とあることから、Market Street Bridge(マーケット・ストリート橋)というテネシー川にかかる橋(テネシー州)を検索していたら、面白いものにあたった。それはあとから書くとして、まずはこの橋。
正式にはJohn Ross Bridge(ジョン・ロス橋)といい、テネシー川南岸のチャタヌーガと北岸を結んでいる。由来はチェロキーのジョン・ロスにちなんだもので、1917年に竣工した。最大スパン109m。2005年に修復のため一時通行止めとなり、2007年に再度供用開始された(以上、wikipediaによる)。 この橋、ブレーストリブアーチに見えるけれど、跳開橋である。それぞれ分離して跳ね上がるのだから、閉合しているときでもアーチ構造を取るわけではない。よって、これはなんなんだろう、分類するとすれば「跳開橋」であり、単に桁がブレーストリブアーチのような見た目をしている…という解釈でいいのだろうか。 さて、これは前振り。この橋が跳開している状態の画像を探していたら、この画像に出会った。 ![]() どうだろう、このプラットトラス。六角形。日本では、中央3パネルの上弦が水平になっている通称「クーパートラス」があるが、その水平部分だけが大きくなった感じ。当然、分格トラス=ペンシルバニアトラスである。 全体像はこちら。 ![]() 全6連のうち、南側2連と北側1連は短い10パネル210フィート(64m)、中央3連は長い(背の高い)3連は16パネル320フィート(97.5m)。右端の桁の橋脚はトレッスル。1891年開通。桁下高さ30m。北側の(画像右側)桁の橋脚はトレッスルである。 こんなばかでかいピントラスを、修復した上で歩道橋として存置している米国。すばらしい。いつかは見に行ってみたいものだ。 PR
映画『アンストッパブル』をより味わうために(1)
映画『アンストッパブル』をより味わうために(2)のつづき。 ■SD40-2は「旧式」? 公式サイトのストーリーでは、主人公らが乗るSD40-2を「旧式機関車」と書いている。旧式だと、なにか不都合があるのだろうか? 端的に「新型の暴走機関車を、旧式の機関車が止める」という対立の図式を作りたかったのだろうか。日本で例えれば、DF200が重連で牽引する機関車を、1両のDD51が綱引きして止めるイメージか。 「旧式」の欠点は? 機関車の性能で考えると、粘着牽引力だったり、燃費だったりするのだが、それを次で比較してみる。 ■SD40-2は、AC4400CWを止められるのか? サイトThe Diesel Shopにあるデータを羅列してみる。なお、両車種ともに6動軸である。 車種/原動機出力/粘着牽引力(起動時)/粘着牽引力(定格) ・AC4400CW/4400PS/18万lbs@粘着係数*35%/14.5万lbs@13.7MPH =81647kg/65771kg@22km/h ・SD40-2/3000PS/9.2万lbs@粘着係数*25%/8.21万lbs@11MPH =41739kg/37240kg@17.6km/h *adhensionとだけ書いてあるので「粘着係数」、日本では%ではなく「0.35」などと表記される数値だと思うが、違うかもしれない。 このAC4400CWが重連で牽引しているのだから、SD40-2が1両だけ追いついたとしても…。 では、実際の事故はどうだったのだろうか。実際の機関車は、暴走した列車の牽引機、最後尾に連結して原則させた機関車も、ともにSD40-2であった。 ■鉄道会社は株価を気にする? 運行部長が「この事故で株価はどうなる?」といったことを発言するシーンがある。会社のことしか考えていないと印象づけるシーンだが、アメリカの鉄道会社は大きな投資対象になっているため、こういう考え方をしてもおかしいとは思わない。 実際にCSXが事故を起こした2001年5月頃の株価推移を見てみると、これが重大なインシデントで済んだためか、影響がないように見える。株価推移はこちら ■鉄道安全教室 鉄道施設を見学する小学生の団体が出てくる。アメリカでは、踏切事故対策に頭を悩ませており、こうした取組はよくあることのようだ。 