期待して買ったのですよ、この本。ついに出たか、と。しかし、かなり残念だった。残念、というのは私にとって残念、ということではあるのだが、たぶんかなり多くの人にとっても残念だろうと思う。なぜなら、この本は鉄道における物理をわかりやすくひもとくものではなく、帯にあるとおり、「得意な学科 物理」という人「のためにつくりました」という本なのだ。でも、物理得意なら、ここに書いてあるようなことは見ればわかるんじゃないかと思うんだけど。
私の判断では、この本は編集がまったくなされていない。著者が書きたいことを好き勝手に書いた、読み手に理解させようという気がない、自費出版レベルの本。なにしろ物理と全然関係のない「東京駅とアムステルダム中央駅」とか「駅と郵便局」というコラムが入ってたりするのだ。おかしいだろ? 私は高校1年までしか物理を勉強していないので、もしかしら「お前には語る資格なし」という反論もあるかもしれない。でも、世の中の人の何割が、大学入試レベルの物理や化学を学び、それを憶えているだろうか? 化学で言えば元素の周期表すら憶えてない人も多いんじゃないだろうか。私は日本史をそれはそれは勉強し、どの項目も400字で説明せよと言われたら800字で説明できるくらいにはなっていたと思うが、大学入試から20年経ち、相当残念なことになっている。そういうことを考えると、私にも語る資格はあるのではないかと思う。以下、私の観点で、この本の残念な点を書く。 ●残念1:いきなりの物理用語(1)前提とする知識の設定への違和感 本書は、いきなり物理用語が出てくる。通常、ブルーバックスにしろ雑学系の新書にしろ、物理を楽しもうという本は、物理の基本概念を物理の用語は使わずに小学生レベルの知識や例え話で解説する。例えば「10^-1」とか書かないで「0.1」と書く。ラジアンではなく度数法(直角=90度、の角度の表現)で書く。式を暗記させるわけでなし、概念を理解させるのが目的だからだ。 本書には下記の用語が突然出てくる。高校の理系物理、理系化学レベルのものもあるが、このブログを見てくださっている方のうちどれだけの方が、「ああ、それはね…」と解説できるだろうか。 ・印加電圧 ・界磁コイル ・電機子コイル ・誘導起電力 ・素子 ・IV族 ・角速度ω ・力積 ・角振動数ω ・|Z|=1/(ω/C) ・自己誘導係数 ・球対象 ・誘電体 ・準位 ・遷移…… いや、調べればわかる。目の前の箱を使えばwikipediaもある(たいてい、詳しく解説されすぎていて余計にわからなくなる)。私はいままでこうしたものをそこそこ読んでいるので実はそこそこ理解はできるのだが、それにしても…。 私は、この手の本は、最初に「フレミングの左手の法則」(中学理科で習う)をおさらいし、また「コイル」とは何か、という説明から始めなければならないと思う。慣性の法則、エネルギー保存則、なんてのもおさらいすべきだ。これらを完璧に理解できている人なら、モーターが回る理屈など教えてもらわずとも知っているのだ。 ●残念2:いきなりの物理用語(2)式、変数 なぜ、物理好きは小難しい言い方をしたがるのだろう? やれやれ。 とか書けないものだろうか。 なんというか、「物理的な言い回し」でひとつのネタができそうだ。というかしてる人がいるなあ…。 ●残念3:稚拙なイラスト 本書におけるモーターのイラスト。モーターの中身をまったく知らない人が見て、理解できるだろうか? いろいろはしょられているが、矢印方向に電流が流れるのだろう。それすら書いてないよ。。。 たぶん、一般的な男性が思い浮かべることができるのは鉄道車両のモーター(このイラストは直流直巻電動機)ではなく、マブチモーターのようなモーター(永久磁石界磁形整流子電動機)ではないか。