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(カバー画像は講談社公式サイトより)
B5判、カラー16P+モノクロ144P、定価2800円+税。

「はじめに」に「本書はあくまでも鉄道趣味者的観点から捉えたものであって」とある。だから、とても親しみやすい。得てしてこういうタイプの本は資料たるべきという観念が面白さを削いでしまうのだが、貴重な写真、「すごい」写真をふんだんに掲載している。

書名のとおり「情景」が移し込まれた写真が多い。そのため、雰囲気がよくわかる。オフロードバイクで北海道から九州、屋久島、沖縄まで林道に入り込んだが、林道の雰囲気と基本的には同じだ。そして、その頃はまったく考えもしなかった林道本来の役割が、本書には詰まっている。車両研究の本ではないので、車両の形式写真はないし、解説もない。本書はそれでいい。鉄道模型のジオラマのモチーフにしたくてたまらない情景が詰まっている。私にはそんな知識も技術もないけれど。


本書には本来の目的ではないけれど私が面白い、貴重だと思うことが三つある。

一つ目は、木製橋梁が多く掲載されていること。ハウトラスの実物はなかなかないし、森林鉄道でもトラスを架けるほどの規模だと鉄橋に架け替えられたものも多いが、斜材に木材、垂直材に鉄の棒を使ったハウトラスの写真がいくつかある。美深(仁宇布)森林鉄道では、吊橋の補剛桁をハウトラスにしているものが載っている。

二つ目は、木製扉の菱形・バツ型等  がたくさん掲載されていること。森林鉄道の車庫の扉などは当然木製で、それが全国的に分布していることがわかる。

三つ目は、地図記号との関係。これはコラムとして掲載されているのだが、国土地理院の地形図において、同じ地図記号(特殊鉄道)に対して添えられている文字としては次の名称があるそうだ。
・森林鉄道
・森林軌道
・森林用軌道
・山林軌道
・林用軌道
・林用鉄道
・林用馬車軌道
・林用機関軌道
・林用ガソリン軌道
・林用手押軌道
・林用台車軌道
・林業用馬車軌道
・牛車軌道
本書には、どの図幅にこの名称が使われているかも記載されている。

手元にある5万分の1十石峠(昭和41年3月30日発行)は「林用軌道」だった。

国土地理院のサイトにある凡例では、立山砂防軌道が採り上げられ、そこには「砂防工事専用(軌道)」の文字が見える。

* * *

西さんには、『カシミール3Dで見る・自分で作る 空から眺める鉄道ルート』(松本典久・杉本智彦著)という本を作ったときに、安房森林軌道の写真をお借りしたことがある。それと同じ写真が、巻頭カラーで掲載されている。ネガで撮られた、柔らかい色調の写真だ。

ただ、本書のつくりについては、講談社の子会社が編集したとは思えないような、いささか稚拙な面がある。まず、校正漏れが散見される。また、「はじめに」が1ページあるのに「おわりに」ではなく「あとがき」、しかも奥付に小さく載っている。そして帯の表4側、掲載路線が羅列されているが、「載せればいいというものではない」というほどに見づらい。これらはすべて編集の責任であり、著者の責任ではない。もう少し丁寧に作って欲しいと思う。

1万部、2万部売れるものではなく、多くはない一定の数の読者に行き渡って終わり、という本だと思うが、琴線に触れる人すべてに行き渡ってほしい本だ。
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