そのシーンで「鉄道に乗ったことある人!」と挙手をさせたときに、多くの子どもたちが手を挙げたのが意外だった。アメリカの鉄道は基本的に貨物輸送であり、一般の人間が乗るとしたら大都市近郊のコミューター路線くらいだと思うのだが、この子どもたちが乗ったのはなんなのだろう? …といったように、アメリカの鉄道のことを知ると、より各場面が持つ意味が理解できよう。 ■鉄橋の存在感…まとめ もっとあやぶまれた「スタントンの大曲」。そこに橋梁があり、手前というか奥というか、一端には急曲線かつ勾配のあるアプローチ線がある。映画『アンストッパブル』をより味わうために(1)で地図を示したその橋は、冒頭、まだ事件を知る前の主人公たちのシーンなど、幾度となくスクリーンに登場する。速度制限25MPHということは、かなりの急曲線だ。この橋を俯瞰するシーンがとても美しい。 この橋は、プラットトラスとプレートガーダーで構成されている。プラットトラスの大きさは2種類あり、大きなものは当然径間が大きい。おそらく、元々は水運のために径間を大きくとったものであろう。アプローチ部分はトレッスル橋脚だ。 ほかにも随所で橋梁が出てくる。そのほとんどはプラットトラスだったり、ペンシルバニアトラス(分格のプラットトラス)だったり。もしこれが日本なら、コンクリート製の高架橋となるのではないだろうか。言い換えれば、アメリカの鉄道が舞台の映画だからこそ、鉄橋だらけなのだ。と思う。 アメリカの鉄鋼産業は19世紀末から大規模に発展した。トラストを組み、莫大な利益を上げ、株価も一方的に吹き上がっていった。橋梁技術も発展させた。そして、架ける橋架ける橋、そのほとんどを鋼製橋梁とした。鉄道でいえば、高架橋は鋼橋。橋脚はトレッスル。道路でいえば、長大な径間が必要な橋は鋼製吊橋。そこまででもない橋はカンチレバートラス。それぞれ、当時の日本では考えられないほどの大型のもの。 私は、この映画の見所は、近代的な機関車の重量感と、前近代的な鉄橋の組み合わせだと思う。もしスタントンの大曲がコンクリート製高架橋だったら、クライマックスシーンでジェットコースターのごとく描かれてもちっとも時間がわかないだろう。鉄橋ゆえの、トレッスル橋脚ゆえの軋みを再現することで、この映画は完成度を高めている。 最後に、未消化で残った点をふたつ。 (1)重要な役割を果たす、溶接工のネッド。彼の存在意義が不明である。それがこの映画で唯一、消化不良となっている。出勤前、スタンドで油を売っているネッド。彼の元に電話が入り、「ポイントを切り替えろ」との指示が入る。その後、彼はクルマで列車を追いかけることになるのだが、なぜ彼にその指示が下ったのか? その辺が読み取れなかった。 (2)脱線機が失敗するというくだりがある。これ、確実に脱線させるなら、レールを外せばいいじゃないの。 以上、3回に分けて勝手に解説した。もしまだ見ぬ方がいらっしゃったら、ぜひご覧いただきたい。既に見た方は、ぜひもう一度。そのようにして、実際に見に行っていいただければ幸いである。
映画『アンストッパブル』をより味わうために(1)の続き。
■日本語字幕について ●賛辞 英語との対訳はわからないが、日本の鉄道用語とは正確に対応している。たとえば、大部分のアメロコにはダイナミックブレーキがついていて、これがストーリーにも関わるのだが、アメロコの場合、ダイナミックブレーキは発電ブレーキを意味する。これは、アメロコのことを知らないと、単に「ダイナミックブレーキ」などとカナ表記しかねない部分なので、訳者GJ!である。 アメロコのボンネット(フードという)上部がキノコのように張り出しているものがあるが、 これが発電ブレーキの放熱器であり、その上にはファンがある。 アメロコウォッチャー(トレイン・スポッターという)は、そのファンの数を気にする。 「力行」にはルビを振ってまでこの日本語を充てていた。すばらしい。ほかにも多数のGJがあった。 ●惜しい! 残念だったのは、アメリカはマイル表示が普通であって、機関車のスピードメーターもマイル表示なのに、字幕がキロ表示だったことだ。 