1000ページを超す本がある。竹書房刊、『日本の駅』、1979年刊。定価4万50000円。ハードカバー、化粧箱入り、さらに段ボール箱入りだ。内容は、日本の有人駅の(おそらく全)駅舎の写真が500ページ超、ということで、4000円以上で購入した。本書は、当時の大著、村石利夫著『国鉄全駅ルーツ大事典』(竹書房刊)も再録されているので、まあ、高額でもいいかと思って買ったものだ。
もともとは、杉崎行恭さんの『駅舎』という本をさがしていた。そこでひっかかったのが、「日本の駅」というタイトルで、竹書房刊で、全駅舎写真が載っていて…という本だった。それは見てみたいと思い、さらに検索すると、どうやら同名タイトルで、1972年に刊行された鉄道ジャーナル社版がある。ありふれたタイトルのため、中身は同じなのか違うのかわからないので、まずは竹書房版を購入した。ところが、購入した竹書房版を見たところ、どう見ても印刷が悪い。特に、わずか16ページだけある巻頭カラーのひどさといったら。何かの再録としか思えない。おかしい、と確信したのは網走駅の写真を見たときだ。旧駅舎が写っている。いや、それはそれで貴重なのだが、網走駅の駅舎は昭和52年末に改築・落成しているのだから、昭和54年刊の本書では、当然そちらが入っていて然るべきである。 そうして、鉄道ジャーナル社版を単純に再刊したのではないか…と思い始めた。とはいえその古書の中を紹介しているサイトなどはなさそうだ。なにしろ「日本の駅」というありふれたタイトルだ、検索しても本書にたどり着くわけがない。そこで、鉄道ジャーナル社版を買った。 これが鉄道ジャーナル社版だ。果たして、中身は一緒だった。そして、やはり、こちらのほうが印刷がいい。 中身はこうだ。 上が鉄道ジャーナル社版、下が竹書房版。まったく同じだ。ただし、竹書房版は一部はアップデートされており、たとえば武蔵野線や三江線(鉄道ジャーナル社版では三江北線・南線)、大隅線(同古江線)などが追加されている。目次等は、写植を切り貼りして挿入した跡がうかがえる。 わかりづらいだろうが、印刷の違い。左が鉄道ジャーナル社版。白飛びが少ない。竹書房版は、1ページ全体のインクの乗りが悪いページが多々ある。とはいえ、どちらも製版時の線数が少ない(いまの新聞よりも悪いだろう)ので、鉄道ジャーナル社版の印刷がいいとはいえ、細部の見え方が違うわけではない。 本書の最大の長所は、駅舎の建築年が書いてあることだろう。それを元にすれば、駅舎建築の傾向がつかめるのだ。長年気になっていた、稚内駅・柏崎駅・武生駅の相似(それ以外にもあり、平屋の駅舎を加えるともっと多い)も、時代性というか規格性というか、そういう面があることがわかる。 上から、 ・稚内駅 駅舎改築 昭和40年9月 ・柏崎駅 駅舎改築 昭和42年10月 ・武生駅 駅舎改築 昭和43年9月 である。他の駅舎の検証も、いつか進めたい。 同じ地域で同じ時期に開業した駅舎が同じ建築になるのはわかりやすい。しかし、国鉄は全国組織で完全な中央集権体制ゆえ、こうしたことが起こる。とくに戦後の建築ラッシュ、そして昭和40年代以降の改築ラッシュ時のことが興味深い。 鉄道ジャーナル社版には「国鉄駅舎100年のあゆみ」と題した、国鉄本社施設局建築課の手になる13ページの記事がある。あまり深いものではないが、「昭和26年に入ると駅本屋の復興も本格的となり、郡山・敦賀・尾張一の宮・浜田・宇和島・徳島などの諸駅本屋が改築された」などというさりげない記述が、おそらく同時代性を担保する。また、「利用債による地方駅の改良」という項には「小さな駅本屋としてすぐれた作品がたくさん生まれている」などと「作品」なる言葉が使われているのも、建築らしくて興味深い。さらに民衆駅一覧表(全52駅+工事中3駅)もある。郷里の新潟駅は18番目とのことだ。 駅舎についての内容が同じで、片や発売時の定価5000円、片や4万5000円なので、どうしても鉄道ジャーナル社版に軍配を挙げてしまうが、竹書房版の『国鉄全駅ルーツ大事典』は、当時は地名への関心もいまほど一般的ではなく非常に貴重な本だっただけに(子どもの頃、高額で買えなかった)、その再録は感慨深いものがある。 竹書房版を売ろうか、それともスキャンするためにバラすか、迷っている。 PR |
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