マブチモーターは非常に素晴らしいサイトを持っていて、そこでモーターの原理や各部の名称を説明している。 たとえばこちら。基礎の基礎、電磁石とは何か?から解説。 こんなページもある。内容は同じだが、少しまじめ? 直流直巻電動機と永久磁石界磁形整流子電動機に本質的な違いはない。ガソリンエンジンかディーゼルエンジンかくらいの違いなので、説明はコレで十分だろう。 ●残念4:誤記多し こういうことを書くと「これだからマニアは」などと逆ギレされることがよくあるのだが、DMF16とかDMH18とか書いたらいかんでしょ。また、国鉄の形式を「キハ181型」などと書くのも誤り。つまり、基本的な鉄道の知識がないのに、鉄道を説明しようとしている。こんなの、少し鉄道がわかる人に一読させれば即座に指摘される内容なのに…。 なお、DF50を抵抗制御と書いてあるのも誤りだが、これは少しだけ同情する。DF50のエンジンとジェネレータは直結していて、ジェネレータ出力は機関の回転数で制御するのだが、私の知る限り、それが掲載されていて入手しやすい本はない。入手しづらい本を含めても『ディーゼル機関車ガイドブック』(誠文堂新光社)のみだ。(レイルロードの『DF50』は未見)。液体式の制御方法がそこそこ知られているのに対して、不思議なことである。 ●残念5:後半は息切れ 後半は「物理」でもなんでもない記事、ただの「鉄道の仕組み」が続く。トンネルの工法の解説や閉塞の概念、腕木式信号機の作動の仕組みなど、どこが「物理」なのか。 ●残念6:無関係の記事 ここも息切れか。冒頭にも書いたが、鉄道郵便など、本書の内容とまったく関係がない。著者の専門である天文学のことが書かれているのとなんら変わらない。無関係な「コラム」とやらがなぜ掲載されているかというと、「編集」がなされていないから。かくてひとりよがりの本ができあがりましたとさ。 すべてを抜き書きして「これを説明せよ」と書きたいが、やめておく。とにかくこの本は、あくまで教科書で、これをもとに人間の口述による解説がないと物理好きな人(=聞かなくてもわかっちゃう人)以外には理解できない。 もし、この手の本を読んでみたいのであれば、グランプリ出版の各書や学研のムックのほうがよほど詳しく、わかりやすい。そちらを説明する。 PR
チェーンローラーがいつの間にかなくなってしまい、走るとカラカラ音がする。リヤスプロケにかんでいるチェーンを引っ張ると、5mmほども持ち上がる。それどころか、スプロケが左右にガタガタと揺れる。ハブダンパーも逝ったか。もうダメだ。チェーン交換だ……。
そう思って、2003年に買ったままになっていた一式を引っ張り出す。それから7年、何km乗ったんだろう。4000kmくらいしか乗ってないはず。いまはチェーンなんてヤフオクで格安で売られているから、当時、量販店で「安い!」と思って買い置きしておいたのは無駄だったかもしれないなー。 そう思いながらフロントスプロケにアプローチしようとしてカバーを開けて驚いた。 このばかでかいナット、32mm径! 私の工具箱には30mmディープまでしかない。32mmのソケットを買うか。でも、高いんだよな。15年くらい前、TT250Rのスプロケ交換するために30mmのディープを買ったけれど3000円以上したよ。しかも当時はインパクトレンチ持ってなかったから、結局交換しなかった(いま調べたら、なんか1000円ちょっとで32mmのソケット買えるんですけど?? 工具、かなり値下がりしてない?)。いまこのバイクは5万マイル(8万km)を超えているが、チェーンは一度交換した記憶がある。おそらく、そのときも「フロントスプロケはいいや」と思って、チェーンとリヤスプロケだけ交換したに違いない。リヤスプロケは交換した記憶があるから。その「フロントスプロケはいいや」の記憶が飛んでいる。 