「時速128km」という字幕でも、映像は80MPHのスピードメーター。 「スタントンの大カーブの制限速度は時速25km」という字幕の後ろの映像は、「15」(MPH)と書いた標識。 「91.7km標」(だったような気がする)という字幕の後ろの映像は57マイルのポスト。 それぞれ 「時速80マイル(約128km)」 「~時速15マイル(約25km)」 「57マイル(約91.7km)標」 などとすればいいのに。 ■機関車について この映画では、貨物列車をGEのAC4400CWが重連で牽引している。しかし、実際に起こった事故ではEMDのSD40-2が単独で牽引していた。これはおそらく、映画の視覚的な効果を狙ってのことだと思う。また、時速80マイル(時速128km)ということに信憑性を持たせるためかもしれない。 しかし、SD40-2が暴走する列車に追いつき、連結したときには時速80マイルだった(と思う)。ということは、。SD40-2はそれ以上のスピードで走らなければならないのだが、本機の最高時速は65MPH(約時速104km)である。このへんを言うのは野暮というものか。なお、たしか、劇中、「いま時速104km(←数値はうろ覚え)でおいかけてる」というようなセリフがあった。これはそれを踏まえているのか。 また、AC4400CWは、その車名どおり4400馬力。これが重連で引く貨物列車を、果たして3000馬力のSD40-2のダイナミックブレーキで、引っ張って止められるのだろうか。これは、私にはその計算ができないので真偽は不明である。 さて、wikipedia英語版によれば、撮影には複数の車両が使われたとある。 ●#777、#776…カナダ太平洋鉄道からのリース。 この2両が、無人の貨物列車の牽引機。4両とも、撮影終了後も映画の塗装のまま使用されている。 ・#777…前半#9777、後半の傷んだ姿は#9782 ・#776…前半#9758、後半の傷んだ姿は#9751 ●#1206、#7375+#7346…ホイーリング・アンド・レイク・エリー鉄道からのリース。 #1206が主人公。#7375+#7346は「失敗した作戦」のため爆発炎上した機関車。 ・#1206…3両使用。#6353と#6354。もう1両は運転台のショット。 ・#7375…#6352(エキストラ的に出ている#5624も) ・#7346…#6351(エキストラ的に出ている#5580も) #7375+#7346は、#777+#776に押し出される形で脱線・転覆したあと大爆発する。軽油を燃料とするディーゼル機関車が、そこまでの派手な爆発をするものだろうか? ●#2002(施設見学の児童たちを乗せた列車)…サザン・ペニンシュラ鉄道のEMDのGP11。 ■機関車の塗装について 実際の事故は、CSXが起こしたものである。CSXの塗装は、くすんだ紺/グレー/黄色である。 ![]() 対して、映画の中ではこのような塗装である。 この塗装はサンタフェ(アッチソン・トピカ・サンタフェ鉄道(ATSF))の塗装を連想させる。こういうものだ。 ![]() 上記写真はAC4400CWの前身というべきC40-9W。 AC4400CWの製造開始は1993年。ATSFは、1996年にBN(バーリントン・ノーザン鉄道)と合併し、BNSF鉄道となった。実際にATSFカラーとなったAC4400CWの画像は見つけられていないが、C40-9WにはATSFの塗装パターンを踏襲しているものがある。意図的に「赤+銀」にした上記のような車両もあれば、BNSFの濃緑+オレンジをベースに、この「インディアンの羽根」をイメージしたロゴをあしらったものもある。 ![]() 興味深いのは、CSXの事故をもとにした映画なのに、BNSFの前身たるATSFに似た塗装としたことである。営業エリアは、CSXが東海岸、BNSFはそれに接続するように中部から西海岸であるので、ライバル会社を貶める意味合いはないと思う。単に「かっこいい」ためかもしれない。 (まだ続く) 映画『アンストッパブル』をより味わうために(3) (上記にリンクしたwikipediaの記事は、私が立項したものや大きく改稿したものが多数あります。こんな形で役に立つとは。)
