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須田寛氏(正しくは「、」のある「寛」)は、国鉄時代からなにかと表に出ていた方で、現代においては、JR東海元社長、JR東海のリニア・鉄道館収蔵車両を保存していた張本人だとか、そういう捉え方がされる方である。本書は「鉄道営業近代化への挑戦」というサブタイトルが付与されており、須田氏が取り組んできたことをたどりながら、その裏話をインタビュー形式で開陳するものである。

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内容は大変におもしろい。須田氏の著書を読んだのは初めてなので既出かもしれないが、多少は内部的な話に詳しいつもりの私でも初めて聞く話がいくつもあった。鉄道史に詳しくない人でも、すんなりと読める良書だと思う。

しかし、私はこう思う。本書は国鉄の「表」の歴史書であるから、本書を読んだら「裏」の歴史も学んでほしい、と。

本書は、国鉄の表裏の「流れ」と、時代性を正しく認識する目を持つと、なお深く想像しながら読むことができるだろう。聞き手の福原俊一氏は、折に触れ、裏の部分についても質問しているので、須田氏も労組との絡みや国鉄自身が抱える問題についても言及してはいるのだが、いかんせん、本来は営業史を語る本なので、まったく深く言及できない。読者は、少なくとも公共企業体として独立した時点から昭和50年代の歴史と、そこから国鉄改革至る猛烈な展開の基本的な流れを把握して、本書を読んでほしい。そういう観点に立つと、須田氏は「表」を歩んできたことを、否応なく感じさせられることだろう。

(参考)
『戦後史のなかの国鉄労使』(升田嘉夫著/明石書店)
『さらば国有鉄道』(三塚博) など

***

国鉄改革に関する本を読んでも、須田氏の名前は出てこない。須田氏の次の社長、葛西敬之氏は国鉄改革を語るときには絶対に外せない人物であり、著書もあるほどなのに、である。そもそも須田氏は国鉄常務時代、分割には反対だった。葛西ほか改革の中の人物の著書には、分割反対派の理事たちの暗躍が繰り返し描かれている。そこに須田氏が含まれるのかそうでないのかはわからないが、反対していたことは確かである。

JR化直後の社長/会長は、こういう布陣だった。

東日本:住田正二(運輸官僚、国鉄再建監理委員)/山下勇(三井造船社長)
東海 :須田寛(国鉄常務理事)/三宅重光(日本銀行出身、東海銀行頭取)
西日本:角田達郎(運輸官僚)/村井勉(住友銀行出身、アサヒビール社長)

初代社長は、看板的な布陣だったはずである。住田氏、角田氏のような改革派と並べると、須田氏の浮きっぷりはどうだ。須田氏は、国鉄改革時になにをしていたか、まったく聞こえてこないのが、私にはとても奇妙なのだ。そして、それなのに社長に据えられたこともまた奇妙だ。

なお、葛西氏はじめ改革の実働部隊は、JR各社に取締役や副社長などの形で入り、後日、社長の座を射止めた。そして、改革時のことを積極的に発言する人もいれば、あえて沈黙を守っている人もいる。

(2013年1月12日追記)
[『巨大組織腐敗の法則 国鉄に何を学ぶか』(屋山太郎著/文藝春秋)に、須田の名前が出てきた。

***

その流れで補足。151ページ、スト権ストについての記述について。
「盛岡と新潟と九州の一部地区(略)輸送を守らなくてはいけないという使命感を持っている人もいたことだけは申し上げておきたいですね」という須田氏に対して、福原氏は「労使関係が荒廃した時代であっても、鉄道魂をもつ職員も残っていたということですね」と返しているが、これは勉強不足ではなかろうか。

新潟は、労使協調路線の鉄労発祥の地といってよく、その勢力が強く、国労を上回っていた。それを「鉄道魂」などという言葉で安っぽく括ってほしくはない。盛岡は不勉強でわからないが、仙台も鉄労が強かった。

191ページ、分割の方法について。
「千葉を分けるという議論もありました」。これは初耳だが、これも労組がらみではないだろうか。千葉には、動 労 千 葉という、過激敵だった動労から分離してさらに先鋭化したような組合がある。この分離の内容については『戦後史のなかの国鉄労使』(升田嘉夫著/明石書店)を参照されたい。

***

最後に、「本」として。

本書は読み物なのに、なぜこの造本なのだろう? 本文用紙は厚くて読みづらいし、定価もモノクロ224ページで1890円と、高い。もっと普通の書籍用本文用紙を使って、四六判1365円程度で売ればいいのに、と思った。また、写真がひどい。「リニア鉄道館」は本当にひどい。。。

でも、読むと楽しい。久々に、一気に読める本に出会った。


 
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