JR上越線岩本駅の近く、国道17号沿いに、すでに給油所としては現役ではない一角がある。防火壁には日石のペイントがかすれている。現在は駐車場として機能しているようだ。
背後の(おそらく)オーナーの住宅の一部に作り付けてあるサービスルーム。住宅の妻面にトタンを貼って白く塗り、住居の城壁と相まって防火壁が控えているかのような印象を見る者に与える。 サービスルームは全体が水色に塗られている。軒下には、おそらく屋号が書いてあったのだろう。室内はバイクが置かれているのが見える。 右側のクルマ越しに、日本石油の蝙蝠マークとCALTEXの文字が見えた。どちらも塗料が乗っていたところがまるでマスキングされたかのように白く残り、他の部分は経年で黒ずんでいる。CALTEXのほうを見ると、なんとか星があったことはわかる。赤い塗料片は、その位置からして、おそらくその上に塗り重ねた日石の色だろう。 その下には、チューブタイヤのパンク修理用の水槽。いまの時代、給油所ではチューブタイヤのパンク修理をしてくれるのだろうか。そういえば、かつて一瞬だけ乗っていた、日産キャラバンのOEMになる以前のいすゞファーゴ4WDはチューブタイヤだった。 関係ないけれど、少しショックだったのは、岩本駅の駅舎が建て替えられていたことだ。木造駅舎の時代、何度か休憩をとったことがある。しかし、まったく鑑賞も記録もせずにいた。建て替えの日付を考えると新駅舎の前を何度も通っているはずだが、目に入っていなかった。そんなものだろうな。 PR 第二飛騨川橋梁。中央径間が154フィートの下路プラットトラス、側径間は計8連のプレートガーダーである。石積橋脚も美しい。 こんな感じで、奥(下油井側)からトンネルを抜け、谷を渡り、盛り土を抜けていく、いかにも鉄道路線らしい風景の一部をなすのが、この第二飛騨川橋梁である。 個人的には、斜材が45度のプラットトラスは美しいとは思わない。思わないが… 美しいよねえ。154フィートをもってしても川の中に橋脚が建ってしまう。これはいかにも中途半端…などと思ってしまうが、もし向かって左側ももともと流路だったならば、ここにもトラスをかけてひとまたぎにしてるだろう。ということは、架橋当時は、向かって左側は河川敷だったのではなかろうか。 反対側から。 面白いのは塗装標記。この橋は、JRの旅客営業駅でいえば「白川口~下油井間」である。ところが、この表記を見ると「鷲原~下油井」とある。鷲原は信号場である。なるほどな、と思った。
『DREAM TRAIN』(中井精也著/インプレス)の写真展が、4月29日まで新宿で開催されている。
<詳細> http://www.yodobashi.com/ec/support/news/1213373439033/index.html 会場で、困った。作品を見て、添えられた文を見ていると、けっこうこみ上げてくるのだ。飯山線の虹の作品など、正視できないくらいだった。 何度見ても、どこで見ても、たぶん私の受け取り方は変わらない。これは、「DREAM TRAIN」の旅を、それができる過程をリアルタイムでネットを通じて応援していたために、周辺の思い出とともに定着したからだ。いつどこで見ても、その作品の背景を思い出すことができる。とくに飯山線は、私の中に一生残るだろう作品。 会場内は撮影自由。トークも拝見しているので、双子のオーストラリア人の作品など、中井さんがした口まねが耳元で聞こえてくるような気がした。もちろん、会場に中井さんはいらっしゃるのだけれど。 こういう形の展示もある。初めて拝見する作品もあれば、トークショーでお話とともに拝見していたものもある。とってもポップで、上の展示方法とはまた受ける印象が全然違い、もしかしたら『ゆる鉄』しか知らない方は、こちらのほうが馴染むのかもしれない。私は『DREAM TRAIN』本冊の見せ方が大好きだけれど。 会場入口には取材ノートがある。これだけは、会場に行かないとどういうものかわかってもらえないと思うが、細かなメモ…たとえば、原稿の下書きとかそういうものではなく、心情をそのまま書き記したような、そんな取材ノートだった。
* * *
写真作品は鑑賞者のものなので、鑑賞方法に決まりなどない。それでもお節介をするならば、事前に『DREAM TRAIN』を読み、「一日一鉄」の11月のくだりをすべて読み、それから写真展を訪れたら、きっと、のめり込み方が変わるはずだ。取材ノートも「他人がとったメモ」みたいな距離感ではなく「絶対に見たいもの」になるはずだ。 東京での会期は金曜と土曜のみだが、ぜひ、訪ねてほしい。 <参考> Photographer's File #12:中井精也 |
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