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06.JPG3月2日に、日活から廃道の映像を収録したDVD『廃道クエスト』が発売される(販売元:ハピネット)。

映像での表現には向いている題材とそうでないものがある。私はこれを見るまで、「廃道は向いていないんじゃないか?」などと思っていた。道路という、細く長いものが被写体である。だから、スチルでないと…などと思っていた。しかし、それは大きな誤りだった。過去に軍艦島や鉄道廃線跡の映像化を手がけてきたオープロジェクトの作品である。そんな、素人の想像を吹き飛ばす上質な編集がなされていた。

10.JPGこうした、極めて趣味性の高い映像作品を作るには、二つの考え方があると私は思っている。一つはテレビのバラエティ番組のように芸人を出演させ、そのスター性だけでやってしまうこと。制作側の意図はまったくなく、すべて芸人にお任せしてしまう作り方。「ネタ」として芸人に消費されることも多く、その場合は趣味者はとてもにうんざりする。

もう一つは趣味者の視点を主軸に、きちんと「趣味者が伝えたいこと」を制作者が汲み取ってまとめる作り方。タモリの番組の評価が比較的高いのは、タモリは後者のスタンスだからだろう(タモリ倶楽部は、たまにゲスト芸人が出しゃばりすぎてつまらなくなる)。本作ももちろん後者の作り方で、しかも、その距離感がとてもうまい。オープロジェクトとして出演している黒沢永紀さんが引き出し役となって、平沼さんや石井さんが語り、見せてくれる。この名リードっぷりがあってこその本作だ。

* * *



今回、事前にダイジェスト版がyoutubeにアップされた。それがあまりに「いい場面」が続くので、「いいとこを惜しみなく出してしまっていて、DVD製品版は『残りもの』なんじゃないか?」と疑っている人もあるかもしれない。これには明確に異を唱えよう。

廃道を歩くことは、そのクライマックスたる廃隧道を見て気が済む、というものではない。そこに至る道中の歩き、いや道そのものが楽しいのであって、廃隧道はそのおまけのご褒美でしかない。本映像からは、そのことが繰り返し感じられる。そのように作ってある。見ていて口を挟みたくなる。「おれが行ったときも、こんな空とこんな林だった」とか、「この路面の濡れ具合、いいよね!」とか。見た人が受け取って投げ返す余白がある作品は、映像にしろ紙媒体にしろ大好きだし、すぐれた作品だけが持つことができると私は考えている。

本作最後に黒沢さんの締めが入るのだが、本当に廃道や道路について本質から理解されているのだな、というのがよくわかる。

02.JPG石井さんも、いわゆる探索に適した格好ではなく普段着で探訪することを問われて「道ですから」と答えている。そうだよな、それが本質だ。

こう考えると、私はあまりいい歩き方をしていないかもしれない。やっぱり、少しでも先に行きたいし、少しでも早くクライマックスにたどりつきたい。装備はそれなりにちゃんとする。登山で言えばピークハントすれば気が済む、ような。これからは、もっと「道のひとりじめ」を楽しもうと思った。

そこらへんで寝転がってしまうヨッキさん。私も今度から、もっともっと道と戯れよう。
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* * *

さて、内容はといえば、口述レポである。カルカルの『廃道ナイト』でのメインディッシュたる口述レポ。それが全編にわたって続く。イベントが1回2500円である。本作は3990円(amazonでは2928円)。高くない。いや、安い。もし関東在住でないという理由でイベントにいらしたことがない方は、「これが口述レポか!」と得心いただけると思う。口述レポは前述の通りダイジェスト版では出てこない部分であるので、買ってのお楽しみである。

09.JPG個人的には、雨の日の廃道をひとり歩いて写真を撮ってみたいと思った。

03.JPG
降雪直前の栗子隧道(山形側)にも行ってみたいと思った。私が行ったのは10月だったので、まだススキの繁茂でこのようには見えなかったのである。

07.JPGあと、ここ。南部新道の坑門脇にある砂防ダム。この砂防ダムから坑門への流れに、打たれた。この砂防ダムの存在感は、私の道路的琴線に強く触れた。

* * *

繰り返しになるが、本作は「買い」だ。その際、ぜひヨッキれんさんのサイトから購入すれば、氏への支援となる。


最後に。
エンディングのインターバル撮影、これはこれで、すごい。ここだけ、繰り返し何度も見た。映像ならではのものだ。本映像は素晴らしい言葉が散りばめられているのだけれど、私たち愛読者はすでにそのスタンスを知っている。だから、いちばんグッときたのはここだ。


おまけ:
『廃道クエスト』というかすれたタイトルロゴは、パッケージ、リーフレット、DVD本編、盤面に記載されているが、よく見るとすべてかすれ方が違う。なんでそんな手の込んだことになっているのかは、予想はつくが真相は知らないので、イベントで聞いてみようと思う。

あ、3月23日については公式発表があったら追記します。

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