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2011年に最初の『地図と愉しむ東京歴史散歩』が出てから5年。シリーズも第5弾となった。資料は手を尽くせばほぼ入手できるものながら(後述する駅の標高データは除く)、それらを俯瞰した上で、著者が縦断して読み解いていく。それが、本シリーズの、というか本著者のおもしろさだ。
 
いままでは地図も地形が表現されたものが多かったが、今回は「地下の秘密篇」ということで、そうした印象はほとんどなく、東京の地下鉄の断面図が、巻頭にカラーで掲載されている。

巻頭の断面図はこのとおり。例えば有楽町線、麹町や銀座一丁目のホームが上下になっていることまで再現されている。こうして圧縮された断面図を見ると、地下鉄の起伏の激しさとともに、ルートが標高(*)0mより下か/上か、という観点で見ることができる。本書の第1章にして4割ほどの分量を占める地下鉄の章は、なぜその標高をとっているのかを明らかにしていく。われながら、地表面から何m下かばかり考えていて、それを考えたことはなかった。

(*)営団・メトロでは、一般に地形図で使われる「標高」と同じ東京湾中等水位(T.P.)を使用しているが、下記画像でわかるとおり、すべて「+100m」で記載されている。都営地下鉄は…本書をご覧ください。

また、本書は巻末に、東京の地下鉄全駅のデータが掲載されている。特に「地表からレール面までの長さ」「地表の標高」「レール面の標高」は、貴重なデータだと思う。どこからとったのだろうか、各線の建設史を見ても、記載はない。建設史は、このようなものはあるのだが。

 

 
どちらも『有楽町線建設史』より。ただし、各駅もフラットではなく、勾配にある駅も多い。本書で「レール面の標高」などとあるのは、停車場中心でのものと考えた方がよかろうか。上の断面図の1枚目、「粁程」が「料程」と誤植されているのはご愛敬。

  もし、営団地下鉄の建設史やパンフレットを持っている人は、改めて、その面白さにも気づくはずだ。なお、私は以前、『東京メトロ 建設と改良の歴史』という本に携わった(上記。「参考文献」にも挙げられている)。こちらにはそうした資料が、なんとか読める範囲で収録されているので、ご参考まで。ただし、版元ほぼ品切れ。
* * *

一つ、本書をより愉しんでいただくために、P21の「なぜ丸ノ内線は神田駅を避けたか」を補足する資料を掲載したい。P23で書かれている「アツミマーケット」の話だ。


 
火災保険特殊地図(都市製図社1950年08月版)をつなぎ合わせたものだ。「アツミマーケット」の文字はないが、線路南東側にある一角を指すのだろう。興味を持った方は、周辺の神田を初めとしたヤミ市の話を、こうした貴重な路面図を使って述べた『東京戦後地図 ヤミ市跡を歩く』(藤木TDC著)もぜひご覧いただきたい。

* * *

地下鉄に関する記述があまりによくて、長くなってしまった。続く第2章は「都心の地下壕の話」、第3章は物理的な地下ではなく精神的な地下である「怨霊神の系譜」、そして第4章は、本書のタイトル「地下の秘密篇」はここまでの3章をいうのであって、これはカバーしていないのだろうなと言うテーマ「団地の土地を読み解く」。それぞれ、土地の事情、土地の記憶と密接に結びついた話が展開する。シリーズもここまで来ると、著者の興味の対象もおのずと見えてくる。本書、本シリーズは、そんな読み方をすると、なお興味深く読めるものと思う。
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