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20110720_002.JPG

7月18日(月・祝)、カルカルで開催された『地図ナイト!』に行ってきた。出演者は次のとおり。

田代博氏(パソコン通信の時代から展望をPCでシミュレーションしている地理教諭。富士見研究家)
今尾恵介氏(地図・鉄道 研究家)
平井史生氏(気象予報士)
近藤賀誉氏(東京カートグラフィック)
野々村邦夫氏(元・国土地理院長、現・日本地図センター・理事長)
小林政能氏(日本地図センター・エンターテイメント担当)

詳細なレポはいずれ公式であがるからそちらに任せるとして、このイベントで「自分にとって、地図とは?」という点に思いが至ったので、そんなことを整理してみる。


●「地図」と「マッピング」は違う

今回は『地図ナイト』であり、『マッピングナイト』ではない。その違いはどこにあるのだろうか。

地図…眺める対象(物)
マッピング…地図(に類するもの)に働きかける/を作る行為(意識、動作)


と考えるとわかりやすい。(「作る」は石川初氏の示唆による)


カルカルでは、過去に2回、『マッピングナイト』を開催している。その内容は、まさに後者のようになっている。対して、今回は『地図ナイト』である。地図を眺めるのが好きな人たちのイベントかな…と思いつつ参加して、まさにそのとおりだった。

平井氏は、マッピングに近い発表だったが、他の人は、地図に働きかけたり、地図を作ったりはしない。「すでにある地図」を読み、そこになんらかのおもしろみを見出す。昔からいる「地図好き」の遊びだ。そのためか、カルカルが初めて、という客が半分くらいだったと思う。また『マッピングナイト』に来ていた層とも異なると感じた。

こうした、「地図好きが地図を眺めているときに考えがちなこと」を可視化すると、とてもおもしろい。



●紙地図のよさ・ネット地図の限界

紙地図のよさは、その大きさである。PCのモニタで見るネット地図とは異なり、その何倍もの大きさで見ることができる。

国土地理院が作る2万5000分の1地形図が「ウオッちず」としてブラウザで見られるのは周知の通りだが、当然のごとく、最大でもモニタサイズ、多くの場合はその数割減の面積にしかならない。
20110720-102.JPG地図閲覧サービス2万5千分1地形図名:茂倉岳(高田)

ここは群馬・新潟県境の清水峠で、上越新幹線や関越トンネルが近く、山岳地としては谷川岳や巻機山などの三国山脈の一角である。しかし、まったく周囲が見えないので、清水峠をご存じない方は、ここがどこだかわからないだろう。

こうした問題は、同類のサービスでも同じだ。
20110720-103.JPG電子国土

いま、ウオッちずは電子国土に準じたものに切り替わりつつあるので、同じものである。

以前のタイプも見ることができるが、状況は同じである。。
20110720-104.JPGウオッちず


2万5000分の1地形図は、もっともっと大きな範囲を一度に見ないと、把握しづらいのがわかるだろう。

古い地図のアーカイブも状況はいっしょ。たとえば明治20年の東京都内の地図。2万分の1。
20110720-105.JPG東京近傍図 中部

この図は、ブラウザ内で自在に拡大・縮小、移動ができるのだが、この窓の大きさでは…。

縮尺の小さなものではもっと顕著だ。

20110720-106.JPG五千分一東京図測量原図 東京府武蔵国北豊嶋郡高田村近傍

現在の新宿区西早稲田付近、東京専門学校というのは早稲田大学だ。いま大隈講堂があるあたりの「大隈邸」も見える。この迫力は5000分の1ならではだが、ブラウザではこんな狭い範囲しか見ることができない。もしこれが紙であれば、周辺まで広く見て把握することができる。


私がネット地図の表示範囲の狭さを不満に思うのは、ものごとを俯瞰してみる視点を取り去ってしまうからだ。上の地図でいえば、神田川は当時、どこからどうどうなって流れていたのか、ということを、マウスでドラッグすることも、ホイールで拡大縮小することもなく、視線を移すだけで把握できたら! いつもそう思う。

また、ネット地図は、サイトによってUIが異なることも大きなストレスだ。国土地理院のサイト内だけでも異なる。中の人が「電子国土、じゃなくて原始国土だ」といらだつのも当然である。


ウオッちずの危機?

今日、田代博氏のサイトに「地形図が危ない!」と題された一文が掲載された。実は、上記の清水峠の地図も、その話題に関係している。

送電線や発電所が消えている。

私は、国が制作する地図は、プレーンな情報が掲載されているものが望ましいと思う。目的別ではなく、国土がある姿そのものを描いたもの。また、一度盛り込まれた情報は、その情報が消滅したり、より重要な情報に干渉するものでない限り、落とすべきではないと思う。しかし、現在の電子国土基本図は、テロ対策名目で、そこに存在する大きな構造物をなきものにし、「不要だろうから、もうこの情報は掲載しないよ」という基準で歴史的な事項を切り捨てていく。やめてくれ。

地形図だけが送電線や発電所を消してなんになる? 過去に公開された膨大な地図、そして民間による地図や衛星画像。それらに写っているものを、地理院だけが消してどうなる?


なお、「送電線は、登山のランドマークになるから消すな」という意見もあるが、個人的には激しく同意するものの、本質ではないと思う。なぜならば、ランドマークが必要ならば、東京タワーやスカイツリーもそれなりに図示すべきという話になるからだ。地形図に掲載する条件は、ランドマークであるか否かではない。情報として掲載する価値があるか否かだ。



「地図ナイト」。地図を肴に酒を飲むことができる人が楽しむイベント。マニアだと言われようが、これはこれで楽しい。一歩引いた目を持っているからと行って偉いわけではない。写真好きがカメラ好きである場合があるように、地図好きは地図そのものも好きな場合もある。

イベントで、そんなことを考えた。



イベントでは、DAN杉本氏制作の「カシミール3D」を使用したスライドや話がいくつも出た。会場でも「カシミール3D」の本を販売していただいた。ご購入いただいた方、ありがとうございました。また、販売にご協力いただきました(財)日本地図センター様、厚くお礼申し上げます。

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