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20110517_000.JPG『東京ぶらり暗渠探検』を刊行した洋泉社から刊行された『川跡からたどる江戸・東京案内』。編著者は菅原健二氏、『川の地図辞典』の著者だ。クレジットを見ると、もう一人長田ゆき氏という著者がいて、ともに東京都中央区立京橋図書館に勤務している。会社の近くだ、というか何度も利用している。

私は大きな勘違いをしていた。この本は、埋め立てられてしまった河川を土木的な観点で解説するものではない。ここにこう水路があって、それがいまはこうなって…というものではない。タイトル通り、「江戸・東京案内」なのである。内容は、何年に誰が何をした、何年にはこうなった、当時の様子はこうだった、と文章で書き連ねてある。


私の勘違いは勘違いとして、私の観点で書く。

この本、明治時代の地図が適当に載ってて、すでに埋め立てられてしまった河川について載ってそうだから買ったのだが…あまりに図版が少なすぎる。著者は地図を見ながら文章を書いているのだろうが、その地図を読者にも見せてよ。

一体、この本に書かれている内容を、地図を見ずに位置関係を把握できる人間が何人いるのだろう? 現存していない地名を羅列するのであれば、図版としては、「現在の地図」と「現存しない地名が書かれた地図」を併載し、さらにそこに川の跡をプロットするのが筋だろう。そういう地図がないわけではないが、それがあまりにいい加減な地図なのである。明治13年測量の地図などもあるのだが、縮小しすぎて読めない。現在の道路や地名との比較がないので、それとわからない。地図はほぼすべて「京橋図書館蔵」なので、そうやってコストを節約したのではないか。

では、と自分で記載事項を頼りに地形図に川跡をプロットしようとしても、現在の地形や地名とは大きくことなっているので、どこにプロットしていいかわからない。やはり、当時の地形図が掲載されていることが重要なのである。本書は、東京の消えた地名まで完璧に把握した人物を読者として想定している本になってしまっている。

単価が数百円あがってもいいから、きちんと図版を入れて欲しかった。それにつきる。


また、明治時代の地図に付された注記が解せない。
「明治13年測量の…」とあるのだが、そこには、当時開通していないはずの鉄道や駅があり、当時はないはずの市街地がある。測量と編集は、完全に分けなければならない。測量など、とくに古い時代はしょっちゅうするものではない。一度測量した結果を延々何十年も使って、そこに「編集」として資料や現地調査から地図を作り上げていく。だから、昭和も50年代になっても、山間部などは明治時代に測量したものをベースにした地図しかなかったりするのだ。ここは「測量年」ではなく「編集年」を記載すべきだ。



一方、先日、白水社から刊行された今尾恵介氏の『地図で読む戦争の時代』を入手した。今尾氏の著作は主観で自分の意見を述べるものもあるのであまり期待していなかったのだが、さにあらず。いま読んでいるのだが、地図の本ではなく、地図を見続けた人ゆえの思想を語る本のような気がしている。レポートはいずれ。
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先日、土砂降りの中、クルマで北陸道福井北ICから国道416号を東へと走っていた。目的地はえちぜん鉄道永平寺口駅。ふと、左手に廃ガソリンスタンドがあった。

といっても計量器はすでになく、防火壁があるのみ。しかも、一面だけ。

20110516_000.JPG
場所は記憶にないが、タイムスタンプからすると、えちぜん鉄道小舟渡駅よりも5分ほど西側のはずだ。背後は川ではなく泥田。

この壁。モザイクがすてきだ。そこに紅一点、日本石油のライジングサン。

逆から。
20110516_001.JPGこの、唐突に壊されたような印象の壁が雨に濡れそぼっており、重みがあった。壁にものが掛けてあった跡や壁の前にものを置いていた跡に、この壁が重ねた年月を感じる。

振り向くと、こんなだ。
20110516_002.JPGこの温室のようなものはなんだろう。そういえば、給油所には、こうした温室があるなあ。

この写真でいう温室の左側、おそらくそこにもかつては防火壁があったのだろう。ここから先は推測だが、営業中は窓を開けても防火壁の裏側しか見えなかった隣家が、給油所が休業するにあたり、懸案事項であった日当たりを解決するために、この部分の防火壁のみ、取り払ったのではなかろうか。そして、壁の断面をよく見ると、コンクリートブロックが覗いている…。

