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20120323_000.JPG(許可を得て展示を撮影。以下同)

銀座ニコンサロンで、吉野正起さんの道路写真展が開催されている。今回のタイトルは『道路2011 -岩手・宮城・福島-』。震災で被害にあった地域の道路だ。

吉野さんとは、2010年9月に銀座ニコンサロンで開催された写真展『道路』で初めてお会いした。道路を尋ね歩き、写真に収める。作品にする。誰の記憶にもでてきそうな道路の光景を切り取った、すてきな写真展だった。

20120323_001.JPG道路に船が鎮座しているような、被害そのものと言えるもの。暴力的に破壊された道路。プラ板のようにねじ曲げられ、結び目のようになっているガードレール。原発事故の影響で立ち入り禁止となった道路の看板。震災前とまったく変わらない姿だけれど、人の気配のしない道路…。ここに掲示されているのは道路なのだが、あまりに受け取るものが異なる。よって、見る人によって、まったく違う印象を持つ写真展となるだろう。

私がいちばん強く印象に残ったのは、人の気配のしない山間部の道路である。上の写真でいうと、柱の2面、その右の3点。コントラストをつけずに、でも明るくプリントされたその画面には、ありふれた、だれの記憶にもある道路が写っている。ただし、廃道でもないのに草が路面に這い出し始め、周辺の民家には人の気配がない…。

20120323_002.JPG吉野さんも、撮りながら、さまざまなことが胸に去来したという。太平洋側だけでなく、日本海側も本当は写真に収めてあるのだ…。

おそらくこうした会場にいれば、否が応でも観客は震災の話を始めるだろう。その都度、そういう話につきあわねばならないご苦労は大変なことと思う。

吉野さんと話していて、気がついた。私は、被災した道路には趣味的な興味が湧かないのだが、それは、「まだ使えるのに、新しい道路に代替された悲しみ」を宿していないからだ。それは、向き合ってもこちらは悲しくならないし、むしろ積極的にそれを写真なり文章なりで描き出すことに力を注げる対象だ。

一方、災害で破壊されたり立ち入りを禁止された道路は、単なる地域の悲しみしかない。本当の悲しみだ。それを、自分の思考をまとめるために眺めたり、あるいはエンタテイメントとして解釈することは、私には不可能だ。只見川の橋梁を撮りにいったことがあるが、それは、親しみのある場所だったからだ。

吉野さんの作品は、鑑賞者が災害の写真をどう捉えているかを浮かび上がらせる。私は、前述の通りだ。みなさんは、どういう印象を受けるだろうか。


ニコンサロン連続企画展 Remembrance 3.11 吉野 正起
3/21 (水) ~3/27 (火) 10:30~18:30(最終日は15:00まで) 会期中無休

<関連記事>
吉野正起氏 写真展『道路』


 
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