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周囲に細かな地名がなかったのか、特に山間部にかかる橋やトンネルには適当な名前のものが多々見受けられる。人名のようなものもある。そんなものの一つが、この「無名橋」だろう。

余市川の右岸には国号5号が走るが、その対岸の山裾を縫うように走る道道755号に、この橋はあった。なんの変哲もない、としかいいようがない。クルマやバイクで走っていると、橋であることすら気づかないかもしれない。

「無名橋 Mumei Brodge」。いまなら「ふれあい橋」とつけらるだろうか。もしかしたら「無名」と冠される橋やトンネルは、特定の時代を浮かび上がらせるかもしれない。




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北海道の赤井川村にある都郵便局。こちらが正面なのだが、おもしろいことに道路に対して斜めになっている。建物の軒下に「〒」「ゆうちょ」の行灯に注目したい。それらは普通は「ゆうちょ」の向きでついている……道路を行くクルマと対向するようについているのだが、道路に対して斜めになっているため、「〒」の行灯が建物の横についている。これは珍しい。

これくらい斜めになっている。道路に対して135度斜めになっており、むしろ尻を向けている。なぜこうなったのかといえば、おそらく、かつてはこの真正面を道路が横切っていたのだろう。写真でいえば、右から左下へ、である。

では、その「かつて」を探ってみる。旧版地形図を求めれば一番いいのだけれど、オンラインで取得できるものから考察する。

 
(Kashmir3D+50mDEM+数値地図25000/地理院地図(空中写真1974-1978))

上左の地図は現在のもの。上右は1976年(CHO764-C17とC18の合成と思われる)。東西を結ぶ道路その他が少しずつ改良されているのがわかるが、「大正橋」の架かり方は変わらない。2大正橋の開通は1963年。ではさらに古いものとなると、米軍撮影の航空写真しかない。

(地図・空中写真閲覧サービスよりUSA-M469-90(1947年9月撮影)をトリミング)

この局舎が1947年に作られているとは思えないのでここに写っているとしたらその前身だろう。それにしても、道路に135度尻を向けているということはなく、道路と90度になっているだろうことは見て取れる。90度ならば、理解できる。ただし、建替の際の制約などからこうなった可能性もぬぐいきれず、そのあたりを想像することが楽しいのだ、ということでこれ以上の詮索はしないでおく。

おっと、肝心なことを忘れていた。

 
この都郵便局には、旧郵政書体が残っている。

* * *

なお、赤井川村は、下の地図でいうと渦巻きの中にある。この渦巻きはカルデラであり、南側が切れていて、そこから川が時計回りに流れ出す、その切れているあたりにあるのがこの都集落である。

 
(カシミール3D+数値地図20万+50mDEM)


函館本線銀山駅。鉄道で訪れて駅周辺を歩いただけではきっとわからないと思うのだが、ここは集落に対して高い位置に駅がある。余市川沿いから約80m登ってこなくてはならない。

なぜこんな位置に駅があるのかといえば、単に、余市川沿いから岩内平野に至る「通過点」としてここが選定されているためだ。銀山集落のために駅の位置を決めたのではない。

理解するためには、地形がわかる地図が最適だろう。
 
(Kashmir3D+50mDEM+数値地図20万)

色分けはほぼ標高30mごと。右上が銀山(158m10)、右下が小沢(52m50)。左が岩内。函館本線が小樽から函館を目指すにあたり、ルート取りとしては「ここしかない」ということがわかるだろう。左上、積丹半島を横断することは、ありえない。

もう少し詳しく見る。

 
(Kashmir3D+50mDEM+数値地図25000)

北から、然別(25m)から、稲穂トンネル東側坑口(170m)に向かうために、こうして尾根の横っ腹に取り付いている。それぞれを細かく見ると、尾根から飛び出した支尾根や川を巧みに避けながら、銀山駅に向かっている。この計画を明治の半ばに考案した先達たちには驚嘆するしかない。


 
数年前、列車でここを訪れたとき、通学の高校生がここから列車に乗り込んだのを覚えている。小さな山間部の駅が、駅としての機能を果たしているシーンを見ると、とても嬉しい。






然別の近く、国道5号沿いにある木造倉庫。画面左下が道路で、2m以上、周辺より高くなっている。もしかしたら余市川の堤防という役割もあるのかもしれないが、一般的に、道路を高規格化する際の嵩上げに見える。そこから見下ろす位置、元の地面の高さにこの倉庫が建っている。

美しい菱形を描く木製扉。庇に沿って、一回り大きく色褪せた半円形の板壁。これは、積雪の影響か。

かなり大きな倉庫だ。内側は2階建てかそれ以上になっているのだろうか。東京都内の民家が5軒くらい収まりそうだ。



銀座線渋谷駅の階段。柱と梁が出っ張るここに、よくぞ階段を設置した…という感じがする。しかし、壁に破石が貼られ、流麗な手すりもある。惜しむらくは梁の意匠だ。

梁の右端にはハンチがある。ここに頭をぶつける可能性を少しでも排除するためにか、あるいは手すり利用者が頭をぶつけないようにするためか、手すりが後付けされ、階段の幅が半分になっている。

また、柱の手前、誰も踏まない部分まで階段が作り込まれている、こういうのにグッとくる。

振り返ると、そこにも柱、そこにも無駄な階段。そして、柱に吸い込まれていく手すりが描くカーブが美しい。



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