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20091226.jpg『モーニング』に不定期連載中の『カレチ』が単行本化されたので買ってきた。読みながら、参考文献として壇上完爾氏や坂本衛氏の著書があげられており、内容もそうしたものなので、まあそうだろうな、と思っていた。

ところが、本書の巻頭に、参考文献として『出発進行!』萩原良彦著、とある。

やられた、と思った。
そして、著者の池田邦彦氏は「知っている人」である、と強く感じた。

読んだことのなかった(たぶん掲載時は読み飛ばした)ちばてつや賞受賞作『RAIL GIRL』では、よりによって藤井松太郎の名まで出てくる。こちらの作品は、ここで終わりか、と思わせておいて実はまだ物語り半ば、そこからまた盛り上がりにつながるという非常に凝った、素晴らしい作品である。


かつて漫画編集の末席の末席を汚していた私は、もしまた漫画編集になったなら、萩原氏の著書を、某漫画家に漫画化してもらいたいと思っていた。国鉄の現業が書いた作品は数多あり、現在でも交通新聞紙上で作品が掲載されたりしているが、内容、文章ともに壇上氏と萩原氏がダントツだと思っている。萩原良彦氏についていえば、著書の中でも『臨時停車』と『発車5分前』が抜きんでていると思う。後年、ドキュメントの分野も手がけ、『上越新幹線』なども手がけたが、残念ながら吉村昭にはなれていない。


『カレチ』に戻る。
これになんとなくのシンパシーを感じるのは、舞台として北陸本線が多く出てくるからだろう。第1話からして、大阪(以遠)から「白鳥」に乗った乗客が東三条で弥彦線に乗り換えるのである。一人の乗客のために、列車を30分遅らせる話である。いまであれば「タクシーで行っても数千円だろ」ということにもなろうし、そもそも大阪から新潟へは飛行機だろ、ということにもなろう。でも、当時はそうでなかった。大仰な言い方になるが、これは、同時代に生き、中長距離に鉄道を使っていた者でなければ理解できない感覚であると思う。

『カレチ』は、今風の浮ついた鉄道漫画ではない。いい意味での昔気質の漫画作品である。通常、漫画で鉄道車両やバイク、クルマなどを描くときは写真をトレースする人が多いものだが、本作品では完全に心象から絵を起こしている。作品中に出てくる構図は、カメラでは撮影できないパース、アングルだったりする。鉄道車両のスタイルを完璧に頭の中で組み立て、それを絵にしている。そこが素晴らしい。もちろん、物語もテンポも素晴らしい。

絵は、定規を使わずに直線を描いている。スミはほとんどなく、各種斜線の濃淡で陰影を表現し、トーンは最小限しか使っていない。それゆえに絵が優しい。

表紙はED74である。

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