豊平峡ダムの堤体へは、壁伝いではなく、なぜか少しだけショートカットする橋を渡る。その橋の存在感が、切り通しにしたガリバートンネルのようだ。上部が左右に開き、向こうに行くにしたがって高さを減じている。 サイドビューを見ても、おとなしい印象しか持たないだろうが、冒頭の写真をもう一度、その間に立っている車止めポールの高さとともに見て欲しい。このコンクリートの壁が、いかにマッス感を出しているかがわかるだろう。 これは、異世界に行くための唯一の通路、という意味合いを持たせているのだろうか。それとも、単に、橋台を設置するのが難しく、載せ架けるようにしなければならなかったのだろうか。 同日追記: FBで「堤体にさしかけてある片持ちでは?」とご指摘があったので検索したところ、そのとおりでした。堤体は位置が変動するということもあり、堤体側には支承はありません。橋長53mの片持ちってすごいですね。国内初とのこと。フィンバックプレートが開いているのは、工法のためかもしれません。荷重は歩道橋用の群集荷重なので、比較的華奢に見えるのでしょう。下記にリンクを貼りますが、いずれも意匠については触れていないのが、「土木」らしい…。 ・カムイ・ニセイ橋(三井住友建設・PDF) ・片持ち構造PCフィンバック橋の施工(プレストレストコンクリート技術協会 第17回シンポジウム論文集・PDF) 「定山渓国道」こと国道230号中山峠越えのルートは、工夫された線形で豊平峡ダムと一体となって構想された。この片持ちの覆道は、定山渓トンネル、無意根大橋と並んでこのルートの白眉である。 いくつかの理由でこの構造が採用されているのだが、わかりやすいのは景観への配慮だ。コンクリートの支柱が並ぶ圧迫感を避け、かつ、景観を眺められるようにしている。それだけでなく、この覆道を外から…ここに突入する前のクルマから見ても景観に配慮しているように見えるように作られている。それは、昭和42年工事開始という、道路造りの考え方が発展している時期だったからこそ、前例のないこの構造が実現できたともいえよう。 通常、谷側に支柱を設けるが、ここではそれが難しかったためにこの構造になったと国交省の論文にある。 コンクリートの肉厚感があるにもかかわらず、それが圧迫感につながらず、むしろ筋肉質に感じる、優れたデザインである。 通常は坑門に掲げられる扁額は、覆道内山側の壁に埋め込まれている。 峠側を振り返れば、特徴的な坑門を持つ定山渓トンネル。 麓側を振り返れば、渓明覆道。 【参考】 ・国土交通省 国土技術政策総合研究所 景観デザイン規範事例集 道路編 http://www.nilim.go.jp/lab/ddg/seika/ks/tnn0433.html http://www.nilim.go.jp/lab/ddg/seika/ks/ks043306.pdf ・仙境覆道の設計と施工について http://thesis.ceri.go.jp/db/files/GR0002500632.pdf |
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