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猊鼻渓の近くで広い青空給油所跡があった。敷地内にプレハブがいくつか建ち、近くの土木工事の事務所として使われていた。この日は休みなのか、だれもいなかった。

サービスルームは閉鎖されて時が経っているようで、5枚の大きなガラスのうち3枚がなくなっているなどの傷みはある。しかし、敷地が事務所として使われているからか、整頓され、きれいに保たれていた。サービスルーム軒下の鈍角V字型の意匠はなんだろう?(※追記あり)

小さなアポロが道路を向いている。防火壁は歩道に飛び出している、というか歩道に敷地を明け渡したのか。

防火壁は、出光の塗装の下から水色が見えていた。わかりやすいので外側を掲載したが、防火壁の内側も、サービスルームの壁も水色が見えていた。

「モービロイル」という表記(1)から、元モービルオイルではないかと思い、出光の塗膜の下に「モービロイル」という文字を探したが、見つからなかった。

(※同日追記)
軒下のV字型の意匠は、昭和42年頃までのモービルオイル独自のものとご教示いただきました。元モービル確定しました。もっとよく探せば痕跡が見つかるかもしれません。





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登米から北上川を遡り、岩手県に入ると、ある集落でこんな建物があった。役場、あるいは支所、あるいは銀行。学校の校舎の一部、業務用の建屋にも見える。

向かって左手に「くみあいストアー」があるので、農協跡だろう。この「くみあいストアー」の文字の手作り感、こういうのは大好き。

敷地内には給油施設の後もあった。



石ノ森章太郎がかつて見たシェルから県道を北へと上がっていく途中、田園地帯に郵便局のような建物があった。でも、どうやら使われていないようす。

各種公共料金取扱いの表示がある。しかし、郵便局にしては入口が妙な作りになっている。

ガソリンスタンドのサービスルームではないよな。

裏側。

ここには安売り自販機が設置してある。写真を撮っていると、近くの農家の女性が自転車で飲料を買いに来たので聞いてみると、ここは農協で、周辺の米はすべてここに運び込まれていたそうだ。それにしては、倉庫がない。



「震災でやられてしまった」とのことだった。GoogleMapsのストリートビューで見ると、撮影は2011年10月だが、立ち入り禁止の処置がされているのがわかった。そして今現在は、上記のように更地になっている。

 






宮城県に石ノ森章太郎の生家がある。その近くに、古いシェルがそのまま残っている。あまり日当たりがいいわけではないからか、シェルのマークの赤も黄色もきれいに残っている。

GoogleMapsのストリートビューでも見ることができるが、その撮影は2011年10月、サービスルームの背後に大きな木が写っている。それが、このペイントを保護してくれていたのか。また、同じく移動式計量器も写ってはいるが、それは2013年秋に訪ねたときにはなくなっていた。どこかで活用されていることを祈る。




タイトルからしていいではないか。私も丸ゴシック…正確に言うならば、看板屋さんが書いた丸ゴシックは大好きだ。小学生の頃から好きで好きで、とくに駅名標はその頃に写真も撮っていた。
http://www.flickr.com/photos/56148795@N04/sets/72157630712374524/



カバーには「止まれ」。本体表紙には看板職人による手書きで「まちモジ」。

本文をめくると交差点名の標識や架道橋に直接書かれた文字、駅名標やバス停、そして昭和25年式の道路標識まで出てくるという、道路ファンをも惹きつけてくれる。さらに、本物の看板職人が、丸ゴシックを下書きナシで書いていくことを取材したページがある。夢中で読んでしまった。

  

また、国による書体のクセ、アクサンテギュの表現の違い、アルファベットを縦書きにする場合…などなど、ギッシリと著者の知見とユーモアが詰まっている。本文が、最初は普通の丁寧語だったのが、だんだんと緩くなり、「うまいなー」とか「思うんだね」とか、まるでtwitterで話しかけるような文章になっていく。それもまた、とてもバランスがいい。



