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ポール工房さんから「工房通信」が届いた。そこには妙高山の切手が貼ってあった。全国的に名が知られている山だ。その東南東、妙高高原駅の南側あたりから見た妙高山の姿が印刷されている。

GW後半、バイクで上越に行っていた。ふと思えば、あのあたりを昼間に走るのは初めてだった。通ったことは何度となくあるが、いつも夜だった。「移動」だった。新潟県下なので、それでいいと思っていたのだ。なんという迂闊さ。

それはともかく、ツーリング中、圧倒されたのは妙高の大きさだ。高い。遠い。まだ雪が深い。でも、周辺の人は毎日これを見て暮らしているのだろう、と感じた。ぼくが毎日佐渡を見て暮らしたのと同じように。













* * *

さて、その妙高山には登ったことがある。高校1年のとき、昭和62年の夏だ。記録によれば(当時の登山ではすべて「手帳」に行動を記録している)8月17日(月)から19日(水)の日程で、笹ヶ峰から入っている。

高校の山岳部の初めての夏合宿で北アルプス、白馬周辺に行き、台風に直撃されて這々の体で帰ってきた後の「二次合宿」として、1年生だけで行くものだ。ぼくは2泊を提唱したが、1泊を主張する人が多くて二手に分かれることになった。12人の1年生部員のうち、2泊組は4人だった。荷物の分担を考えると最適の人数だ。4人でひとつのテント、ダンロップの7人用を使ったと記録にある。「計画書」が出てこないが、ぼくはテントを持ったはずだ。

初日は新潟駅から、たぶん急行とがくし2号で妙高高原駅へ。そこから笹ヶ峰までバス、歩き始めて高谷池ヒュッテに幕営。天気は怪しい。

翌日は雨になった。0330起床のつもりが雨なのでみんなダラダラし、結局出発したのは0845だった。そこから曇ったり晴れたりで、小休止もダラダラと30分も休んだりして、山頂に着いたのは1245。相当のスローペースだ。霧雨。どこかで(忘れた)もう1泊するつもりだったが、ぼくが翌日に高校の軽音楽部のコンサートがあったことを思い出し、帰ることを提案した。そこからが大変だった。

だらだらと、力なく下った。行動が遅いのでもう日が暮れかけてしまった夕方、池ノ平に降りるつもりが、どこでどうなったのかスキー場のロープウェイ沿いの踏み跡を降りていった。登山道ではない、細い踏み分け道。泥。滑る。手帳には「めちゃくちゃな道」と書いてある。そんなところでも手帳をとっている。

途中でスキー場内の砂利道に出た。これで足場はokとなったが、一人2リットル持っていた水ももうない。ただただつらく、重い足を引きずって歩いた。霧の中なので、地図を見ても自分がどこにいるのかもわからない。というよりも把握するつもりもない。スキー場なんだからすぐに人家のあるところにいくだろう、というように思ったが、行けども行けども道は続く。

1900頃には真っ暗になったので、ついにヘッドランプを出す。霧雨の中に走る光線を、手帳には陳腐ながら「幻想的」と書いている。

2000頃、灯りが見えた。見えてからしばらく歩かないと、その正体がつかめなかった。街灯だった。スキー場の下のほうまで来たのだ。霧の中に浮かぶ街灯が、これほど心強いとは。「ものすごい感動。頂上に行ったときよりも感動」と書いている。そして、ついに自販機があった。心躍った…のだが、なんとオフシーズンで電源が切られていた。なんということだ。

そこからさらに30分。2030に舗装路に出た。すれ違った人に駅までの道を聞き、ひたすら歩いた。途中に自動販売機があったので、喉を潤す。そして2130、妙高高原駅に着いた。小さな缶ビールで乾杯。もう時効だ。そして電車で直江津駅に移動し、0130頃、駅前にシュラフを出して寝た。翌朝、「きたぐに」で新潟に向かい、0900頃解散した。これが、ぼくの妙高だ。

当時は、100グラムでも軽くというのが至上命題だったので、カメラを持っていくことは許されなかったのだが、同行したYが持ってきていて、妙高山頂で撮ってくれた。大変貴重な写真であり、大切にとってある。着ているのはモンベルのハイパロン雨具(安い)、履いているのはナイキのジャージ。登山靴は、もちろん重登山靴だがICIのオリジナルだったような。

* * *

GWに妙高を見ていろいろ思い出していたところに、ポール工房の切手が妙高山だったことがとても嬉しかったので、その記念にしたためておく。
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