銀座ニコンサロンで、吉野正起さんの道路写真展が開催されている。今回のタイトルは『道路2011 -岩手・宮城・福島-』。震災で被害にあった地域の道路だ。 吉野さんとは、2010年9月に銀座ニコンサロンで開催された写真展『道路』で初めてお会いした。道路を尋ね歩き、写真に収める。作品にする。誰の記憶にもでてきそうな道路の光景を切り取った、すてきな写真展だった。 私がいちばん強く印象に残ったのは、人の気配のしない山間部の道路である。上の写真でいうと、柱の2面、その右の3点。コントラストをつけずに、でも明るくプリントされたその画面には、ありふれた、だれの記憶にもある道路が写っている。ただし、廃道でもないのに草が路面に這い出し始め、周辺の民家には人の気配がない…。 おそらくこうした会場にいれば、否が応でも観客は震災の話を始めるだろう。その都度、そういう話につきあわねばならないご苦労は大変なことと思う。 吉野さんと話していて、気がついた。私は、被災した道路には趣味的な興味が湧かないのだが、それは、「まだ使えるのに、新しい道路に代替された悲しみ」を宿していないからだ。それは、向き合ってもこちらは悲しくならないし、むしろ積極的にそれを写真なり文章なりで描き出すことに力を注げる対象だ。 一方、災害で破壊されたり立ち入りを禁止された道路は、単なる地域の悲しみしかない。本当の悲しみだ。それを、自分の思考をまとめるために眺めたり、あるいはエンタテイメントとして解釈することは、私には不可能だ。只見川の橋梁を撮りにいったことがあるが、それは、親しみのある場所だったからだ。 吉野さんの作品は、鑑賞者が災害の写真をどう捉えているかを浮かび上がらせる。私は、前述の通りだ。みなさんは、どういう印象を受けるだろうか。 ニコンサロン連続企画展 Remembrance 3.11 吉野 正起 3/21 (水) ~3/27 (火) 10:30~18:30(最終日は15:00まで) 会期中無休 <関連記事> 吉野正起氏 写真展『道路』 PR 一言で言うと、予想とまったく異なる内容である。いや、タイトルに偽りはない。私が抱いていた白井昭氏や大井川鉄道のイメージが誤っていた、というだけの話である。おそらく、多くの読者がそう感じるのではないだろうか。 大井川鉄道といえば、子どもの頃から「C11227が運転されている私鉄」として知っていた。そこに、古い名鉄や近鉄の車両が走っていることも知っていた。私にとっては、ただそれだけの存在だった。そのため、私が大井川鉄道初めて乗ったのは比較的最近の2001年頃だ。トラストトレインのことや、C5644、C11190のことを知ってはいても、ただそれだけの存在だった。 「地域再生の鍵がここにある。」 かなり控えめなアピールであるが、このキャッチは帯の表1側に大きくあったほうがいいのではないかと思うほどに、本書の内容はこれに即している。 いま、地域の鉄道について真剣に考えてる人やグループはたくさんある。地元が主体となって行動しているところ、その鉄道のファンが主体となって鉄道会社とともに増収策を考えているところ、「公募社長」という仕組みで従来の枠では考えられなかった取組をしているところ。うまく歯車が噛み合ってないところもあるにせよ、とどのつまりは、関係する誰もが「鉄道をきっかけに、地域の衰退を食い止めたい。あわよくば、鉄道が地域の象徴のように愛され、利用され、鉄道の収益も向上すればよい」ということを願っているはずだ。 「地域再生の鍵」とは何か。本書に解答が書いてあるわけではない。白井昭の思想と、40年以上かけて実践してきたことを系統立てて書いてあるだけだ。しかし、地域再生のリーダーたちが本書を読めば、自らや自らの地域をそれと比較し、なにができるか、なにが欠けているか、改めて見直すことができるのではないだろうか。 その土川のエピソードが、実に興味深い。時は昭和35年(1960年)、いまから52年前である。土川と、友人の建築家・谷口吉郎の会話である。 「文明開化を担った明治時代の建物が、いま取り壊しの憂き目に遭っている。六〇年代のいま、新しいもの、モダンなものが無条件にもてはやされ、明治のものは顧みられることがない。何とかならないだろうか。」(本書より転載) この意識が明治村やモンキーパークを生むのだが、これは、その30年後の会話としても十分成り立つ。30年間(なのかもっと前後に長いのか)、世間の意識はこうだったのだ。しかし、52年後の今ではどうだろうか。私のブログの主要なテーマのひとつである「廃道」では、まだ成り立つ言い分かもしれない。しかし、成り立たなくなる場合も確実にでてきた。さまざまな「廃」に目を向けた人々は「それは廃れさせていいものなのだろうか?」という自問自答を始めた。白井が意識せず作り上げてきた価値観と同じものを、急速に作り上げつつあるのだ。 最後にもう一度。地方鉄道の活性化を考えている人は本書を読み、考えよ。白井と対等に会話できるくらいに思考を進め、かつ周辺にもそれを理解させることができれば、きっと地方鉄道は回り出すし、公募社長にもなれるに違いない。 注)著者名「髙瀬文人」氏はハシゴ高。「大井川鉄道」は「~鐵道」が正式表記。検索性を高めるために、それぞれ標準的な字体とした。 その建物の脇に、比較的新しい電柱と標識があった。しかし、それらをも抱き込んでしまう蔓状の植物。電柱にテンションを与えるワイヤを登り、頂点を征服。その途中からは「止まれ」標識に手を伸ばしてつかみ取り、標識の付け根即ち電柱に取り付いて天地方向に延び、電柱頂点から下ってきた蔓と絡んでいる。なんという生命力。 無人と化した家屋を「廃墟」と称してを鑑賞する趣味は私にはなく、むしろ避けているのだけれど、この標識には廃道に取り残されたものと同じものを見た。標識が、なにか話したがっている。なぜ自分が新設されるのに、すぐ横には無人の家屋が放置されたままのか、と。 2012年3月21日追記: 東京ガスの旧ロゴとのご指摘を高瀬文人さん、齊藤宏之さんよりいただきました。ありがとうございます。こちらのサイト「3po Maniax」によれば、1985年までこのロゴだったとのことです。 こうした標章は、検索してもあまりひっかかりません。意外に撮ってる人、少ないのかな。気にしてみようと思います。 しかし、ホーム上屋について「まず、数を見るようにしよう」と思ったので、買った。自分であれこれ考えなくても、答えが出ているものであれば、それを見たほうが手っ取り早く、他の考察に時間を振り向けることができる。 改めて見ると、素晴らしい本だ。解説が緻密で、講義を受けているようだ。また、豊富な写真で「この駅のホーム上屋はこうだったのか!」と、いままで視界に入っていなかったものを見せつけられる。そして、旅行に出たときに「見に行くべき箇所」がグッと増えてしまった。 掲載されている駅などは、さすがに「すべて」ではない。おそらく「すべて」には程遠い。そのため、読者には「発見する喜び」が広く残されている。それを狙ったわけではないだろうが、大切なことだ。全部教えてしまっては、つまらない。 本書にも欠点があるとすれば、価格と製版だろう。しかし、どれも本質ではない。オール1色刷り164ページで2940円。5000部刷れるなら1680円くらいまで下げられるだろう。バカ売れするジャンルではないだけに、ごく少部数なのだろう。製版については、カバーからしてピクセル数不足である。 本書の内容の一部は、著者:岸本章氏のサイトにある。こちら。 |
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