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ちょっと毛色の変わった本。鉄道員の家族が語る本はいくつかあるが、たいていはありきたりなことしか書いてなく、いや、それは普通の人はありきたりな生活をしているので当たり前なのだが、どれどれと思って読んでみた。

まず最初に驚いたのは夫が「国鉄マン」といっても「JR東日本発足時の取締役」で、国鉄末期の「本車列車課長」だった人物、ということだ。検索すると、退任後は関連会社(現在社員2000名超)の社長を務めている。超エリートじゃないか。「国鉄マン」とうたっているので、機関士や車掌、駅員、保線などの現場の人の妻かと思い込んでいた。サブタイトルの「夫と転勤家族」は目に入らなかった。

…ということを知った上で、改めて、一説には300人しかいないという本社エリートの生活として読んだ。彼らごく一握りの人間が、40万職員を束ねる。そんなヒエラルキーがある職場とはどんなものなのか。大卒者のデスクワークしかないという職場に通う私には想像すらできないのだが、それは、本書冒頭、30前の夫が高松機関区長として赴任するあたりから、もうその雰囲気が色濃く出ている。

読んでいると、これが本当にエリートの暮らしなのか、と驚く。官舎が狭い、古いというのは、時代性という面も確かにある、それにしても、厳しい環境だ。当時からよく「国鉄の給料は安い」と言われていたが、このクラスの人物……高級官僚に相当する……にして、家を建てたのが(おそらく)野田線沿線というのは……。

そしてまたこれも時代性なのだが、これだけのエリート夫に対して、妻があまりに専業主婦。いまの若い世代が読んでも「ふーん???」としか感じないかもしれない。家庭を顧みないし妻に一切の…国鉄からJRの取締役に内定したことすら話さない夫、自分の原理で行動して夫を常に困らせる妻。そんなエピソードが後ろの半分以上を占めるので、本書を読破するのに時間はかからない。飼っていた鳥だとか子どもが交通事故に遭ったとかそういうことを詳細に書くのではなく、官舎がどういうものだったか、幹部職員の家族、職場のレクリエーション、そういったものをもっともっと披露して欲しかった。

それにしても、「運転」のことなどの記述は正確だ。本人は専業主婦なので、もちろんそんな知識があるわけもなく、また、付け焼き刃で書けるものでもない。文章含めて、きっちりした人がバックアップしているのを感じるが、前述のように、文章としてはきちんとしていても、趣味的には中身がない。まるで自分の親や親戚、同僚の話を雑談として聞いているような内容だ。うっかりさらっと読める本だが、気がつく人なら、途中で「あれ? なんで自分はこの本を読もうとしたんだっけ?」となるだろう。私は別に、そこらへんの人の子育てや家族の生活の話を読みたいわけではないのだ。

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