兵庫県養父市に「天滝」という大きな滝がある。クルマでは行けず、駐車場から1.2kmほど歩く。一般に、この手の場所は歩きやすい遊歩道なのだが、ここは登山道といっていいくらいの道。しかも標高差が200mほどもある。実際、ハイキングの格好をした人が多い。その登山道の橋として、近年、ボーストリングトラスが架けられたと聞いたので行ってみた。 こちらのレポート(PDF)に詳細があるのだが、旧橋は2017年に積雪により落橋、仮橋が架けられたものの人気観光地でもあるために2018年に架け替えた。その際の条件はこうだ。 ・支間長10m ・積雪に耐える ・「鼓ヶ滝」の前にあるため、景観が考慮される ・2018年の水害からの復旧のためにヘリが払底しており、資材を人力で運ぶ必要がある。部材は20kg以下とする ・維持管理の都合上、部材を養父市内で完結できる これらの条件から、部材が小さく、景観にも優れる(!)ピン結合のボーストリングトラスとなった。これは、ボーストリングトラスの上限がアーチ状であることも、この形式を採用する理由となった。 「(アーチ橋が)景観にも優れる/トラス橋は醜い」というのは関東大震災後の復興橋梁の頃にすでにあった意識であり、ここではトラス橋ながら上限がアーチに見えるボーストリングトラスにそれがあてはめられた。アーチ橋にしなかったのは、資材搬入の都合と部材調達が養父市内で完結しないという理由である。 直前まで通り雨が降っていたこともあいまって、滝の前に佇む小さなボーストリングトラスの美しい赤は、緑と焦げ茶を背景として美しく光っていた。見た目は、2本の鋼材をガセットを介して弦材としていることもあり、ブロックで作った多関節の玩具のような印象だ。 最大で20kg、合計で8.8トンとなる資材は、神戸大学山岳部・山岳会とそのOBがボッカとして運び上げた。 ピン結合はアイバーが弱点と言われるが、現代においてはどうなのだろう。おそらく、採用すると維持管理の人件費のほうが高くなるのだろうが。 この橋は通常の下路だが、奥多摩橋や和賀仙人橋の側径間のような上下反転した逆ボーストリングトラスは力のかかり方からしても理想的なのだが、架橋の費用…つまり人権費や細かな足場の組み方等が通常の平行弦よりもかなりかかるため、採用されることがないようだ。 対岸から。ここから天滝までは、まだ少しある。 天滝。「滝なんて、別に…」と思っていたのだけれど、想像の何倍もの高さがあり(落差98m)、その迫力に圧倒された。 繰り返しになるが、こちらのレポートに詳細がある。 PR |
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