読み始めてから8週間。ようやく読み終えた大著。
本書は660ページにも及ぶ恐ろしいものである。それゆえ、定価も8600円+税という、およそ本の値段とは思えない設定になっている。そのため私は図書館で借りて読むという行為に出たのだが、これはなんとか入手して、手元においておきたい本だ。 本作りをする者として、本書に対するもっとも大きな不満は書名である。書名は 近代日本の橋梁デザイン思想 三人のエンジニアの生涯と仕事 である。これでは、検索にひっかからないのだ! 現在、商業出版として、書名を決定する際に重要なのは「検索にひっかかるかどうか」だ。最近のビジネス書や実用書がやたら長いタイトルやサブタイトルをつけている理由の一つがこれである。本書の内容からすればたしかにこのタイトルで適切なのだが、これでは、この分野に関心を持つ人をフックしない。田村喜子の『北海道浪漫鉄道』という本が、実は田辺朔郎が神居古潭や狩勝峠を見出す話であるとは思えないので大損(読者を逃すという意味で)をしているのと同じ構図だ。 本書にいう「三人」とは樺島正義、太田圓三、田中豊である、この三人の名で検索したときに、必ずひっかかるようにしなければならない。それゆえ、~恥ずかしながら~私はこの本を知らなかった! できれば、索引にある膨大な人名も検索でひっかかるようにしてほしい。この点に限っては、Googleブックスみたいなものがあればいいのに…と思った。 さて、内容である。本書は、日本の歴史上初めて現れた、橋梁と思想を関連づけて考えることができるエンジニアの分析である。よって、橋のスペック的なものはほとんど現れない。そして、徹底的に資料に基づき、三人の思考がどういうものであったかを調べ上げていく。資料に基づくのは、三人の思考だけではない。時代背景の記述にもすべて注釈がつく。先に前660ページとあげたが、その注釈だけで100ページを超すのだ。 こんなものを読んでいたため、いま読み始めた『余部鉄橋物語』(田村喜子著、新潮社)の「ドキュメント調小説」に強烈な違和感を持つ羽目になってしまったという、大変危険な書物である。 長くなりそうなので今日はここまで。 PR |
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