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「架空の地図」の作者、「地理人」こと今和泉隆行さんの著書が刊行された。『マッピングナイト』は今和泉さんが突然現れた「3」も登壇した「4」も別件があって行けなかったけれど『タモリ倶楽部』は見ていた。そして、おもしろいテーマだけれど、空想地図の話だけで一冊の本にするのは難しいのではないか、さてどういう構成になるのか…と興味深く思っていたところ、私の予想などとは全然違う本に仕上がっていて驚いた。もちろん、違ったのは「いい方向に」だ。

本書は、空想地図を題材にした、偉大なる観察眼の養成講座というか、その獲得のプロセスと、さらにそれを実際の町並みにあてはめて考えた、都市計画を帰納法で考えていく(などという言葉や表現は一切ないが)本であった。

今和泉さんが、子供の頃からいかにして街をながめ、いかにして把握しようとし、そして把握していったか。そのプロセスで、観察眼が養成され、空想地図にフィードバックされていった。今和泉さんの空想地図があまりに「本物ぽい」のは、きちんと街を観察していて、その理屈に従って描いているからなのである。

だから、この本は、地図が好きとか、街歩きが好き、という人にこそ読んで欲しいと思う。

* * *

こういう本格的な架空の地図は描いたことはないが、鉄道模型の小さなジオラマを手がけようとしたことはある。着手はしたものの、初期の段階でつまづいてやめたのだ。つまづいたのは、道路や街をどう配置すればいいか…どころか、どういう地形を作ったらいいか、というアイディアが出なかったからである。例えば牧場を作ろうとする。では、牧場は、どういう場所にあるのか。地形をどう利用しているのか。牛舎はどうあるのか。柵はどうめぐらされているのか。そういったことを想像できない限り、着手することができなかった。

悪い例をひとつ。京都の嵯峨野観光鉄道のトロッコ嵯峨駅にある「ジオラマ京都ジャパン」のジオラマを見てみよう。
こんな建物の並べ方はないだろう! 

ここには町並みをまったく感じない。ただ適当に建物の模型を置いただけ。駅前に唐突に住宅がある。遊園地がある。団地がある。そこから100mも離れずに茅葺き屋根の家が、多の建物に挾間さてある。木造長屋や倉庫がある。こんな町並みなどあってたまるか!

1980年代前半の、確かNゲージPLAYMODELだったと思うが、そこに発表されたジオラマに夏の神社があった。鉄道は出てこないジオラマだが、そこにはストーリーがあった。神社のいわれもあった。そこでの祭りがどういうもので、それを支えている町の人はどういう人で…という設定があった。ジオラマは、そうであってこそ、リアリティが出る。空想地図と同じだ。

模型鉄道地鉄電車』(宮下洋一著/ネコパブリッシング)という素晴らしい本がある。この本に掲載されているジオラマが素晴らしいのは、ごく小さなスペースでも、それがあまりにリアルだからだ。眺めていると「そうだ、線路脇ってこんなだ」「家の横ってこうなってるよね」という発見の驚きばかりだ。もっとも、そうしたことは、昔から繰り返し雑誌で訴えられてきたことではある。

* * *

今和泉さんは、街を把握する際に、俯瞰しよう俯瞰しようとしている。その姿勢が、とても共感できる。そして、特定の、例えば建築の観点からだけで語ろうとしないように注意している。そうしたフラットな目を持ち、さらに、俯瞰するだけではなく、きちんと咀嚼しなければフィードバックはできない。その咀嚼ができていることで、空想地図はリアリティを持った。

* * *

さて、子供の頃から何度か架空の鉄道の地図を作り、でも駅前の道路すらどう書いていいかわからず放棄することを繰り返した私がいま空想するのであれば…。

今和泉さんの「中村市(なごむるし)」は内陸の都市という設定である。しかし、新潟生まれの私としては、港湾都市を想像するだろう。どういう規模の港湾で、旅客船は入るのか、貨物の流動はどうか、鉄道駅との結びつきはどうか、河川との関係は…。いや、こう考えると、自分が地図の上で何を把握したがっているのかを確認することだと気づく。

空想地図を描こうとは思わないが、空想からリアルに戻っていくことができる本書は地図というよりも街の成り立ちのような話が好きな人にはぜひ読んで欲しいと思う。

最後に。
本書のカバーが秀逸である。装丁は小沼宏之さんだ。


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近鉄八王子線。軌間762mm、存廃に揺れたこの短い線の終着駅がこの西日野駅だ。

ホーム週間に駅舎が立ちはだかる。そしてその前に、駅便。

コンクリートブロック造り。

小便器。こういうトイレでも、バリアフリー対策として手すりが設けられているのだが、そもそも段差があるから車椅子は無理で、これはもっぱら松葉杖とかそういう人向けであるに違いない。

個室にも手すりが! もちろん汲み取り式だ。




スチーブンソン式弁装置が動く!(東武博物館)
スチーブンソン式弁装置が動く!動画編(東武博物館)の続き。

梅小路蒸気機関車館に、元日鉄鉱業の1080が保存されている。これの下回りをノーファインダーで撮った。

後部、動輪側。動輪の車軸に、赤い円盤が四つついている。上向きの棒が全身用の偏心輪+偏心棒、下向き(水平に見える)の棒が後進用だ。

前方。巨大なクリップみたいな部品が加減リンク。そこから前方(写真で言うと左下側)に向かって偏心棒が突き出している。

別角度。

弁心棒。これがピストン弁(蒸気をシリンダーに入れる向きと量を調節する弁)をスライドさせる。


スチーブンソン式弁装置は、国鉄制式機のようなワルシャート式と違い、なじみがない方も多かろう。こちらのサイトにリンクを介したものだがGIFアニメがある。また、英語版wikipediaにはそれを改変して90度回転させたGIFアニメがある。これを見ると、前進時にも後進用の一式を動かしているのはいかにもムダで、徐々に廃れていったのもなるほどと感じる。


『百駅停車』(杉﨑行恭著/新潮社)のカバーにも登場する、近鉄特殊狭軌線の日永駅。下りる時間はなかったが、待ち合わせの間にさっと撮った。上から見ると三角形のホームの上に、ふたつの斜辺に平行する形でふたつのホーム上屋がある。右は西日永方面、左は内部方面だ。

さて、ホーム上屋。左の内部方面は、Y字型の支柱が古レールで、それ以外はすべて木製。対して西日永方面はその近代化版といった感じ。違うのは、Y字型の支柱が鉄骨製だということくらいで、ほかの部材は木材だ。

このホーム、隅から隅まで歩いてみたかった。
JR四国の駅名標にも、ゴナ版と新ゴ版があるのに気づいた。

まず、新ゴ。
「が」「き」「さ」がもっとも特徴的なのだが、他の書体も「いかにも新ゴ」だ。

そして、ゴナ。

新ゴと比較できるものを選んだ。「か」「き」「た」、どちらがお好みだろうか?


たまたま10件の駅名標を撮影していたが、見比べると、感じの駅名がゴシックのものは新ゴ、丸ゴシック(ナール?)のものはゴナ。所在地表記がゴシックのものは新ゴ、明朝のものはゴナのようだ。隣駅を指す矢印が三角であるか矢印形であるかは関係ないようだ。


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