32mmのソケットは、たぶん3000円か、もっとする(注:しない)。それならばと思い、モトエジャーさんのところで点検がてら交換だけお願いすることにした。 それならば、チェーン一式と共にハブダンパーも持っていかねば。 部品取り車のリヤホイールからハブダンパーだけをはずして持って行くことにした。 そして今日引き取ってきた。スーパーテネレは、ハブと、スプロケを固定してある部分が別対になっていて、その間にハブダンパーがあり、ハブ内とは別にまたベアリングがあるのだが、野沢さん曰く「その間ががたついて、ベアリングがスポッとはずれたよ」とのこと。応急処置はしてくださった。 というわけで、チェーン一式が新しくなり、またひとつ若返ったスーパーテネレ。しかし、チェーンローラー2ヶ所が脱落したままで、うるさい。また、リヤフェンダーががたついているらしく、ときどきリヤのランプ類が消灯してしまうらしい。これは今度見直してみる。 それにしても、頗る調子がいい。セル一発でエンジンがかかるっていいね。当たり前なんだけどね。 モトエジャーさんは、これからバハ1000のサポートに出る。レポートはこちら。レースに出るのはオグショーさんや元ガルルの大塚氏。大塚氏と僕は高校が同じなんだけど、当時は面識もなかったという…。いい結果を待ってます! なお、僕がバハ(レースではない)に行ったときのことはこちら。
革洋同(@kakuyodo)さんにお声掛けいただいて、ハイウェイテクノフェア2010に行ってきた。財団法人高速道路調査会が主催する、高速道路事業や技術開発の展示会だ。nexco各社および子会社(メンテ会社や技術開発会社)、高速道路に関わる商売をしている各社が出展している。
まあ、こんな感じで、走行中によく目にするいろいろなものが展示されている。これらも少しずつ改良されているのがよくわかる。改良の対象は、ドライバーに対してというよりは現場作業員の安全性向上や労働力軽減と方向のようだった。まあ、そうだろうね。 こういう行灯を展示している会社が数社あった。各社とも、反射材を工夫していたり、逆光対策を施していたり。 この写真右側に、緑と青のデリニエーターがあるけれど、これは回転子にハケがついていて、セルフクリーニングというわけだ。こういうのも各社出していた。 「みの虫君」という。ブラシがつり下げられているのだが、これで特許申請中なのか…。 こういう、道路工事や道路に付随する商品にはダジャレネーミングや「○○くん」といったネーミングが多い…と先日どなたかが書いておられたが、それをいろいろ目の当たりにした。 印象に残ったもの。 フタトール。ペットボトルゴミのフタをはずす機械。まとめて焼却したほうが安いよ。リサイクルすると割高なのに、さらに機械かったらもう絶望的に金かかるじゃないか。とか言っちゃダメなんだろうな。 鉄道車両でいうカーキャッチャー、「とまるくん」。大型車用は「とまるぞー」。その会社には「音声警告装置 うっかり防止くん」もある。すごいぞ中日本。 あげるとキリがないが、ダジャレ系。 ・セパレーターコーン「セパッ止(と)」 ・棒に絡まない旗「カラマンデー」 ・除草剤散布機「カラスンダ80」 ・遠隔操作カメラ「ミルモット」 ・防錆剤「ペガサビン」(「ペガ」はnexco中日本が使う言葉) ・つらら除去棒「つららん棒」 ストレート系。 ・サイレントエコパネル ・エコピュアクリーン ・ふみもりぺったん(コンクリートの穴埋め剤) そういったものがいろいろと展示してあるなかで、いちばんの関心事項は安全。その次がIT化だったように見えた。 安全という観点では、逆光防止策と、作業中に起こりうるトラブルを極力回避するものが多かった。上の「とまるくん」は、車線規制時の矢印板の表示板も兼ねていて、漫然と運転してきて車線変更し忘れてるクルマを受け止めて停止させるのが目的だ。