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東洋大学朝霞キャンパスのライフデザイン学部10周年を記念して、連続シンポジウムが開かれているとよんますさんからお聞きしたので、そのテーマに興味を持って行ってきた。

5月23日は三つのシンポジウム…といってもトークイベントと言った方がいいと思う、大学としては「研究」「発表」から抜け出せないようだが、私はそういう意識で聴いたので、そういう感想を書く。

ライフデザイン学部開設10周年記念 人間環境デザイン学科連続シンポジウム第2回
「専門と日常 -専門家から見た非専門的な世界-」

http://www.toyo.ac.jp/uploaded/attachment/15704.pdf



さて、シンポジウムのしんがりはこれだ。

演 題:「電柱・電線は、何故、埋めたくなるのか」
副 題:「信頼を保全性の側から支える電線の壮麗なる姿」
講演者:内田祥士(専門分野:建築設計)  東洋大学教授


話は山口晃の『前に下がる 下を仰ぐ』のなかの、電柱のインスタレーションと、そこに添えられていた言葉から始まる。これをベースに「美と壮麗」という面で話は進んでいく。内田氏によれば、「壮麗」とは「何とか持ちこたえている姿」であり、「美的ではないが重要な価値を秘めた存在」と定義する。これが、電柱・電線にあてはまるというのだ。

※山口晃と電柱についてはこちらのブログに水戸芸術館での展示の写真がある。
 散財er`s memo 前に下がる下を仰ぐ



実際に、街中の電柱・電線風景およびディテールを見ながら検討を重ねる。一般に電柱には、トップに6600Vの高圧線・柱上トランス・低圧電線といった配電系統、その下に通信系統の「電線」がある。配電系は「関電工系の作品」、通信系は「NTT系の作品」と内田氏は表現し、導体かつ構造体でもある配電系と、メッセンジャーワイヤーという構造体に巻き付いた導体でしかない通信系の違い、その接続部や屈曲部にも注目していく。そして、美か醜か、と突っ込んでいく。

なぜ繁華街の上空は汚く見えるのか。それは配電系のせいなのか通信系のせいなのか。あるいは(繁華街は道路に沿ってあるので、道路を見通すと)奥行き(基幹系統)のせいなのか左右(支線系統)のせいなのか。これも写真を見ながら繙いていく(※内田氏は幹線、支線という言い方はしていないが、ここではわかりやすく言い換えた)。

商店街があるとする。インフラは道路に沿うので、実は道路に沿った幹線系統は至ってシンプルだ。問題は、そこから各家に引き込む「左右」、つまり道路を横断する電線の支線である。家側の引き込む点の高さは家によって違う。幹線から取り出し口も違う。「左右」は平行にはとうてい見えず、三次元的に斜めに横断する電線ばかりになってしまう。それが、目につく。

そして、幹線系統は大電力・大通信量であるが、スッキリしている。対して支線は一戸一戸に対応しているので小電力・小通信料であるが、醜い。そして、なんとか「壮麗」ならばいいが、「美」から「壮麗」に来たら、その先にあるのは「破綻」である。「破綻」はダメだ。

ここに至り、実は、各戸に引き込む電線は各戸の欲望と同義である、欲望は隠したいものである、醜く感じるものである、だから見えなくしたくなる…というのが、見た目からの、内田氏の考察だ。



では、埋めた方がいいのか。それは否だ。需要のグラフを用いた説明があったのだが、要するにいまは需要のピークを過ぎつつある。今後、人口も消費エネルギーも減っていく。ならば、いま醜いと思っても、いずれ電線の量は減っていく。だから、単に整理し、まとめていくだけでいいのではないか。というのが、電線のある景観も愛する内田氏の話だった。

ほか、趣味者の目としての電線の話も多数あったが、それは聴いてのお楽しみだ。とてもおもしろかった。



このお話を聞いてから、水戸芸術館の山口晃展を見たくなった。でも、先週で終わったんだよね。なお、水戸芸で見てからこの講演…ではなくて、この講演から水戸芸…という流れです、希望するのは。


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