* * *

僭越ながら、本書に書かれたことは「そう、そう!」と思うことがたくさんある。

例えば丸ゴシックの考察の中、P26に「ひょっとして、角を丸くして、親しみやすい効果を狙っているのか?」とある。実際、これはそうだと思う。例えばこんな体験がある。登山のガイドブックシリーズのカバーにおけるタイトル文字を、デザイナーが丸ゴシック(私は大好き)で指定してきた。しかし、営業サイドは「これだと易しい登山の本に見えるから角ゴシックにしてくれ」と要望してきた。面白いことに、比較的易しいコースがセレクトされたタイトルは、丸ゴシックのままでokとなった。(もちろん、カバーデザインとはトータルバランスだから、そこだけ角ゴシックにするとおかしくなるんだよ、と抵抗したが、残念ながら通らなかった。)

また、ハイフンの問題、プロポーショナルフォントの問題、リーダー罫の問題等々、私が常日頃感じていたことが整然と解説されている。カーニングなど、私はポップなどを作るときには文字をアウトライン化して手作業で字間をツメている。このあたりは、本書のブックデザインを担当された祖父江慎さん(後述)も、勤務先が刊行した枡野浩一さんの『ますの。』において綿密に調整されたと聞いている。

文字詰めについては「ひどい例」が載っている。アルファベットの字間が近すぎて、あるいは離れすぎて読みづらい例だ。前者について思うことは、一世を風靡したヒラギノ角ゴは字間を詰めるなということ。後者については「デザイナーは字間を空ければオシャレだと思ってるだろ!」ということ。ヒラギノ角ゴはボディが一回り小さいまま、ベタうちでいい。ボディが小さいことによる、字間が空いたような見え方が絶妙なのだ。10.5Qを1Hツメなんかにするんじゃない。台無しだ。かといって、デザイナーはカーニングを+100とかにもするんじゃない。これも台無しだ。私が「手書き風フォント」が大嫌いなのは、字間がおかしいからだ。一般人が好きなポップ体と勘亭流同様、これらはツメて使え。ベタ組みはダメだ。

* * *

著者であるフォントデザイナー(と表現していいのかはわからない、プロフィールには肩書きはない)の小林章氏には、勝手に(これまた大変僭越ながら)親近感を抱いている。なにしろ新潟市のご出身だ。本書には市内の写真が多数収録されている。そして、たぶん、鉄道もお好きだ。国鉄時代の手書きの駅名標の文字について研究していただきたいと勝手に思っている。

一方的な親近感を決定的にしたものは、これだ。
バスの出口にある「口」の字。そう、そうなんだよ。これは「出」ともどもおかしな書体なんだ。しかし、滅多に載らないバスの車内、しかも運転手のすぐ横だから、写真に撮ったことはなかったんだ。いや、見せれば、こういうのが好きな人は「いいねえ」って言ってくれるだろう。しかし、「バスの出口の『口』、いいですよね」だけで会話が成り立つのは、たぶん、小林さんとぼくくらいしかいないんじゃないか。これは自惚れすぎか。

前述の通り、本書の装丁は祖父江慎さん。そして印刷が、とくに黒が美しいなあ…と思ってクレジットを見たら、プリンティング・ディレクターは凸版印刷の金子雅一さん。祖父江さんとは『廃道 棄てられし道』、そしていま『東京幻風景』(ともに丸田祥三さんの著)でブックデザインをお願いしており、金子さんは『廃道 棄てられし 道』と同時に進行していた『眠る鉄道』『問いかける風景』(ともに丸田さん)の製版をご担当され、そのお仕事のご様子はお聞きしているし、イベントでもご 一緒していただいた。まったくもって、私をどこまで喜ばせてくれるのだろう、この本は。



<関連項目>
タイポさんぽ(藤本健太郎著/誠文堂新光社)
『駅名おもしろ大辞典』(夏攸吾著/日地出版)
昭和50年代の駅名標(越後線)その1
昭和50年代の駅名標(越後線)その2
昭和50年代の駅名標(越後線)その3
大好きな看板文字


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