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映画『アンストッパブル』をより味わうために(1)の続き。

■日本語字幕について

●賛辞

英語との対訳はわからないが、日本の鉄道用語とは正確に対応している。たとえば、大部分のアメロコにはダイナミックブレーキがついていて、これがストーリーにも関わるのだが、アメロコの場合、ダイナミックブレーキは発電ブレーキを意味する。これは、アメロコのことを知らないと、単に「ダイナミックブレーキ」などとカナ表記しかねない部分なので、訳者GJ!である。

 アメロコのボンネット(フードという)上部がキノコのように張り出しているものがあるが、
これが発電ブレーキの放熱器であり、その上にはファンがある。
アメロコウォッチャー(トレイン・スポッターという)は、そのファンの数を気にする。


「力行」にはルビを振ってまでこの日本語を充てていた。すばらしい。ほかにも多数のGJがあった。


●惜しい!

残念だったのは、アメリカはマイル表示が普通であって、機関車のスピードメーターもマイル表示なのに、字幕がキロ表示だったことだ。

「時速128km」という字幕でも、映像は80MPHのスピードメーター。
「スタントンの大カーブの制限速度は時速25km」という字幕の後ろの映像は、「15」(MPH)と書いた標識。
「91.7km標」(だったような気がする)という字幕の後ろの映像は57マイルのポスト。

それぞれ

「時速80マイル(約128km)」
「~時速15マイル(約25km)」
「57マイル(約91.7km)標」

などとすればいいのに。


■機関車について

この映画では、貨物列車をGEAC4400CWが重連で牽引している。しかし、実際に起こった事故ではEMDSD40-2が単独で牽引していた。これはおそらく、映画の視覚的な効果を狙ってのことだと思う。また、時速80マイル(時速128km)ということに信憑性を持たせるためかもしれない。

しかし、SD40-2が暴走する列車に追いつき、連結したときには時速80マイルだった(と思う)。ということは、。SD40-2はそれ以上のスピードで走らなければならないのだが、本機の最高時速は65MPH(約時速104km)である。このへんを言うのは野暮というものか。なお、たしか、劇中、「いま時速104km(←数値はうろ覚え)でおいかけてる」というようなセリフがあった。これはそれを踏まえているのか。

また、AC4400CWは、その車名どおり4400馬力。これが重連で引く貨物列車を、果たして3000馬力のSD40-2のダイナミックブレーキで、引っ張って止められるのだろうか。これは、私にはその計算ができないので真偽は不明である。


さて、wikipedia英語版によれば、撮影には複数の車両が使われたとある。

●#777、#776…カナダ太平洋鉄道からのリース。
この2両が、無人の貨物列車の牽引機。4両とも、撮影終了後も映画の塗装のまま使用されている。
・#777…前半#9777、後半の傷んだ姿は#9782
・#776…前半#9758、後半の傷んだ姿は#9751

●#1206、#7375+#7346…ホイーリング・アンド・レイク・エリー鉄道からのリース。
#1206が主人公。#7375+#7346は「失敗した作戦」のため爆発炎上した機関車。

・#1206…3両使用。#6353と#6354。もう1両は運転台のショット。
・#7375…#6352(エキストラ的に出ている#5624も)
・#7346…#6351(エキストラ的に出ている#5580も)

#7375+#7346は、#777+#776に押し出される形で脱線・転覆したあと大爆発する。軽油を燃料とするディーゼル機関車が、そこまでの派手な爆発をするものだろうか?

●#2002(施設見学の児童たちを乗せた列車)…サザン・ペニンシュラ鉄道のEMDのGP11

■機関車の塗装について

実際の事故は、CSXが起こしたものである。CSXの塗装は、くすんだ紺/グレー/黄色である。
こちらのサイト「Crazy 8's the CSX report」からリンク)

対して、映画の中ではこのような塗装である。
20110129.JPG公式サイトよりキャプチャ・トリミング)

この塗装はサンタフェ(アッチソン・トピカ・サンタフェ鉄道(ATSF))の塗装を連想させる。こういうものだ。
ATSF C44-9W #637 4 (2)

上記写真はAC4400CWの前身というべきC40-9W。

AC4400CWの製造開始は1993年。ATSFは、1996年にBN(バーリントン・ノーザン鉄道)と合併し、BNSF鉄道となった。実際にATSFカラーとなったAC4400CWの画像は見つけられていないが、C40-9WにはATSFの塗装パターンを踏襲しているものがある。意図的に「赤+銀」にした上記のような車両もあれば、BNSFの濃緑+オレンジをベースに、この「インディアンの羽根」をイメージしたロゴをあしらったものもある。
Smokin' It Up


興味深いのは、CSXの事故をもとにした映画なのに、BNSFの前身たるATSFに似た塗装としたことである。営業エリアは、CSXが東海岸、BNSFはそれに接続するように中部から西海岸であるので、ライバル会社を貶める意味合いはないと思う。単に「かっこいい」ためかもしれない。


(まだ続く)
映画『アンストッパブル』をより味わうために(3)

(上記にリンクしたwikipediaの記事は、私が立項したものや大きく改稿したものが多数あります。こんな形で役に立つとは。)
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