右が「交通」である。古書を購入しようとしたら3000円程度のプレミアがついたものしかみつけられなかったので、地元の図書館で検索したら閉架の奥にあったので取り寄せてもらった。末尾に貸し出しカードを入れる欄があるが、一度も借りられた形跡がないのがまた悲しい。この本は幸い蔵書として扱われていたが、もし貸し出し履歴の多寡で蔵書の廃棄が決まるということがあれば、こんなに資料性の高い本とて廃棄される可能性は高い。なんということだ。
本書を知ったのは、先に書いた『日本の鉄道をつくった人たち』に、参考文献として載っていたからだ。それも、誤情報の情報源として。誤情報とは、エドモンド・モレルの出生年と配偶者についての記述だったが、本書の本筋からいうと無関係に近い記述ではある。出生年を1841年としているが、正しくは1840年。配偶者を「日本人」とし、モレルと同じく結核により後を追うように死去、としているが、本当の妻はイギリス人であり、死亡はモレルの死後12時間後で、理由は不明だが精神的なものか、と『日本の~』では書いてる(と記憶)。 本書の記述は、事業や政府の立場からみたお雇い外国人個人を縦糸に、個人からみた事業を横糸にして織り上げている。願わくば両者を統合した立体的な記述がほしいところだが、それは読み手の脳内で構築すべきことなのだろう。しかし、非常に困難が伴う。なぜなら、読み手(つまり私)に、明治初期の行政や官庁の理解がまったく足りないからだ。 また、お雇い外国人に与えられた職名がいくつあって、それらが日本の行政とどういう関係になっていたのかとか、「建築師長」と「建築師」の関係はどうなのだ、とか、まったく新しい知識が少しだけ放り込まれている大湖にこぎ出すような不安を覚える。先に挙げた『工部省沿革』等で見るといっても限界は低そうだしな。 そしてなおかつ、1906年(明治39年)の鉄道国有化までの、官設/北海道/九州それぞれの事情を把握していなければならない。そうしてこそ、この本の記述が理解できる。 残念ながら、私の脳内には、かろうじて鉄道建設事情が収まっているだけなので、縦糸、横糸それぞれをたどることくらいしかできない。 とはいえ、これは私が責めを負うべきものではないとも思う。義務教育どころか受験勉強としての日本史では、こうしたことは求められなかったし、鉄道ファンでも、国鉄の前が鉄道省で、その前が鉄道院で、くらいが関の山だと思う。まして、鉄道行政の長の役職名がなんなのか、などわかるはずもない。たとえば鉄道行政官庁などこんなである。 工部省 明治3年閏10月20日に開設されたのが工部省で、トップは卿。ただし不在。ナンバー2は大輔で後藤象二郎、これが実質のトップ。明治4年8月14日(太陰暦)に鉄道部門の部署「鉄道寮」が設置され、そのトップは「頭」で井上勝。工部省組織化で、鉄道寮は鉄道局になり、工部省廃止と同時に内閣直属になった。
以後、 内閣鉄道局 ↓ 内務省鉄道庁 ↓ 逓信省鉄道庁 ↓ 逓信省鉄道局→鉄道作業局分離 ↓ ↓ 内閣鉄道院←←← ↓ 鉄道省 こんな感じである。凡庸な脳味噌には体系化できるわけがない。 それでも、本書の著者は高校の教師で、初版時33歳である。すごい、としか言いようがない。そして、初版が昭和43年で、二刷が昭和54年というのもすごいと思う。 (続く かも) PR |
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