「日本ダムアワード」と八馬智さんの「私的ドボク大賞」の真似をして始めた『轍のあった道』アワード。残念ながら、今年はあまり出かけられなかったため、それに比例して「見たもの」「きづいたこと」が少なく、いささか寂しいのだが、それでもやり続けることに意義があるだろう。
その前に、2015年のGPSログ。 (SRTM30にGPSログを表示。カシミール3Dを使用) 今年は足を踏み入れた都道府県が極端に少ない。北東北3県にすら行っていない。初めて行った地域としては、天売・羽幌。 北海道・山形・福島・栃木・群馬・茨城・千葉・埼玉・東京・神奈川・新潟・富山・石川・長野・静岡・岐阜・愛知。17都道県でしかない。山梨に足を踏み入れていないのは意外。 相変わらず西に出ておらず、金沢は特急「北越」廃止前に久しぶりに乗っておきたかったもの、愛知・岐阜は、3カ月ほど仕事しかしていなかったので気分転換に当てもなく出かけたときのものだ。 長野周辺は『廃駅ミュージアム』のための丸田祥三さんの取材に同行させていただいたもの。 新潟県内へは5回入った。「ブラニイガタ」の沢海街歩き、『廃駅ミュージアム』取材、山形に行ったついで、福島・山形に行ったついでにほんのちょっと、東京スリバチ学会でのフィールドワーク。 2016年は、2015年以上に出かけられない気がするけれど、出かける仕事を作りたいものだ。 2013年のGPSログ 2014年のGPSログ * * *
さて、あまり「見る」ことができなかった1年だが、それでも見返すと、見つけたときの驚きが甦ってくる。では、いってみよう。 ●橋梁賞歩道橋と道路橋で一つずつ挙げる。クモヒトデのような岡一色歩道橋 X字型の歩道橋は、そう多くはない。見るからに不安定で、実際に使おうとすると余計な距離を歩かなくてはいけない気もして。しかし、4本の脚の部分がそれぞれの事情でいろいろな形状をしていることが多く、そうした観点で見るとおもしろい。 海の上のジャンクション・港大橋(豊橋) 東京都心では川の上に高速道路を架け、ジャンクションを作ったが、それが愛知県にあった。主桁は色分けされていて、景観的にそれはどうなんだと思わなくもないが、鉄の柔軟性を表現しているようでもある。 ●鉄道賞北越急行 薬師峠での列車交換時の気圧変化気圧計を入手して望めばよかったと悔やまれるが、おもしろい結果になったと思う。 ●地形賞沢海に見る阿賀野川の氾濫の跡(kashmir3D+DEM5m+数値地図25000) 「沢海」付近に行ったことはあっても、地形を意識したことがなかった。ここの地形をカシミール3Dで見たときには驚いた。ここまで複雑に痕跡を残しているとは。図らずも自分のルーツにも関わることも。こせた。 ●土木賞いくつか興味深いものを見たので、トンネル、放水管、堤防でそれぞれ挙げたい。首都高速中央環状線山手トンネルのセグメントの違い ルーフシールドも含め、いろいろと興味深い構造物だった。 渥美火力発電所のパイプラインと取放水管 この太い管の中に轟々と海水が流れているさまを見ることができればいいのに。 新潟県塩谷川のサイボーグ堤防 異様な光景だが、これもいずれなじんでくることだろう。 ●給油所賞) キャノピーのモニュメント これは美しかった。もし、この川崎商会が閉鎖されたら、タワー式駐車場をモニュメント化して残してくれるだろうか。 ●建物賞サイロの屋根部分の骨組み* * *
さて、では『轍のあった道』アワード。 轍のあった道大賞残念ながら、今年は「これこそ」というものはなかった。書きかけて止まっている大作はあるのだが、それもなかなかまとまらない。ということで、今回は、美しき土木構造物に。国道401号喰丸トンネル 福島県昭和村。国道401号。 こうしたところでバイクやクルマを停め、写真を撮ることをめんどくさがらず、付近で小一時間鑑賞できるくらいの余裕のある旅がいつもできるといいのだが。そんなことを2016年の課題としつつ、来年もよろしくお願いいたします。 ●関連項目 2013年『轍のあった道』アワード 2014年『轍のあった道』アワード 謹 賀 新 年今年はもっと走らないとね。 今年もよろしくお願いいたします。