その手前の三和土のような部分はなんだろう? 以前はサービスルームがあったのだろうか。いずれにしろ、いまはすべて過去の形となっている。入口にロープを張ったりしてないので、じっくりと観察できる。これがいちばんの魅力かもしれない。


20110515-999.JPG気になっていた、大木茂氏の写真集『汽罐車』を買った。本の詳細はこちら

この写真集を知ったのはどこだったか。どなたかのツイートだったと思う。まだ刊行前の頃だ。この写真を見て、吸い込まれた。買う!


ビニールにくるまれていた本を、深夜、心してテーブルの上で開封する。まずはカバー回りをなめるように見る。美しい。帯には、多くの作品を共にした、俳優・香川照之氏の言葉がある。まず、その帯を外してみる。
20110515_001.JPG.

そして、カバーをはずし、本体表紙。
20110515_003.JPG本体表紙は、もっとも自由奔放なページだ。商業的なもくろみもなく、デザイナーがいちばん遊べるページ。本体表紙については、かつてこちらに書いた。→丸田祥三『棄景V』『棄景origin』


カバーを戻し、表紙をめくる。そこには見返し。見返しは手触りを楽しむ。本扉は…前述のリンク先。この本扉だけでもうお腹いっぱいになる。氏、23歳のときの作品。

ページをめくる。いちいち、次のページに行くのに躊躇する。なんというか、次々にページを繰ることが、作品を消費してしまうような気がしてためらうのだ。次にどんなすごい作品が来るのか、どう裏切られるのか。

写真は144ページ、153点。私が見入る作品の傾向は、黒が美しいもの。撮影した時代が感じられるもの。これを、香川氏は「匂う」と表現している。的確だと思う。なので、C62重連ニセコの銀山峠などは、失礼ながら、あまり興味をそそられない。


もっとも美しいと思った作品は、128番浜小清水の流氷の朝。これは、本文(モノクロ20ページ)で大木氏自身の印象も強いそうで、私の、作品を見る目もそう変な方向を向いているわけではないと思う。

もっとも匂いを感じた作品は、49番野辺山。C56が未舗装の道路をバックで横切る作品(←リンク先の3枚目)。未舗装の道路が若い時代の光景のひとつだった私にとっては、こうした作品にグッと来る。なにより、夏の匂いを感じる。広田尚敬氏の作品にも、9600が北海道の未舗装路(遮断機なし)を横切る作品があるが、それも好きだ。

もっとも旅情を書き立てられた作品は、67番の抜海。

明るさと広さを感じた作品は、82番の香月と、133番沼ノ端。

人物を主題とした作品も多いが、あまりに完成されすぎていて、別の言い方をすれば本当に映画のスチル写真なんじゃないかと思うほど完璧なので、私の「引き込まれる度」でいえば上の作品たちに一歩譲る。



いま、「映画のスチル写真なんじゃないか」と書いたが、大木氏はスチル写真家である。とはいえ、大木氏のお名前はほうぼうで目にしてはいたが、映画のキャメラマン・木村大作氏と組むスチル・キャメラマンだとは知らなかった。目にしていたのは、こうした写真だ。
20110515_000.JPG(RailMagazine1991年6月号表紙)

大木氏といえば、この「ズーム流し」。露光中にズーミングする手法で、大木氏オリジナルとのこと。被写体が止まっているものに対する露光間ズームとは違い、走行中の列車に対してズーミングすることで流し撮りに見せるわけだ。もっとも、偶然にも広田尚敬氏も、広田泉氏も、それぞれ独自にその手法を使っていたというから、機材に対する研究心の塊のような人ならば到達する技術なのかもしれない。

また、この写真集に収録された作品は、1963年から1972年の間に撮影されたもの。大木氏は1947年生まれなので、16歳から25歳の間に撮影されたものだ。その撮影行は本文に詳しく紹介されているが、若くしてこの作品はほんとうにすごいと思う。



