「浜松ジオラマファクトリー」という施設がある。情景作家・山田卓司氏のアトリエ兼展示施設で、そこで「浜松ジオラマグランプリ」というコンテストを開催している。その大賞(グランプリの次)ほか計三つ受賞したのが、軍艦島の日給社宅をモチーフにした「光さす庭」だ。
来年の8月頃まではケースに入れられた状態で自由に閲覧できるというので、大阪に行った帰路、浜松に立ち寄った。上の写真で白くなっている部分は、ケースへの映り込みだ。 この9階建てのアパート、恐るべきは室内の作り込み。戸、窓、手すり、すべて1mmに満たない部材を使ったフルスクラッチだ。1フロアだけならともかく、9フロア分。それを2棟分。ちょっと作業が想像できない。 9階建てだが、実物はけっこう小さい。1/200くらいか。Nゲージサイズより小さい印象だ。この作品はあくまでも日給社宅をモチーフとしたもので、日給社宅を模型化したものではない。軍艦島のほかの建物の要素をいくつかミックスしているので、軍艦島の、とくに立ち入り禁止エリアになんらかの手段で(取材会や特別なイベントなどで)入ったことがある人には、よくぞ行ったことのない作者がここまで…と思うことだろう。 驚くべき話がある。当日、現地からtwitterに写真をアップしたのだが、元島民で軍艦島の保存活動をされている方が、写真を日給社宅の実物と見間違えて思い出のコメントをくださったのだ。それくらい、雰囲気を捉えているということだ。 惜しむらくは、展示の方法。作品タイトル「光さす庭」とは、非常にすぐれた名付けだと思うのだが、この展示では庭に光はささない。左上からスポットライトを当て、陰影をつけてあげたい。審査期間中はケースもなかったし、もっと自由に眺められたようだ。 * * *
さて、以下は「好み」の感想。この「光さす庭」に比べて、グランプリ作品は、実はかなり大きい。縮尺は1/15程度か。ほか、浜松ジオラマファクトリーには数々の情景作品が展示してあるのだけれど、そのほとんどは1/35くらい、ガンダムでは1/100。Nゲージの車両工作やジオラマを見慣れた目にはちょっとスケール感をつかみにくく、情景も狭いと感じてしまう。また、ガンダムなども表面がつるっとした部分が多いので、もっと凝縮感がほしくなる(あくまで「好み」の話)。 とはいえ、鉄道模型でいえば「16番クラス以上の大きさの車両のディテールアップ」のような楽しみ方は模型の楽しみの王道の一つであり、ジオラマをたしなまない(簡単なパイクをひとつ作ったことがあるだけ)私のような者は、自分で手をかけるという点ではその楽しみ方はよくわかる。 題材が違えばスケール感も違うのだということを知った展示だった。 ●審査日にご覧になったきしのさんのブログ digression第3回浜松ジオラマグランプリ ●浜松ジオラマグランプリ公式サイト http://www.hamamatsu-diorama.com/2014/08/3rdgpresults.html ●作者による制作日誌 光さす庭(軍艦島日給社宅)ができるまで・その1 光さす庭(軍艦島日給社宅)ができるまで・その2 PR |
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