昨年、触発されて作った2013年『轍のあった道』アワード。今年も振り返ってみようと思う。
おもしろいもので、「なにかないかな」と探すために出かけるとなにも出会えず、「先を急がなきゃ」と思って道を走っていると、さまざまなものに出会う。何事も、目的がなければ中身は希薄になる。旅は少し急いだほうがいいのだ、きっと。 今年はあまり「橋を見に行く」ということをしなかったので、2015年は四国・九州のいい橋をたくさん見て来れたらいいなと思っている。 では、好き勝手に作った賞をば。 ●橋梁賞高萩駅付近の跨線橋(歩道橋)その1フィーレンデールトラス。車窓から目に飛び込んできたので、途中下車して撮影した。こんなところにあるとは。 <次点> 湊小橋(久見浜湾)偶然出会った美しい橋。ラーメン構造なのか、アーチの変形を脚で支えているのか。久見浜湾。 ●鉄道賞カプセル駅 妙法寺駅カプセル駅 古津駅 カプセル駅 上下浜駅 「カプセル駅舎」とは、国鉄末期に作られた規格ものの駅舎の総称だが、そのうち、昭和50年代に建てられたこの3駅舎はファンシー要素を含んでいる。すなわち、Rのある窓、扉である。オジサンががんばって「かわいい」を作りました、という雰囲気があって、すごく好ましいのだ。実家からそう遠くはないので長年、再訪しようと思いつつ、やっと実現した。 ●地形賞(道路編)カシミール3Dで見る アップダウンの激しい道路(地形編)アップダウンの激しい道路(写真編) 一直線なんだけれどアップダウンがある道。ドライバーの視線だと、この程度のアップダウンはまったく意識に昇らないのだが、たった50cmとあなどるなかれ、クルマは走れなくなり、最悪の場合はエンジンに水を吸い込んでしまう。 ●地形賞(カシミール3D編)カシミール3Dで見る新潟県(旧)上越市と旧頸城村の境、保倉川の氾濫原と蛇行跡柏崎市 鵜川の改修跡と元・氾濫原 (Kashmir3D+DEM5m+数値地図25000) 2点挙げた。どちらも自分で行ったり、街歩きに参加したりして気づいたことだ。「こうかな?」と思ったことや、現地で聞いたことをあとから地形で確かめるというのはとてもおもしろいことだ。みんなもっとカシミール3Dを使ったらいいのに。 ●給油所賞(現役)砂丘に建つ出光久見浜湾で出会った給油所。この立地の感動は、行ってみないとわからないだろう。それを表現する写真の腕がなくて忸怩たる思いだ。 ●給油所賞(跡)翼端の同心円 黒石市内の幹線道路で目に飛び込んできた同心円。共同石油のマークは大好きなのだが、防火壁にこのようなマークがあったとは。ほか、北海道でも見かけた。●建物賞マンサード屋根の三重奏 利尻島で見かけた民家。民家にカメラを向けるのは大変申し訳ないのだが、向けずにはいられなかった。じっくり眺めて欲しい。●廃車体賞取り込まれたワムハチなんと、斜体が取り込まれている。たったこれだけ、数立米など、取り込んだ大きな倉庫に比べれば不要な気もするのだが、向こう側は扉が機能しており、そのために取り込まれたのかもしれない。(許可を得て撮影) * * *
