鉄道に関する空撮をまとめたもの(連載等)は、かつて花井健朗氏が『RailMagazine』で連載していた「青空の下、レイルは光る」が唯一と思う。吉永氏も、その連載を空撮に興味を持ったきっかけに挙げている。花井氏の空撮の登場から20年以上を経て、本書において、鉄道写真は新たな表現を得た。新たな表現でありながら、綿密に練られた鉄道空撮写真が多数収められている。 「鉄道写真」の表現に日夜奮闘している方は多い。しかし、著名な写真家たちの表現--作品を見ただけで「あ、○○さんだ」と思わせることができるくらいのもの--の範疇から抜け出すことはとても難しい。何人もの方々によって完成の域にあるところに、さらに継ぎ足して表現を作っていくのは、恐ろしく難しいことだろうと思う。しかし、吉永さんの空撮による表現は、そうした「鉄道写真」の常識的な流れとは全く異なる。ほとんど誰も挑んだことがないもの。手つかずの分野。勝手な推測だが、吉永さんの中ではいま、「こう撮りたい」というアイデアが無数に湧き続けていて、一刻も早くすべてを実現したくてしかたないんじゃないだろうか。そして、実現した、アイデアのごく一部だけが、本書に収録されたのだろうと思う。 吉永さんのサイトにも空撮のギャラリーがあるが、そちらは画像のサイズが小さいこともあり、感動がない。空撮は、大きな写真で見てこそ、と思う。ちょうど1年前、写真展が開催されていたが、そのときはそのすごさを知らなかったので、見に行かなかった。とても悔やまれる。いま、神保町の書泉グランデに、大判の作品が掲げられているので、それで我慢するしかない。
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私は、他にもよくポストするとおり、仕事でも遊びでも毎日のように空中写真や衛星写真、標高データを伴った地形図などを眺めている。しかし、それらはすべて「真俯瞰」、真上から写したもの。本書では大畑ループの説明があるが、それがその典型だ。それに対して、本書は同じ真俯瞰でもずっとずっと寄っているし、「斜め撮影」でも非常に大きな工夫がされている。見入ってしまう。 ほかにも、多数の「GoogleMapでは味わえない『近さ』と『カメラポジション』の作品」が多数収録されている。ほぼすべてが望遠レンズによる遠近感の強い圧縮がかかっているので、真俯瞰のために遠近感が薄いGoogleMapなどや、肉眼による距離感とは全然違う体験がそこにある。冒頭に「空撮写真を主体とした本」と書き、「写真集」」とは書かなかったが、ここに収録されている作品は、すべてじっくりと鑑賞したくなるものばかりなので、体裁は写真集的ではなくとも、意味合いにおいて「写真集」である。 ひとつだけ、本質ではない部分でこれはちょっと…と思うのは、駅や車両基地のデータの掲載だ。開業年や所在地、乗降人数、乗り入れ路線など、本書の読者対象がそれを知りたいと望んでいるとは思えない。写真の読み解きだけで十分だったのではないか。プラスするなら、…あ、ここから先は自分の企画で使えることを思いついたので内緒。 買った人も買ってない人も、書泉グランデの展示、ぜひ。そして本書の購入を。
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私が撮った写真で、航空写真のような雰囲気を持つものがあるのでアップする。どちらもポジを民生用のスキャナでスキャンし、色補正したものだ。 約2.5km離れた地点から見下ろして撮影。標高差約250m。これくらいの「見下ろし感」と望遠レンズによる圧縮感があると、航空写真に見える…気がする。これは、500mmf4.5に倍テレをつけているので1000mmf9。三脚に据えてもファインダー内がぐらぐらした。キハ281系は、私がもっとも好む車両。3両目に1両だけキハ282が混ざっている。 いまはデジタルで、色補正も簡単だ。ポジで撮影していた頃は、2.5kmも離れるとどうしても青カブリをしてしまった。それを簡単に除去できるなら、またここで撮影してみるか。…いや、無理だ。その手の機材は全部売ってしまった。 …それはそれとして、この場所、ただ列車を眺めるだけでもおすすめだ。スーパー北斗やDF200が引く長大な編成が、まるで鉄道模型のように七飯駅から高架橋を駆け上がり、足下に吸い込まれていく様は、本当に飽きない。たまにキハ40の単行が行くのもご愛敬だ。上の写真でいうと右上方向に、上り線(渡島大野からの線)も見える。 PR |
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