのが、『週末夜汽車紀行』(西村健太郎/アルファポリス)だと思う。ごくふつうのサラリーマンの家庭の感覚、金銭感覚、会社の感覚。 これを汲んだ小説を待っている。それも、志賀直哉のように、何事も起こらないのにきちんとした物語になっている作品を。
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もう一つ、舞台が実在か架空か、ということを語りたいのだけれども、うまくまだ本書と関連づけられないので後日。
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「モービロイル」という表記(1)の続き。
その前が空き地になっていたのでそこにクルマを停めて写真を撮っていたこともあり、こちら側はあまり撮っていない。いま、猛烈に後悔しているが、少しだけ。 右には赤いペガサス。 ここにクルマを停めていたのだが、帰り際にふと見ると、そこにエロ本の自動販売機があった。道行くクルマは「練馬ナンバーのクルマが国道沿いの自販機でエロ本を買ってるな…」と思って見ていたに違いない。
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前回の記事に対してg_stand さんか らいくつか貴重なご指摘をいただいた。「モービロイル」の壁は、よく見ると「ル」のあたりに「es(so)」と見えている。つまり、防火壁は短縮されているうえいに、モービルからessoへ、またはその逆のブランド替えがあったことになる。これに私は気づかなかった。なんというザル。 また、この「ル」から直角に、つまり道路と並行にコンクリートブロックが積まれている。私はそれを「エロ本の自販機隠し」だと思ったのだが(当日にそう思ったことを、いま思い出した)、それはおそらく道路拡幅の際に防火壁にさわったためと思われる。…… いつもながらの貴重なご指摘に感謝いたします。 その向かい、つまり右には本殿がある。 いわゆる「廃墟趣味」はないので、侵入などはしない。あくまでも「自由に勝手に歩いても(たぶん)怒られない対称」として閉鎖された給油所で観察しているの。 外にはほとんど遺留品はないのだが、ここに目が行った。 「使后は元の所え 空気圧力計掛ケ」 (下) 「空気バルプは 使用后はしめる事」 そして。 なお、PCLはいまも存在する。 http://www.pclairtechnology.com/ (続き) 台車枠を形鋼で組んだもので、もっとも特徴的なのは、軸箱上部に飛び出た板バネの軸バネだろう。板バネを固定するための棒(なんと言えばいいのだろう)は、両端の2本は台車枠から、内側の2本は台車の中央、台車枠の中に収まっているイコライザー(横長の部品)に結ばれている。 特徴的…と書いたものの、それは2軸台車だからなんとなく違和感を持つだけで、いわゆる旧型電機の棒台枠の台車ではごく普通の構造だ。EF58などの台車を見るとよくわかる。これは、横から見ただけでは理解しづらいが、すてきなサイトがあった。 ・3DCGの世界 すばらしいね。
鉄道車両の台車の構造はとても興味深い。狭いスペースを立体的に使いつつ、絶対に壊れてはいけない構造物を作り上げている。眺めていて飽きることがない。新たに台車のカテゴリを作った。
●(推定)大井川鐵道モハ310の、日車D-18台車 枕バネは、()という向きに組み合わされた板バネが枕木方向に3列並列2組ある。奥の1組はこちら側に傾いており、手前側の1組は1列のみ残っている。それも()という組み合わせが開放され、(の形となって下に落ちている。 この枕バネ、画像検索するとやはり3列2組なのだが、鉄道模型ではGMとトミーテックから出ているにもかかわらず、板バネが2列2組でモールドされている。なんということだ。 (参考リンク)リトルジャパン 名鉄3800型を組み立て加工する2 この部分以外はほぼ欠品もないように見える。ブレーキのリンクもまだ動きそうだし、それを台車を真上から見ると平行四辺形になっているのもよくわかる。 また、写真右端の車輪の左側、小さなコイルバネが4組並んでいるところは、モーターを台車枠に引っかける部分である。これゆえの「釣り掛け式」の名称だ。 イコライザー式台車(釣り合い梁式台車)は、車体の荷重を枕バネを介して台車枠上面に伝え、上面からコイルバネ→イコライザー→車軸端、という方向で荷重が伝わる。こうして上から見ると、イコライザーのコイルバネの位置、イコライザーが軸受けに乗っかっている位置などもわかる。 冒頭に「(推定)大井川鐵道モハ310の、日車D-18台車」と書いたが、元々は名鉄の3800系である。3800系のうち2両1編成が大井川に入り、さらに4両2編成分の「車体」も大井川に入った。後者は大井川にストックのあった下回りと交換したというし、最初の2両のうちの1両はのちにオープンカーとなって、いまも新金谷の側線にある(名鉄ク2805→大井川クハ510→クハ861)。となると、この台車の持ち主は、モ3805→モハ310だろうと推測される。さて、モーターはどこに消えた? |
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