映画『アンストッパブル』を見てきた。大きなスクリーンで見ることを信条としているため、日劇まで行ってきた。この映画は、大スクリーンで見るべき。
とにかく見所がありすぎる。それはきっと、私がアメリカの鉄道会社、機関車、歴史、橋梁などをある程度知っているからそう思えるのだと思う。 この映画はアメリカの鉄道を舞台にしている。だから、日本の鉄道にいくら詳しくても理解が及ばない部分もあるはずだ。ましてや一般人においてをやである。ここでは、映画を見ただけではわからないことを書こうと思う。 ●ロケ地 冒頭から意味深に出てくる巨大なペンシルバニアトラス。どうやらロケ地は下記らしいのだが、周囲の光景が全く違う。クライマックスシーンでキモとなる石油備蓄タンク(?)がない。 大きな地図で見る 上の地図で「A」とマッピングされている廃橋は、この2011年6月までに解体される予定の橋だ。wikipediaに記述がある。私有らしい…というのは余談で、この橋の形状、一端で分岐している点など、どう見ても映画で使われてた橋だ。でも、タンクはないし、周辺の住宅の様子も違う…。 いろいろググっていたら、こちらのサイトで、その謎が解けた。答えは合成だった。 ●777号 北米(アメリカ、カナダ、メキシコ)の機関車には「ロードナンバー」といって、各鉄道ごとに通し番号がついている。車両の形式名ではないし、製造番号でもない。それが、この「777」と、その後ろにつながっている「776」だ。一般的に#をつけて、「#777」などと書く。験を担ぐこともあり、記念とする機関車にはキリのいい番号が与えられることがある。 (つづく) こちらもご覧ください。 映画『アンストッパブル』をより味わうために(2) 映画『アンストッパブル』をより味わうために(3) 去る21日に発売された『鉄道ファン』(下段の写真)を見て驚いた。開業当時の大阪駅の写真が掲載されており、なんとその跨線橋がクイーンポストトラスなのだ。掲載されている記事は古い給水塔の図面の解説で、実はこの写真との関連性が私にはわからないのだが…。 上の写真は『日本国有鉄道百年史』の別冊『~写真史』。両者の写真はよく似ているが、もちろん別物。上の写真には蒸気機関車がいない。そして、より多く跨線橋が写っているという点で、いま現在書店に売っている『鉄道ファン』をぜひご覧いただきたい。 ふと思い立って土木学会のサイトにある『日本鐵道史』を見たら…あった! 写真などほとんど掲載されていないこのアーカイブに、正面からのものがあるとは! 冒頭の写真でもわかるが、端柱がずいぶんと鈍角である。そういうものなのだろうか。そういえばキングポストトラスもクイーンポストトラスも、端柱が鋭角であるものを見たことがない気がする。発想として方杖(棒を突き合わせるもの)だからだろうか。 『日本国有鉄道百年写真史』について、以前も書いたような気もするが、土木構造物の写真がたくさん掲載されている。それも、開業に向けての工事中のものや開業直後のものが多いので、既に架け替えられてしまった大多数の橋梁の姿が拝める。現存数の少ないボルチモアトラスもいくつかある。室蘭や手宮の、石炭船に積むための2階建ての桟橋の俯瞰写真もある。 いまオークションを見たら1000円以下でいくつも出ている。ぜひ。(出品者は私ではありませんよ) なお『日本国有鉄道百年写真史』の著作権について。これは国が出版したものと見なしていいのだと私は考えている。奥付には、不思議なことに「(C)1997」とある。これは、表記としてはまったく「なっていない」。(C)=マルCはcopyright、複製権を持つ者を記すマークであるから、これでは「1997」という人格が著作権を持っていることになる。復刻版の発行年が1997年であるので、おそらくそれを書いたのだと思うが、明確な誤りであり、この本には著作権表記がない、というのが実際のところであろう。表記がない=パブリックドメイン、ではないので念のため。 |
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