旗振りは安全太郎になったが、それだけじゃだめなんだよね。 そしてIT化では、情報の集約。でも、別にそこまで集約しなくてもいいじゃない、と感じるシステムが多かった。 「iPadで最新セキュリティ」。監視カメラをiPadで遠隔操作できるというのだが、別に今使ってるノートPCでいいじゃないか。このシステムを導入すると、iPadの導入経費と、iPadがモデルチェンジしたりOSが大幅にアップデートしたときに、とんでもないことになるよ。Windowsのほうがリスク少ないと思うけどな。 同じように、携帯で写真やら現場の状況をアップするシステムもあった。サイトにアクセスしてそれをやると、一斉に配信するんだって。でも、これも、集中管理室みたいなところに、個別に携帯で写真と状況を報告して、管理室が配信すればいいんじゃないの? ここらへんは「システムで受注し、お守りしていくことに商売的な意義がある」のがあからさますぎて驚いた。 また、「なんでこんなものを開発してるの?」というものもあった。 タッチパネル式のデジタルサイネージとか、蛍光灯ソケットに使えるLEDとか。そんなものは家電会社に任せておけばいいじゃない。あるいは、nexco各社が開発しなくても、総研が開発して各社に分配すればいいのに。「みの虫君」みたいなのは共有財産にすればいいのにね。 そうした、意図不明の開発商品で、目的と結果が逆転してしまったものがあった。 これは風力発電でLEDを表示させるのだが、このばかでかい発電機を製造するくらいなら、100V引いてくるか、12Vのバッテリー積んで数日に1回交換するほうが、ずっと経済的かつエコ(笑)なんじゃないの? 結局は毎日、ちゃんと稼働しているか確認し、数日に1回は点検しなきゃいけないんだから。あ、私はエコは大嫌いです。省エネは好きだし必要だと思うけれど。 話を戻して、以下は脈絡なく、見てきたものを書く。 これは今風の進化だなと思ったもの。 緊急用電話が、タッチパネルになっている。「タッチパネル」という操作そのものを知らない人、特に年輩者にはツライんじゃないかなあとか、駅のタッチパネル式券売機の前で立ち尽くしている人は、東京でさえたまにいるくらいだし、とかも思うが、そういう人たちがそういう操作を学ぶことでさまざまなメリットを享受でき、かつ提供側にもメリットになるなら、どんどんやってほしい。 作業服も、いまはゴアテックスなのか! 当然と言えば当然か。天気に関係ないものな。 安全靴もゴアテックス! 会場内にあったサンプルに、こんなものがあった。 なんかおかしいよね。まあ、サンプルだから、JYOBANとなっているところから、単純に間違ったのかもしれないとは思うが、ネタとして仕込んでいるのかもしれないという疑いは持っておこう(笑)。なにがそうなのかを書くと「常磐高速」がおかしい。 これ、掲載するのを忘れてたので追加。かわいい。もっと突っ走って欲しい。 個人的に惹かれたのはこれ。 昭和30~40年代かな、車載動画。これ、売ったらいいんじゃないの? あるいは自社サイトなどで見られるようにしてほしい。 外環の模型があった。高谷ジャンクションの部分だ。なかなかすごい接続形態となるそうだ。 ものすごくたくさんのパンフレットをいただいた。箱形擁壁の写真集とか、トンネル内照明のカタログとかも。写真右、「ハイウェイテクノフェア」と書いてあるのはカタログだ。ここにはいろいろなものの価格が書いてある…のはごく一部で、ほとんどは残念ながら「別途見積もり」となっている。設置費用込みで受注するのだろう。 単価があるものを書いてみる。 ・からまんでー(旗)…2100円 ・つららん棒…3万5700円 ・パッと作業中(速度規制等の標識を覆う簡易標識)…4万1790円~5万2290円 ・レインボーサインシート(路面に貼るシール状のサイン)…3万6000円/m^2 ・ポストフレックス(中央線に経つ朱と白縞模様の棒)…2万1525円など そして、実はこれが目的だった『宮地技報』。今回、橋梁メーカーでは唯一宮地鉄工所が出展していた。こちらも「道路の本を作ってまして」などと話すと「いま、ジャンクションとか好きな人いますからね。工場萌えとか」と言われた。中の人は、それらを同じカテゴリに見てるんだな。興味深い。そして『宮地技報』を「どうぞどうぞ」と言ってこちらにくださった。ありがたいことだ。 またこういう機会があったら行ってみようと思う。知悉しようとは思わないけれど、だいたい俯瞰できるようにはなりたい。それには、会って話を聞くのがいちばんだ。今日見てきたことが、巡り巡って仕事につながりますように。
水路を楽しむ方々のツイートやブログを拝見するにつけ、水路に行ってみたいと思っていた。さわりだけでもと思ってエイヤッと参加したのが8月28日だ(横利根閘門(茨城県←千葉ではない))。それから1ヶ月くらい経った頃だろうか、水路を「楽しむ」という視点で紹介した本が刊行される、という情報があった。聞けば、『水路をゆく・第二運河』の外輪太郎さん(パドルさん)が著者とのこと。イカロス出版の大野さんのツイートなどでよくお名前を目にしていたし、ブログも拝見していたので、発売を楽しみにしていた。そして発売日、書店に行ったらまだ搬入前で未入荷。改めて翌日だか翌々日だかに行って買い求めた。
『東京水路をゆく』。タイトルだけ聞いて、最初は地図もふんだんに使ったムックかと思っていた。書店とは会社の近くの三省堂有楽町店、そういうスタイルで探したが、旅行ガイドブックコーナーに、スピリチュアル(笑)なガイドブックなどとともに平積みになっていた。雑貨本のような、予想外にかわいい装丁だった。版元が意外な会社だった。 読み始めて感じたのは、とてもしっかりした本だということだ。記述は「です・ます」調、ときに「~ありますまい。」といった、丁寧に意見や感想を語りかけてくるような口調が織り交ぜられ、著者自信が水路を案内する形式になっているので、あえて分類すれば紀行文になるのだろうが、実用書としても正確で十分な情報がある。世の中に数多ある紀行文には、この部分(正確性)がダメなものがものすごく多い。 さらにいいのは、内容のバランス。本文は、水路、閘門、水門、橋などを、水路別に描いている。概要があって、個別の話がある。意外にも土木構造物の個別な細かい話は少なく(石坂氏は土木構造物には非常に詳しいのに!)、適度に「ツアーでその場にいった観客目線」というか、水路そのもののリアルな描写が出てくる。それが非常にわかりやすく、想像しやすい内容となっている。このバランスがいい。それを見た読者は、きっとGoogleEarthでそこを眺めたくなるに違いない。私なぞは帰宅後、gis航空写真検索から何度となく古い航空写真を閲覧してしまった。今度、2万5000分の1地形図と首っ引きで東京の水系の構成を把握してやろうと思っている。とはいえ、興味を持ったことに首を突っ込み続けて身動きできない状態になっているので、勉強会みたいなものがあると一番いいんだけれど…。 私が水路に興味を引かれるのは、おそらく道路や鉄道と同じ運命を背負っているからだと思う。水路開鑿には必ず目的がある。水路は時が経てば用済みになる。場合によっては埋められてしまい、かつてはそこに流れがあったことすら忘れられてしまう。こうした展開は、道路や鉄道がたどる経過にそっくりだ。道路や鉄道のルート変遷史のようなものをお好きな方なら、この感覚をわかっていただけると思う。 水路好きの人はもちろん、道路好き、地図好きの人も読むべし!
