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110122_223120.jpgソフトバンククリエイティブのサイエンス・アイ新書。サブタイトルが「なぜ昔の人は地球が楕円だとわかった? 航空写真だけで地図をつくれないワケは!?」。

内容は、地図製作の歴史=「地球」のとらえ方の歴史から、近代の三角測量、GPS測量に至るまで、なかなかわかりやすく解説している。さすがに著者は地理院の技官であっただけに、実際の2万5000分の1地形図を起こす際のエピソードがいくつか盛り込まれている。

けっこうな紙数が割かれているのがGPS測量の問題点や写真測量。本書の約半分は、そうした話だ。だからこそこの本を買ったのだ。おそらく著者が直接携わった「現場」なのだろうと思う。GPSを使って地図とリンクさせていたり、航空写真を眺めることが好きな人が読んだら、GPSや航空写真への興味というか知識が深まると思う。

ただし、記述は舌足らずである。地理の専門用語がばしばし出てくるのだが、その解説が文章だけだったり、具体例がなかったりするのだ。添えてあるイラストの一部が、理解を妨げるようになっているものもある。

たとえば…

(1)ジオイド面

簡単に言うと、もし海面が陸地まで浸透していたら…という面で、「標高」の基準であるのだが、その説明がなかなかまどろっこしい。本書だけでは理解できないと思う。

wikipediaの図がいちばんわかりやすい。
20110122.JPG(wikipediaのファイルをキャプチャ、転載。ライセンス=CC-継承 3.0 非移植
1が平均海水面。海水面は周辺の陸地(というか、海水ではない部分)の密度などにも影響を受けるので、地球楕円帯(仮想の地球の形状。そもそもその定義すらいくつもある)とは異なる。2が、その地球楕円体。3はジオイドそれぞれの点おける鉛直線。4が地表面。5がジオイド。5のジオイドから4の地表面までの距離が標高となる。

私はGPSで表示される「標高」が地球楕円帯からの高さであってジオイド面ではない=地形図の表示と異なる」ということを本書を読むまで知らなかった。このあたりのことと、その問題点は本書で詳しく説明されているので、GPSをお使いの方はぜひ見たほうがいい。「GPS使いなら知ってて当然」だったらすみません。


(2)スクライブ
これは、製版・印刷の流れが分からないと、まったく理解できないだろう。本書では「スクライブ製図は、ポリエステル系の樹脂へ不透明の膜を塗布したベースに、編集した地図画像を焼き付け、記号部分の塗膜を針で削り取る方法」と書かれているが、その「ベース」がなんなのか、理解できないと思う。

印刷には「刷版」というものが必要である。要するに、8ページ、16ページをひとまとめにした金属製の薄い板状のハンコである。その刷版を作るのに、以前はエッチング処理を要し、というとエッチングを説明しなければならないが、金属板のハンコ(刷版)は、金属を腐食させてオスメス部分を作る。そのときにフィルムを使うのだ。フィルムが透明な部分がハンコ(刷版)のオス、黒い部分がメスとなる。フィルムは、実際の誌面のネガ(白黒反転したもの)となっているので、スクライブ製版というのは、直接、真っ黒(ではないけれどイメージとして)のフィルムを針でケガキしてオスとなる部分を描いていく方法である。

ここまでお読みいただいてから武揚堂のサイトをご覧いただければ、合点できると思う。

さらにスクライブの現実は、フグの女王様のサイトで理解がするむと思う。このサイトはTUBEグラフィックスの方のようだ。私は面識はないが、たぶんあの方。TUBEグラフィクスは仕事上でもお世話になっているし、常に注目しているグラフィックデザイン集団だ。このサイトにあたったのは、偶然である。


(3)空中写真を使っての図化
これは、いまでも理解できていない。「(位相を変えた空中写真を置いた後)お測定のための『ポインター』(メスマーク)には、顕微鏡の先で浮き沈みするしくみがあって(後略)」とあるのだが、「ポインター」がどんなものなのか、なぜそれが浮き沈みするのかがわからない。1990年代前半に『山と渓谷』に地図製作の特集があった気がするのだが…。



などと勝手なことを書いてきたが、別に、理解できなければ自分で探求すればいい。この手の、地図の根本的な定義を問う本としては手軽な価格であり、そこを評価したい。願わくば、地図の定義やGPS測量についてだけ書かれた続編を。



ついでに。
検索中に発見した「写真測量」とそれを継いだ「写真測量とリモートセンシング」という研究誌のPDF。おいておきます。例えば第1巻には「写真測量の現状と問題点」などという論文があります。

『写真測量』(1962年~1974年)
『写真測量とリモートセンシング』(1975年~)

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