これだけの写真集が、3990円。鑑賞後、感じたのは「安い」。買うべし。
約1年前にオーバーホールしてから、結局1000マイルも乗ってない。やっと今日、オイル交換をした。ついでに、懸案事項だった、ゆがんだままのシフトペダルを交換した。

ペダルの交換は、以前もしてみたことがある。しかし、新品のペダルはアンダーガードに干渉してしまう。これは、アンダーガードをワンオフで作ってもらうとき、ゆがんだペダルをつけたままバイク本体を預けたためで、ゆがんだものを基準に完成してしまったからだ。

作ってもらったのは千歳烏山の清水工業所。オーナーの清水さんもバイク好きで、バイク雑誌に関わっていたときに随分とお世話になった方だ。そこで、個人的に作っていただいたのがアンダーガードだ。製品サンプルのページにある。4mm厚のステンレス製だ。



かれこれ7~8年、ゆがんだペダルのままでバイクに乗っていたのだが、シフトチェンジもしづらいので交換することにした。純正のアンダーガードは、シフトペダルとクランクケースの間には入っていないのだが、このワンオフものは入っている。
20110513.jpg対処としては、アンダーガードを削ればなんとかなると思っていた。いろいろ削ってみた。しかし、まったく埒があかない。そのため、アンダーガードを切り取ることにした。

297982012.jpgアンダーガードを取り外して改めて気がついたのだが、ノーマルのアンダーガードはペダルとクランクケースとの間には入り込まない。忘れていた。その証拠として、ペダルがクランクケースと擦れた跡が無数にある。

297995757.jpg297980696.jpg下2枚の写真のように切り取った。これでストレスなくシフトチェンジができるようになった。勝手に切り取ってごめんなさい、清水さん。


交通新聞社新書の『日本初の私鉄「日本鉄道」の野望』(中村建治著)を読んだ。私のTL上では概ね好評か、好意的に迎えられているようだ。

20110510.jpg

私としては、本の完成度がとても低いと感じた。素材はとてもいいはずなのに。

内容、エピソードのひとつひとつはきっちりと検証している。登場人物も、そのとき何歳でどういう経歴の人かをきちんと書いているから、とてもわかりやすい。でも、単にそうしたエピソードを箇条書きに羅列しているだけ。挙げ句の果てに、下手くそな小説仕立てにしてしまっているため、おそらく膨大な資料を参照して検証された事実が、フィクションであるかのように見えてしまう。「ダイヤ作成の秘話」でお馴染みのお雇い外国人・ページのエピソードも入っていて、私はそれが誤りだと検証されているものを読んでしまっているのでますますいい加減な本に見えてしまう。(『日本の鉄道をつくった人たち』(悠書館)参照)

本書の書き出しは、青森までの全通から始まっている。小説仕立てで、18ページ目(本文1ページ目)では主人公である二代目社長・奈良原繁が開通一番列車に乗っている。その後、会社設立の経緯、まずは熊谷までの開業、高崎、仙台、などと帰納法のように展開していき、青森までの全線開通は単なる時代の一点として通り過ぎ、鉄道国有化まで行ってしまう。196ページで、ようやく冒頭の数日前の描写になる。その後、わずかなページで現・常磐線や東北新幹線に触れ、本書は終わる。なんだこのジェットコースター展開は。

小説仕立てが下手くそで困ったのは、『余部鉄橋物語』(田村喜子著/新潮社)も同じだ。どちらも、書き手が小説家でないものだから、台詞がすべて単なる説明なのだ。また、伏線というか、物語のつながりがない。本書22ページで、仙台開通記念式典が冬になったことを「あのお方のせいだ」といい、その伏線を回収するのは166ページである。しかも描写は重複している。

また、著者が撮影したという写真があまりにも下手くそすぎる。いまどき、携帯で撮ってももっとうまく撮れるしシャープに写る。なぜピンボケ写真がたくさん掲載されているのか。もしかしたら、版元のせいかもしれないが。私が担当だったら、著者が撮った写真は使用せず、別に手配しただろう。



まだ買う前の方。wikipediaの日本鉄道の項目鉄道国有法の項目を読めば十分です。









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