『鉄道をつくる人たち』の川辺謙一さんの新刊。サブタイトルが「日々の運行を静かに支える技術」。
カラー新書ということで、読者対象は鉄道に詳しい人向けではなく、一般向けの「鉄道の基本が書かれている本」に分類されるだろう。近年、この手の本の刊行が相次いでいるが、本書はサブタイトルに基づく「鉄道の特性を実現しているものとは?」という観点で書かれている。車輌の種類や制御システムなどはごく基本的な分類にとどめ、誌面を割いていない。
鉄道の特性を語るには、他の交通機関、つまり自動車・トラック、船舶、航空機と比較するのがいちばん。それを第一章に据えた上で、それを実現するために、鉄道に特有のこと(これを「科学する」「~技術」と表しているのだろう)が全編にわたって書かれている。
鉄道の基本書は、車輌・施設・信号…などと章立てされることが多いが、本書の章立てはこうだ。
第1章 鉄道とはなにか
第2章 いろんな鉄道車両
第3章 鉄道車両の構造
第4章 新幹線と高速鉄道
第5章 都市の鉄道と山岳の鉄道
第6章 線路の構造と種類
第7章 列車の運転と鉄道の運用
特徴的なのは第4章・第5章だろう。鉄道ならではの特性を述べられるし、日本の鉄道の特性を海外の事例とも比較できる。「日本の鉄道の特性」とは、日本で発達した鉄道の「科学」に他ならない。例えば新幹線車両の先頭部が独特の形状をしている理由を解説している本は多いし理由を知っている人も多いと思うが、本書はそれだけでなく、欧州の高速鉄道車両が単純な形をしていることにまで言及している。こうした記述は既に知っている知識の外側に肉付けできるものでもあり、鉄道に詳しい人でも鉄道に対する視野を広げることになる。これは大切なことだと思う。
一見、「知っているよ、それくらいのこと」と思うことも、こうして改めて読むと、既存の知識を押し広げてくれる。鉄道に詳しいと思っている人ほど、本書を通読してみるといいと思う。
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