ジュンク堂新宿店で開催された『廃道ナイトアネックスin新宿junku』に行ってきた。大阪での『廃道ナイト』に続き、イカロス出版『廃道をゆく2』刊行記念イベントとしての開催だ。
ジュンク堂新宿店は8階にカフェがあり、そこをイベントスペースとすることができる。こぢんまりとした会場で、定員40人もまあそんなところだという感じ。過去、ここで見たトークは、出演者のトークのみだったのだが、今回はいつものようにプロジェクターで写真を写しつつ話していくという形態だ。 会場では先日の「『東京近郊ゆる登山』オフ」で別チームを率いていらしたモリカツさんと合流。モリカツさんは夢想吊橋を渡っている人だ。 今回はゲストにT0R1さん! 第一部は、そのT0R1さんとのレポがある氷川道の再探索レポ。第二部はT0R1さんが実際に探索に行った場面場面について解説&感想を求めるものだった。本当は第三部まで用意してあったらしいが、あっというまの1時間半で時間切れとなった。どの場面でもミリンダ細田氏がいつもの感じで写っていて、どうしてもそこがオチになってしまうのでとてもなごんだ。山行がを読み込んでない人には内輪受けに見えたかも…と思わなくもないが、そんな懸念など無駄に思えるほど、構成としてオチがついてしまうので、たぶんみんな楽しめていたと思う。そもそも「読み込んでない人」がいたかどうかわからないし。 会場では、もちろんイカロス出版の各書の販売。その中に、わが『廃道本』も並べられていてやでうでしやでした。もう2年も前になるんだな、企画進行始めたの。 明日は千葉に行きます。 PR
右が「交通」である。古書を購入しようとしたら3000円程度のプレミアがついたものしかみつけられなかったので、地元の図書館で検索したら閉架の奥にあったので取り寄せてもらった。末尾に貸し出しカードを入れる欄があるが、一度も借りられた形跡がないのがまた悲しい。この本は幸い蔵書として扱われていたが、もし貸し出し履歴の多寡で蔵書の廃棄が決まるということがあれば、こんなに資料性の高い本とて廃棄される可能性は高い。なんということだ。
本書を知ったのは、先に書いた『日本の鉄道をつくった人たち』に、参考文献として載っていたからだ。それも、誤情報の情報源として。誤情報とは、エドモンド・モレルの出生年と配偶者についての記述だったが、本書の本筋からいうと無関係に近い記述ではある。出生年を1841年としているが、正しくは1840年。配偶者を「日本人」とし、モレルと同じく結核により後を追うように死去、としているが、本当の妻はイギリス人であり、死亡はモレルの死後12時間後で、理由は不明だが精神的なものか、と『日本の~』では書いてる(と記憶)。 本書の記述は、事業や政府の立場からみたお雇い外国人個人を縦糸に、個人からみた事業を横糸にして織り上げている。願わくば両者を統合した立体的な記述がほしいところだが、それは読み手の脳内で構築すべきことなのだろう。しかし、非常に困難が伴う。なぜなら、読み手(つまり私)に、明治初期の行政や官庁の理解がまったく足りないからだ。 また、お雇い外国人に与えられた職名がいくつあって、それらが日本の行政とどういう関係になっていたのかとか、「建築師長」と「建築師」の関係はどうなのだ、とか、まったく新しい知識が少しだけ放り込まれている大湖にこぎ出すような不安を覚える。先に挙げた『工部省沿革』等で見るといっても限界は低そうだしな。 そしてなおかつ、1906年(明治39年)の鉄道国有化までの、官設/北海道/九州それぞれの事情を把握していなければならない。そうしてこそ、この本の記述が理解できる。 残念ながら、私の脳内には、かろうじて鉄道建設事情が収まっているだけなので、縦糸、横糸それぞれをたどることくらいしかできない。 とはいえ、これは私が責めを負うべきものではないとも思う。義務教育どころか受験勉強としての日本史では、こうしたことは求められなかったし、鉄道ファンでも、国鉄の前が鉄道省で、その前が鉄道院で、くらいが関の山だと思う。まして、鉄道行政の長の役職名がなんなのか、などわかるはずもない。たとえば鉄道行政官庁などこんなである。 工部省 明治3年閏10月20日に開設されたのが工部省で、トップは卿。ただし不在。ナンバー2は大輔で後藤象二郎、これが実質のトップ。明治4年8月14日(太陰暦)に鉄道部門の部署「鉄道寮」が設置され、そのトップは「頭」で井上勝。工部省組織化で、鉄道寮は鉄道局になり、工部省廃止と同時に内閣直属になった。
