神戸市に「神戸水道」という上水道用の導水ルートがある。水源は千苅(せんがり)ダム。武庫川の左岸川の支流、波豆川を堰き止めたダムで、そこから水路隧道で南東に向かう。途中何ヶ所か地上に顔を出して谷を水道橋で越え、また山にもぐっていく。やがて宝塚市生瀬付近で武庫川を渡り、上ヶ原浄水場(下記地図の緑のアイコン))に至るというルートだ。
概要は地図をご覧いただきたい。 より大きな地図で 神戸水道 を表示 福知山線の旧ルートにある分格トラス、第二武庫川橋梁を見に行ったとき、偶然、この神戸水道の水道橋を目にして驚いた。ボーストリングトラス!?(この橋を便宜上「レポートの(1)」とする。冒頭地図の黄色アイコン)。 1本の下路トラス橋(写真左、水源地側)と1本の下路プレートガーダー橋(写真右、浄水場側)で武庫川を渡っている。 橋脚は石積み。この区間の建設工事は1914年(大正3年)以降である。なお、廃止となった福知山線(旧線)の開通は1899年(明治32年)。すでに稼働していた鉄道隧道の下に水路隧道を掘ったことになる。 ここは、写真に見えている隧道をくぐると第二武庫川橋梁にぶちあたるのだが、隧道は水路隧道と交差しており(鉄道が上)、鉄道隧道を抜けると水道橋のはるか向こうに行ってしまう。これ以上近づくには河原に降りるしかない(降りてる人はいた)。 トラスを拡大する。これは曲弦プラットトラスなのか? そともボーストリングプラットトラスなのか? 実は両者を明確に分ける定義を私は知らない。両者は形態の差異による強度の違いでしかなく、荷重を負担する構造としては両者とも同じトラス構造である(と理解している)。 ボーストリングトラスだと考えてみた場合、その特徴(短所)である「橋門構を持たないので端部の強度が弱い」ということに外れる。橋門構はある。また曲弦プラットトラスだと考えた場合、あまりに扁平すぎないか(どこまでの扁平を許容するかは知らない)。端部の斜材は確実に45度以下だ。ワーレントラスでも45度程度が最小なのに。ここでは話を膨らませるためにボーストリングトラスということにして進める。 このあと、河原まで降りることはせずに第二武庫川橋梁まで往復し、停めておいたクルマをUターンさせようと武田尾駅に向かったそのとき、これが目に入った。 2連のボーストリングトラス! 写真は東側(武庫川下流側)からのもので、写真左が水源地側、右が浄水場側。渡す水道管は、手前とその向こう側の2本、並列でなくて半分重ねて渡されている。これを便宜上。「レポートの(2)」とする(冒頭地図のマゼンタのアイコン)。 西側から。ここで水道管はいったん頭上の高さまで上がる。その先はプレートガーダー(リベット結合)で道路を渡る。その持ち上げる部分の橋台は、橋脚と同じく石積みだ。 この水道橋はには意匠が凝らしてある。例えば端部の処理。こんな美しい曲線を描いている。 ふたつ上の写真の一部をトリミングしたここなどどうだ。立ち上がる水道管を支える部材のRとその肉抜きの楕円。立ち入りを禁ずる柵は、まるで洋館(←なんと曖昧な言い方だろう)の窓の柵か花壇の柵のようだ。 さて、冒頭の地図のとおり、ここで紹介した以外にも2ヶ所、このトラスが架かっているようだ。一つ目は水源地側、千苅ダムの西、川下川ダムの堰堤の手前。冒頭地図の水色アイコンの場所だ。 衛星写真で見ると、ちゃんとトラスが見える。川下川ダムは1977年(昭和52年)竣工なので、古い航空写真を見るとまだ造成中だったりする。水道橋は推定標高140m(等高線から)、ダム水面は標高164m、ダムの放水路はおそらく水道橋の10m以上下。 もう一ヶ所は福知山線宝塚駅-生瀬駅間で武庫川を渡る場所(冒頭地図の朱色のアイコン)。ここはストリートビューで見ることができる。 大きな地図で見る 上のストリートビューは右岸から。そして、水道橋で武庫川を渡ると、神戸水道は地中に潜っていくのがこのストリートビューでわかる。 その後、国土地理院の地形図を見る限り、何回か谷や川と交差するのであるが、水道橋で渡っている部分はなさそうである。おそらく地下を通っているものを考える。 廃線跡で偶然見つけた水道橋が、思いも寄らずに神戸市民の上水として由緒のあるものだったことは感慨深い。惜しむらくは、上記「レポートの(2)」の写真をもっと撮っておくべきだったことだ。大きな反省点だ。 いや、最大の反省点は「ボーストリングトラスと扁平な曲弦トラスの違いを言えない」ことだろう。この点について、ご存知の方はぜご教示いただきたく、お願い申し上げます。 PR |
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