さて、では『轍のあった道』アワードです。 轍のあった道大賞「アワード」としては、土木的ななにかを選びたいところだが、今年は残念ながらそこまでの大発見というか、私しか見ていない、私しか知らない、というようなことはなかった。しかし、私でなければ解説しづらい、というものがあるので、これを挙げようと思う。時刻表の活字 活版印刷の時代誰もが簡単にPCで時刻表のような組版を作れてしまう。対してノスタルジーを喚起する古い書がどうやって作られていたかはあまり顧みられることはない。活字であることはわかるだろうが、それをどうやって運営していたのか。それを展示する素晴らしいイベントだった。私は見ればわかるが、これを解説するイベントをやってほしかったし、もっともっと鉄道ファンは訪ねるべきだと思った。 こうした工程への関心が深まることへの願望を込めて、この記事を大賞とする。 * * * 2015年もよろしくお願いいたします。
「浜松ジオラマファクトリー」という施設がある。情景作家・山田卓司氏のアトリエ兼展示施設で、そこで「浜松ジオラマグランプリ」というコンテストを開催している。その大賞(グランプリの次)ほか計三つ受賞したのが、軍艦島の日給社宅をモチーフにした「光さす庭」だ。
来年の8月頃まではケースに入れられた状態で自由に閲覧できるというので、大阪に行った帰路、浜松に立ち寄った。上の写真で白くなっている部分は、ケースへの映り込みだ。 この9階建てのアパート、恐るべきは室内の作り込み。戸、窓、手すり、すべて1mmに満たない部材を使ったフルスクラッチだ。1フロアだけならともかく、9フロア分。それを2棟分。ちょっと作業が想像できない。 9階建てだが、実物はけっこう小さい。1/200くらいか。Nゲージサイズより小さい印象だ。この作品はあくまでも日給社宅をモチーフとしたもので、日給社宅を模型化したものではない。軍艦島のほかの建物の要素をいくつかミックスしているので、軍艦島の、とくに立ち入り禁止エリアになんらかの手段で(取材会や特別なイベントなどで)入ったことがある人には、よくぞ行ったことのない作者がここまで…と思うことだろう。 驚くべき話がある。当日、現地からtwitterに写真をアップしたのだが、元島民で軍艦島の保存活動をされている方が、写真を日給社宅の実物と見間違えて思い出のコメントをくださったのだ。それくらい、雰囲気を捉えているということだ。 惜しむらくは、展示の方法。作品タイトル「光さす庭」とは、非常にすぐれた名付けだと思うのだが、この展示では庭に光はささない。左上からスポットライトを当て、陰影をつけてあげたい。審査期間中はケースもなかったし、もっと自由に眺められたようだ。 * * *
さて、以下は「好み」の感想。この「光さす庭」に比べて、グランプリ作品は、実はかなり大きい。縮尺は1/15程度か。ほか、浜松ジオラマファクトリーには数々の情景作品が展示してあるのだけれど、そのほとんどは1/35くらい、ガンダムでは1/100。Nゲージの車両工作やジオラマを見慣れた目にはちょっとスケール感をつかみにくく、情景も狭いと感じてしまう。また、ガンダムなども表面がつるっとした部分が多いので、もっと凝縮感がほしくなる(あくまで「好み」の話)。 とはいえ、鉄道模型でいえば「16番クラス以上の大きさの車両のディテールアップ」のような楽しみ方は模型の楽しみの王道の一つであり、ジオラマをたしなまない(簡単なパイクをひとつ作ったことがあるだけ)私のような者は、自分で手をかけるという点ではその楽しみ方はよくわかる。 題材が違えばスケール感も違うのだということを知った展示だった。 ●審査日にご覧になったきしのさんのブログ digression第3回浜松ジオラマグランプリ ●浜松ジオラマグランプリ公式サイト http://www.hamamatsu-diorama.com/2014/08/3rdgpresults.html ●作者による制作日誌 光さす庭(軍艦島日給社宅)ができるまで・その1 光さす庭(軍艦島日給社宅)ができるまで・その2 |
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