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(続き:前編はこちら

後編では、「旧」北上大橋について書く。「旧」北上大橋はスパン100m。「新」北上大橋の半分だ。以下、「新」「旧」にカギ括弧はつけないが、どちらも「北上大橋」であり「新」「旧」は橋の名称ではない。

前編で、道の駅かわさきに旧橋のモニュメントがあったと書いたが、そのモニュメントには、旧橋の写真がはめ込まれている。
IMG_3054.jpg

そして、モニュメントはこれだ。

IMG_3053_R.JPG左右の「ブレーストリブ」部分をつなぐ部材、横構だろうか。旧北上大橋は幅員5mというけれど、これはそれ以下なので、それを切り詰めたものかもしれないが確信はない。

銘板がついている。
IMG_3055_R.JPG
昭和4年
株式会社浅野造船所

材料
ICL 八幡製鉄所
鈑 浅野造船所
鋲 浅野小倉製鋼所



部材を間近で見られるのは貴重な経験である。
IMG_3056_R.JPGIMG_3058_R.JPG部材がどのように構成されているのかがわかる。さわれる。部材の曲線部分は、手作業で切り取って簡単な面取りをしただけだということがわかる。
 
IMG_3054_R.JPG




モニュメントに添えられた碑。下に書かれた文言をすべて書き写す。





 
 北上大橋の完成は、薄衣・弥栄両村の交通革命といっても過言ではない。渡船による不便から渡橋による便利さは、両村間の距離を近接させることができた。この大橋は昭和8年起工、請負は東京浅野造船所である。同10年工事は完成に近づきあとわずか9mのアーチのアングルをつなぐだけとなった8月29日北上川の増水が無残にも橋を押し流し、工事は振り出しに戻った。
この時、工事監督に当たっていた県土木課の担当者と浅野造船所の技師が責任感から「橋と運命を共にする」と橋桁にしがみついて待避せず、地元民が無理やり引き戻した途端に橋が流出したというエピソードがある。
地元民並びに県当局の熱意は請負者の誠意と相まって再び工事に着手し、減水後、潜水夫を使って水中の橋体を解体するという難作業から工事は再開され遂に昭和13年7月竣工を見るに至った。
このようなことから当振興局では、旧北上大橋の解体に当たり、アーチ橋の一部をモニュメントとして保存し、本件の土木事業の重要な記念として末永く展示することにしたものである。

 
千厩地方振興局長 沖 正博
平成16年3月
 
地元の人々がいかに北上大橋に思い入れがあるかわかろうというものだ。


別のモニュメントが橋のすぐそばにもある。
IMG_3097_R.JPGもちろん、この幅も5mもないので、移設したものだ。

IMG_3101_R.JPGこちらにも、旧橋の写真がある。石に彫られているのだが、これはどう呼ぶのだろう。

写真では見えづらいが、右側の親柱の向こうには、田中賞受賞記念碑がある。

IMG_3103_R.JPG



旧橋は、親柱が保存されているこの位置ではなく、橋を挟んだ向こう側にあった。もっとも川幅が狭まった位置であるが、それでも支間100mである。昭和52年撮影の国土画像情報に、現在のルートを黄色で加筆するとこうなる(トリミング済み)。

cto-77-9_c7a_4-1.jpg当時の集落や道路をまったく無視する形で、田んぼの中にバイパスができている。旧橋の左岸(画面でいえば川の「上」)たもとを、前編で掲載した現在の地図と見比べると、そこに橋があったことがよくわかるだろう。

このバイパスを「薄衣パイパス」といい、前述の石碑にも「薄衣村」とある。薄衣村は左岸にあった村で、昭和31年9月末日に門崎村(陸中門崎駅の由来だ)と合併して川崎村となった。一方、弥栄村とは昭和29年末まで存在した右岸の村で、昭和30年元日から一関市となった。両者を含めた7市町村が合併し、一関市(新設)となったのは平成17年9月20日である。石碑に書かれた村名は、50年以上前に消滅した自治体名である。それが書かれているところに、私は感動する。

交通至便となったのは当たり前のことで、現在でも、上流側は川沿いに約10km遡った柵ノ瀬橋、下流側は同じく7.2km下った北上橋まで、橋はない。


最後に資料を置いておく。

設計者・新日本技研による図面その他
 
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