以後、 内閣鉄道局 ↓ 内務省鉄道庁 ↓ 逓信省鉄道庁 ↓ 逓信省鉄道局→鉄道作業局分離 ↓ ↓ 内閣鉄道院←←← ↓ 鉄道省 こんな感じである。凡庸な脳味噌には体系化できるわけがない。 それでも、本書の著者は高校の教師で、初版時33歳である。すごい、としか言いようがない。そして、初版が昭和43年で、二刷が昭和54年というのもすごいと思う。 (続く かも)
読んでて違和感を感じた原因と、コンビニに売ってるワンコイン鉄道雑学本に対する違和感は同じだ。私は、こうした本には「新たな事実」を求めているのだが、えてして雑学本は感情的で、まったく考察のされていない批評が掲載され、推測でものごとが記述される。
話は鉄道に限らない。私の勤め先で刊行された本で、きちんと書かれた新事実が多かった第一作が大好評だったのに、続編がひどい出来だったものもある。いま や大家となった人の過去の著作で、他人の判断を根拠なく批判しながら自分も大同小異の提案をしている本もある。後者は素人提案によくあるもので、鉄道で言 えば「○○鉄道が赤字なのは□□がいけない。△△をやるべきだ」の類。 この本で違和感を持つ部分を見てみると、多くは詭弁のガイドラインに抵触する。やはり、単なる事実誤認は許容し、根本的な考え方に疑問を持つ部分を挙げる。 (1)リニアへの誤解
JR東海は、その明確な企業姿勢からさまざまな感情的攻撃を受けているが、その会社がなぜ5兆円も出してリニアを建設するのか。そのほうが儲かるからだ、くらいにしか思っていないように見える。東京-大阪間を2時間30分かかる「のぞみ」でも高飛車な姿勢をとり続けていることを見れば、主たる目的は乗客増ではないのがわかるだろう。少し報道に注意していれば、現在の東海道新幹線の施設の老朽化問題が耳に入ってくると思うのだが(例)、あまりに幼い「批評」である。詭弁のガイドライン4「主観で決めつける」 (2)エコの取り違い 「鉄道はエネルギー効率がいいからエコ。一方、鉄道会社が保有する土地に希少種がいるのに開発を進めようとしている。」などという文脈。前者と後者は対立概念ではないので、「エネルギー効率がいい代わりに、希少種が減る」という展開にはならない。詭弁のガイドライン6「一見、関係のありそうな話を始める」。 (3)整備新幹線問題の認識不足 JR九州の事業報告を読まずに、また首都圏-富山・金沢間の交通手段シェアを知らずに、そして国交省その他が推計している数値を知らずにこれだけのことを言えるのはすごいと思う。これも詭弁のガイドライン4「主観で決めつける」。 (4)過去の習俗の知識の欠如
アンダーラインとした根拠を知りたい。時代的に、父親が子どもに向き始めたのは平成に入ってからと言ってもいいくらい最近のこと。現在の家族の感覚で65年前を判断しているが、そのような記述は他にもある。また、戦時中は旅客輸送などよりも物資輸送が恐ろしく逼迫していたのであって、旅客列車のことなど考察しても意味がない。後ろふたつは詭弁5「資料を示さず持論が支持されていると思わせる」 (5)経営主体を混同する 国鉄時代の施策も「JRが」という主語で書かれている。ありえない。これは看過できない記述。 私がこの手の本にあたったとき、いつもなら途中で読むのを放棄する。「~と言われている」「~とされている」みたいな読むに耐えない記述も多い。事実ならば「~だ」でいいのだ。もしここで私が などと書いていたらどうだろう? 読者は「え? だれの言葉?」と戸惑うことだろう。 どうも、、「担当編集者」が不在のように見える。著者が、多少ツッコミどころのある原稿を上げてくるのはよくあることだ。それを確認し、正すのが担当編集者の役割で、もし、著者が書いた原稿をほぼそのまま本にするのであれば、編集者などいらない。方向性を読者の興味とマッチングさせ、内容に著者と共同で責任を持つ。この本には、残念ながらそれがないように見える。編集者は校正者ではない。 そう言いながら、今回はすべて読んだ。どこかに新事実があるかもしれないからだ。そしてそれはあった。それだけに、上記のようないい加減な記述が惜しい。