山手線で新宿から池袋に向かって走ると、新大久保と高田馬場は高架、目白は堀割、池袋は地平、巣鴨は堀割、となっている。なぜこんなことになっているのかというと、西から東(東京湾側)へと延びる武蔵野台地を南北に突っ切る形で線路が敷かれているからである。
目白付近の台地の上は標高約30m強、神田川沿いの谷は標高約10m。標高差は約20mあることになる。目白付近で話を続ければ、それが「目白台」と「その下」、たとえば目白坂などに現る。交通網で言えば、それが高架や堀割を要求する。東京の山の手側は、こうした地形を巧みに利用して鉄道路線や道路の立体交差が組まれている。 例えば田端付近。山手貨物線(湘南新宿ライン)が山手線の下をくぐる部分。 例えば目白通りと明治通りの交差点。 歩けばすぐに実感できる。地図ではなかなかわからないが、5mメッシュ標高データを使用すればすぐにわかる。こんな感じだ。 (基盤地図情報5mメッシュと、改訂新版カシミール3D入門編に同梱の地図データを重ね合わせて作成。カシミール3DはDAN杉本氏によるフリーウエア) 池袋から田端まで、堀割になったり高架になったりしているが、ほぼ標高は24m前後になっている。堀割部分は周囲より5mほど低く、大塚の高架部分は逆に8mほど高い(正確な数値ではない)。つまり、線路がなるべく平坦になるように、地形を欠き取り、地形を盛り上げていることがわかる。 では、池袋から山手線に沿って歩いてみる。内側、外側はその都度適当だが、跨線道路橋はすべて渡った。写真も全部撮ってあるけれど、冗長になるので一部にとどめておく。 まずは池袋~巣鴨間の拡大図を置く。以下このポストに限り「JR線」と書いた場合は山手線・山手貨物線(湘南新宿ラインが通る線路)を合わせたものとする。必要に応じて固有名称と書き分ける。また、両路線とも複線で、上下線が別れることがないため、4組の線路がある写真に「左=山手線」と書いた場合、左側2組が山手線のこととする。 【写真1】宮仲橋から池袋方向(左=山手貨物線、右=山手線) 宮仲橋から堀之内橋を見る。その向こう、二段構えの橋は池袋六ツ又陸橋。 左側、山手貨物線のほうが少し高い位置にあり、擁壁はコンクリート。湘南新宿ライン整備のために堀割化されたところで、それまでは地平を走っていた。そのため、擁壁がコンクリートとなっている。 右側、一段低い山手線の擁壁は石垣。谷積みに近いが、目地をモルタルで詰めているようにも見える。 【写真2】大塚駅を池袋方から見る(左=山手線、右=山手貨物線) 大塚駅は、地形が台地上から谷へ落ち込む途中にある。そのため、池袋方から堀割の中を走ってきた山手線は地平に敷設されることなく、築堤につながる。その標高差を利用して、大塚駅池袋方では道路橋「空蝉橋」が線路をまたぎ、大塚駅巣鴨方では逆に線路が道路をまたいでいる。池袋付近では地平を走っていた山手貨物線は、この区間ではレベルを下げ、堀割区間であった。 【写真3】大塚駅南にある立体交差部分。右が「王子電車跨線線路橋」、左が「大塚架道橋」。 北から見ている。画面右が池袋方、左が巣鴨方。右の桁の手前に都電の停留所のカマボコ型の屋根があるのでよく見えない。 王子電車跨線線路橋:向かって右の都電を跨ぐ部分。 いまいち見えづらいと思うが、カマボコ型の屋根は、JR線のプレートガーダーの部分を切り欠いている。そして、プレートガーダー下部は覆ってある。鳩などが入り込まないようにするためだと推測する。 大塚架道橋:向かって左側、道路を跨ぐ部分。全体像は割愛。 橋台に、このように4段の段差が設けられている。一番上は桁受けだとして、他の2ヶ所は装飾的な意味か。煉瓦積みだが隅石を配してあり、段違いになる部分は帯石となっている。 都電側の橋台は白く塗られている。道路側の煉瓦との連続性はないので、この橋台はコンクリート製なのかもしれない(当てずっぽうです)。 【写真4】大塚79号架道橋:都道436号を跨ぐ。北側から。 橋台ごと白く塗られたRC桁。 大塚79号架道橋:南側から桁の裏側。 【写真5】平松架道橋(南から見る) 南から北に架けて上り坂になっている。この付近、JR線は築堤上を通っている。 【写真6】宮下橋から巣鴨駅方面(左=山手線、右=山手貨物線) この付近は4線とも堀割となっている。両側の擁壁ともに同じ石垣のように見受けられる。同時に施工されたものか。 (続く) 参考資料:山手線が渡る橋・くぐる橋(ものすごく資料性が高いサイトです。さまざまな確認作業を大幅に省略することができました。感謝します。) |
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