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鉄道趣味誌において、従来とはまったく異なる取材・記述手法とグラフィカルなページ展開を開発し、その筆力で読者を魅了した『ドキュメント 感動の所在地』『SL甲組の肖像』の椎橋俊之さんの手による、北海道の路線バスの本。

取材の様子はFacebookでときどき拝見しており、本書を手に取るまでは、北海道のバス路線とバス会社を丹念に取材したドキュメント、つまり「読みもの」としての側面が大きいと思っていた。もちろんそれが根幹ではあるものの、退職した機関車乗務員たちや過去の現場の描写となる鉄道とは異なり、バスを記述すると、必ず、現在の路線バスの状況と、社会的問題への取り組みにぶち当たる。本書は前半の3分の2で路線バスをレポートしながらその問題を散りばめ、後半で問題を考察し、バス会社や地域、行政の取り組みを述べてゆく。

本書が「いま」刊行されたことが、記述をよりリアルなものにしている。近年、全国的にバス路線網は大幅な縮小傾向にある。この3月にも終了となったバス路線や大幅減便となったバス路線の情報、乗り納めがSNSを飛び交っていた。利用者の減少とともに、運転手の人手不足と労働環境が大きな原因だ。バス事業に関する確実な資料を提示しながら、そうした現状と事業者・行政がどう取り組んできたかを述べていく。

通学利用者がまだ相当にいて続行便まで出していたJR誕生直後(もう38年前だ)でもなく、バス会社を支えた長距離輸送がまだ堅調だったコロナ禍前でもなく、どちらの利用者も激減してしまった「いま」。加えて運転手の不足や労働時間管理という「バス事業」の労働の問題。後者はまだ解決の方法があるのではないか。

近年、公共交通の一つである鉄道も非常に環境が厳しく、解決策の一つにバス転換が話題に上がる。しかし、上記の問題があるのでかつてのように比較的容易に転換できるわけではないことは、「廃止反対」を唱える街場の鉄道趣味者の頭にはない。

本書の内容は、おそらくバス旅や辺境を旅する人たちは以前からよく理解していることだろう。だから、むしろ鉄道趣味者、とくにライトな層(ノスタルジック旅記事の見出ししか見ないような人)こそ、この「バスの本」を読み、公共交通についての知見を醸成すべきだろう。本書で書かれた部分はまだその問題のさわり(まだ路線が「ある」のだ)だ。

もちろん、そうした社会的な話だけではなく、本書のドキュメントは大きな旅愁を感じさせてくれる。「長距離バスの旅もしてみたい」と思うに違いない。私は個人的には座席が窮屈すぎるのでバスはなるべく敬遠するけれど、冬季の沿岸バスに乗ってみたくなった。

少しだけ希望を言えば、本文中の写真はもっと大きなカラーで見たかった。カバー写真が、冬季の薄明かりの中での凍てついた路面や周囲の空気をとてもよく伝えてくれているように、本文中に小さく掲載されているモノクロ写真も、しっかりと冬季を描写したもののはずだ。夜明け前、あるいは日没後の写真も何点かある。これらをカラーで、せめて2分の1ページ大で見たかった。価格が上がってもいいので、巻頭で16ページの口絵などとして見てみたかったな。

【目次】
第一章 真冬の路線バス――過酷な気象条件のなか北を目指す
第二章 自然とのきびしい闘い――今日も走る国鉄代替バス
第三章 生活バス路線を守る――道東・中標津町の闘い
第四章 道北を走る長距離都市間バス――札幌~枝幸298㎞、5時間半の旅
第五章 日本最北のバス路線――宗谷バスを走らせる人たち
第六章 人手不足社会への試行――自動運転バスはどこまで進化するか
第七章 DMVとBRT――バスの可能性を広げる試み
第八章 イギリスのバス復権――徹底したバス優先施策で利用客を呼び戻す
第九章 続く路線バス運営の試練――コロナ禍と2024年問題
終 章 バス運転手不足への提言

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