表題と目次から中身を期待して読んでいた。しかし、読み進むにつれ、「?」が増えていった。しっかり裏を取ってる部分もある。しかし、基本的な事実誤認や前後関係の誤認が多く、鉄道を知る者ならば誤記しようがないような誤記が散見される。また、世間風俗の記述になると、これまた10年の単位でおかしなことになっている。内容としては、コンビニ用の「500円雑学本」と同レベルの信頼性だった。
鉄道の専門事項の誤記(形式誤りなど)は、読み手が「誤記だ」とわかるレベルなのですっ飛ばすとして、誤解、誤説が蔓延しているものをさらに助長する記述や、誤解を広めかねない記述について触れておく。 ●サンパチ豪雪は、新潟県だけを襲ったものではない。 気象庁のサイト参照。 ●アジ電車は、昭和40年頃だけではない。 マル生粉砕!もあるんだから、藤井松太郎の時代にもあるでしょ。国鉄の労働運動史を押さえいないのに、アジ電車や首都圏国電暴動について書こうとしても無理。 ●遵法闘争は「それまでしていた違反をやめたもの」ではない。 違反どころか、定められた速度や常識的な能率よりも低い作業をすることで、処理を遅らせるもの。入換機関車の速度を異常な低さで行うことは、田端の機関士だった向坂唯雄氏が書いている。窓口業務も同じ。 ●大幹線はしっかり、ローカル線は安普請…ではない。 山陽本線は票集めと無関係。線路の凍上は近年でも抜本的な対策ができてなかったのに、それを明治時代に予見せよとは。なんでそれをバブル期のハコモノと同一視するかな。 ●マグロ処理=線路工手、ではない。 糞尿処理についても全般的におかしな記述。 ●ページは、ダイヤを盗まれたのではない。 そもそもフィンチの時代に特急なんて走ってない。ほぼ同時に刊行された『日本の鉄道をつくった人たち』で考察されている。見事に、その本で否定された説を踏襲してしまっている。本項は、その後の記述に2分目ダイヤと2分間隔運転の混同も見られる。 ●山手貨物線は、「わざわざ」遠回りに敷設したのではない。 上野と品川を結ぶには、いまの東京駅回りのルートが最短なのはもちろんだが、既に人口密集地だったため、野っ原だった赤羽-新宿-品川ルートで建設しただけ。 ●八重洲口は、国威掲揚のために「作らなかった」のではない。 いまの首都高八重洲線が外濠で、そこより東は野っ原。そしていまの新幹線ホームのあたりは東京機関区(当時)。だから、そんなところに駅の出入り口を設ける必要はなかった。 続くか不毛だからやめるか未定。
工部省沿革報告
目次 工部本省 鉱山 鉱山課 佐渡鉱山 生野鉱山 三池鉱山 高島鉱山 阿仁鉱山 院内鉱山 釜石鉱山 中小阪鉱山 大葛並真金鉱 油戸鉱山 小阪鉱山附十 鉄道 鉄道局 東京横浜間鉄 神戸大津間鉄 敦賀大垣間鉄 中山道鉄道 会社鉄道 電信局 灯台局 工作局 営繕課 工部大学校附 会計 通常経費 興業費 皇居御造営費 工業資本金 営業資本欠額 営業収支 諸収入 作業上負債償 国会図書館のデジタルアーカイブスの中にある資料。お雇い外国人の出典元になっている。 異常に重い。PDF化してDLできるのだが、10画像(=20ページ)ページごとしかできない。しかもAdobeReader6以上とか要求するし。3以上、とかにしなきゃ汎用性がないだろ。そして、どうせパブリックドメインなんだから、1冊まとめてDLさせなさいよ。 しかたがないので明日アクロバットで結合して解像度落として軽くしてくる。 |
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