大阪環状線の弁天町-大正-芦原橋間には、巨大なダブルワーレントラス斜橋がふたつある。スペックを見る限りまったく仕様は同じなので、兄弟橋と言っていいのだと思う。そのうちのひとつ、大正駅の北西にかかる岩崎運河橋梁と、その弁天町寄りにある尻無川橋梁を紹介する。場所はここ。
大きな地図で見る 南側から北側を見ると、このように見える。 左側のドームは京セラ大阪ドーム、その右下にある3格間のワーレントラス橋が尻無川橋梁。右に並ぶガスタンクは大阪ガス岩崎供給所。それに伍する巨大な直方体が岩崎運河橋梁だ。この岩崎運河を遡る(画面奥に向かう)と大正橋、そこは木津川と、道頓堀川~岩崎運河~尻無川の、川の交差点のようになっている。 尻無川にかかるように見える橋が岩崎運河橋梁だったり、尻無川の名前を冠した尻無川橋梁の下には川がなかったり、尻無川の上流部が岩崎運河だったり、と、なにやらいわくがありそうなのだがネット上にわかりやすい解説はなかった。ところが1948年9月撮影の航空写真を見たら氷解した。便利な時代になった。 (国土変遷アーカイブから転載) 上の航空写真の、赤くマークした部分が尻無川で、いまは埋め立てられている。黄色くした部分が境川運河で、こちらもいまは埋め立て済。こうした経緯があるため、尻無川橋梁は陸地に架かっている。大阪環状線が境川運河を渡っていた部分はプレートガーダー橋だ。 ついでに大阪ガス岩崎供給所の名称で検索したら、こんなテレビ番組サイトに行き当たった。「美人なのにガスタンク好きって…」という切り口がテレビらしくてとってもむかつきますよ。「ダメ度」の採点コーナーがあるのが最悪。こんなふうにしか人を評価できないお前らは作られた流行にのっかって生きていってくださいな。 ◆尻無川橋梁 複線のワーレントラスなので幅が広い。しかも約100フィートと短いのに62度もの角度を持って渡っているため、非常に不格好な、ひしゃげた印象になっている。 歴史的鋼橋集覧はこちら。 この写真にある赤い保護枠の右側に道路橋があったようだがそれについてはまた別途書く。 ◆境川橋梁 境川の跡は水道道路のようになっていて、橋全体は見渡せない。というか、現地に行ったときには上記の経緯を知らなかったため、尻無川橋梁の延長かと思い、全体像を撮らなかったのが悔やまれる。塗装標記と銘板。 日本国有鉄道 1958 KS-16 DGC619-1
22.7T 346HZ(?) (32○○124) KK.駒井鉄工所製 駒井鉄工所は、今の駒井ハルテックである。
◆岩崎運河橋梁 西側から撮影。走っている電車(103系…)と比べればわかるとおり、その巨大さゆえの存在感。高さは20mほどもありそうだ。 径間94.945m、つまり300フィートクラスだ。こんなものが住宅地というか、街中にある。 東側に渡り、こんな存在感。 あるいはこう(収差のひどさに呆れるが仕方あるまい、いまの16-35-2はどうなんだろう?)。 こんなばかでかいものが背後にあると、近隣の方々は気圧されるのではないだろうか。余計なお世話か。 これも東側。斜橋であるため、上から見ると平行四辺形になっている。 架線をつり下げるビームが、樽部ワーレントラスのX字型の格点に接続されている。ということは、このトラスの高さは、通常の架線柱の高さの倍ほどもあるということだ。 ビームと格点の接合部分。ビームはトラス桁の構成メンバーではないため(たぶん)、取り付け部分は簡素。 ん? 上横構部分に、なにかありますよ。これ、クリーニング屋の針金ハンガーじゃないか? カラスかなにかのしわざ? ダブルワーレンたる、斜材の公差部。がっつり剛結。 その真下はこう。 X字形に公差する格点からは、「Ж」字形に天地方向に補助的に縦材が伸びている。それが下弦に接する部分。 対して、正式な(?)縦材が下弦に接する部分はこう。 斜材も剛結するので、ガセットプレートが大きくなっている。縦材の結合の方法そのものは、リベットの配置からして同じだ。 これを撮りながら、ふと下の岩崎運河を見ると、亀がたくさんいた。 ある部分をみたら、ドブ川にしか見えない岩崎運河。陸上と異なり、本来の用途が終了したからといって、そのまま何かに改変されてしまうわけでもなく放置されてしまいがちなのが運河。ここもそうした運河のひとつなんだろうなあ。 以上、写真の左上に黒い点が写っているものは撮像素子に付着した汚れです。消してからアップしようとしましたが、うっかりアップしてしまい、もういいやという気持ちに。すみません。 PR |
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