水路を楽しむ方々のツイートやブログを拝見するにつけ、水路に行ってみたいと思っていた。さわりだけでもと思ってエイヤッと参加したのが8月28日だ(横利根閘門(茨城県←千葉ではない))。それから1ヶ月くらい経った頃だろうか、水路を「楽しむ」という視点で紹介した本が刊行される、という情報があった。聞けば、『水路をゆく・第二運河』の外輪太郎さん(パドルさん)が著者とのこと。イカロス出版の大野さんのツイートなどでよくお名前を目にしていたし、ブログも拝見していたので、発売を楽しみにしていた。そして発売日、書店に行ったらまだ搬入前で未入荷。改めて翌日だか翌々日だかに行って買い求めた。
『東京水路をゆく』。タイトルだけ聞いて、最初は地図もふんだんに使ったムックかと思っていた。書店とは会社の近くの三省堂有楽町店、そういうスタイルで探したが、旅行ガイドブックコーナーに、スピリチュアル(笑)なガイドブックなどとともに平積みになっていた。雑貨本のような、予想外にかわいい装丁だった。版元が意外な会社だった。 読み始めて感じたのは、とてもしっかりした本だということだ。記述は「です・ます」調、ときに「~ありますまい。」といった、丁寧に意見や感想を語りかけてくるような口調が織り交ぜられ、著者自信が水路を案内する形式になっているので、あえて分類すれば紀行文になるのだろうが、実用書としても正確で十分な情報がある。世の中に数多ある紀行文には、この部分(正確性)がダメなものがものすごく多い。 さらにいいのは、内容のバランス。本文は、水路、閘門、水門、橋などを、水路別に描いている。概要があって、個別の話がある。意外にも土木構造物の個別な細かい話は少なく(石坂氏は土木構造物には非常に詳しいのに!)、適度に「ツアーでその場にいった観客目線」というか、水路そのもののリアルな描写が出てくる。それが非常にわかりやすく、想像しやすい内容となっている。このバランスがいい。それを見た読者は、きっとGoogleEarthでそこを眺めたくなるに違いない。私なぞは帰宅後、gis航空写真検索から何度となく古い航空写真を閲覧してしまった。今度、2万5000分の1地形図と首っ引きで東京の水系の構成を把握してやろうと思っている。とはいえ、興味を持ったことに首を突っ込み続けて身動きできない状態になっているので、勉強会みたいなものがあると一番いいんだけれど…。 私が水路に興味を引かれるのは、おそらく道路や鉄道と同じ運命を背負っているからだと思う。水路開鑿には必ず目的がある。水路は時が経てば用済みになる。場合によっては埋められてしまい、かつてはそこに流れがあったことすら忘れられてしまう。こうした展開は、道路や鉄道がたどる経過にそっくりだ。道路や鉄道のルート変遷史のようなものをお好きな方なら、この感覚をわかっていただけると思う。 水路好きの人はもちろん、道路好き、地図好きの人も読むべし! PR |
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