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20110423-01.JPG(ちょっと看板が簡素すぎやしないか…満員御礼なのに!)

4月23日(土)、東京カルチャーカルチャーで開催された『マッピングナイト2』に行ってきた。前回は昨年夏、自宅にいる必要があったので泣く泣くUSTで見ていて、なんとすごいイベントなのだと思って楽しみにしていた。

出演は、大山顕さん石川初さん渡邉英徳さん。大山さんは『工場萌え』『団地』『ジャンクション』はじめさまざまな「石ころ帽子をかぶっているもの」を可視化する方。石川さんはGPS地上絵師として、前日のテレビ番組『たけしのニッポンのミカタ』にも出演されている方。渡邉さんは『長崎アーカイブ』の方(などという乱暴な紹介で許してください)。

大山さんと石川さんのコラボ企画はDPZに「馬込馬」「うさぎ」のレポートがある。どっちも行きたかったのに行けなかった。石川さんは、私が担当である書籍『カシミール3D』シリーズにもご協力いただいており、ぜひお目にかかりたかった。



20110423-07.JPG内容は多岐に渡りすぎかつ密度が高すぎるので、後日出るカルカルのレポートに譲るが、おぼろげな記憶ではこう。

・土地の記憶~習志野埋め立て地のカーブ、いまのIKEA周辺にはこの50年間、常に集客施設が建っている。(大山さん)
・GPS地上絵(石川さん)
・長崎アーカイブプロジェクトのお話(渡邉さん)
帰宅ログ(大山さん)
・震災への備えと地図(石川さん)
・震災において「半径20kmの円」を地図で提供することと、現在の様子のマッピング(渡邉さん)
・「どこまで東京」から「どこからホーム」全員マッピング

3時間という、最初からオーバーするつもり満々の予定時刻を大幅に過ぎて4時間半使ってもまだ終わらない内容となった。




以下、内容に私が勝手に話の穂を継いで書き散らす。

●GPSでトラックログを取り続ける行為は「乗りつぶし」に似てくる

石川さんが自宅と職場を自転車で往復してみたときに、往路と復路でコースを変えていた。その気持ちはとてもわかる。ジョギングだって、同じトラックをグルグル走るよりも、街中を一周したほうが気持ちいいのと同じだ。でもそれって、鉄道の「乗りつぶし」にも似てるんじゃないか。

そんなことを思って、翌24日、自宅近くの気になる道路を歩いてみた。気になる道路で、ちょこちょこ行ってはいるのだが、「通し」で歩いたことはなかった。
20110423-map.jpg(DAN杉本氏のカシミール3Dで作成)

GPSに地図を放り込み、それを見ながらこうして歩いてみると、「次は円周ではなく対角線を歩いてみたいとか、この2.5万図には乗っていない道も歩かなくてはとか、そういう気持ちはたしかに「乗りつぶし」である。上記は500m四方もないのだが、自宅からの距離を含めて6kmある。自宅近くだけを塗りつぶすだけでも大変な作業だが、散歩のルート選びが楽しくなった。

通勤が地下鉄だということもあって、いままでは「出かけよう!」と思ったとき、つまり電車かクルマかバイクか自転車か、そういうときしかログを取っていなかったのだが、これからはとらなくてもGPSを持ち歩こうと思う。


●トラックログの記憶

これも、石川さんのお話で思いついたこと。石川さんは先日、まだ地図を表示できない端末(eTrex)にログが表示されているのを見て、自分は道路を歩いてるんじゃない、地球を歩いているんだ、という気持ちになったという(違っていたらスミマセン)。そう、ログは、GPSの衛星との相対的な位置関係(点)を結んだものだから、道路だろうが関係ない。地球の大きさが変わらず、GPS測量の原点も移動させないとしたら、いま取ったログを、1億年前の現地、あるいは1億年後の現地に置いても許されるはずだ。

そう考えると、道路を歩きながら端末の画面でログを見ているとき、ふと「道路ではなく、星の上を歩いている」という感覚になってきた。道の両側の建物が建て替えられようが更地になろうが、それ以前、道路ができる前は畑だろうが、ログはそこに置ける。地形が変わってしまった場合には、ログは地中にも海中にも潜る。谷になれば空を飛ぶ。自分の目が現実に見ている、晴れた春の青い空に、赤く表示されたトラックが見えてくるような錯覚に陥る。危険だ。

もっとも、出演者の方々はとっくにこんなことは看破されておられると思うけれど…。

20110423-map2.jpg(イメージ。下の赤い線をログとして描いたつもり()でも、1万年後に地盤が5m沈降してしまえばそのログは空中に残る()ことになる)

いやもちろん、「乗りつぶし」的にトラックログを見る場合は標高データを捨象して見てしまっているわけで、正確には高さも記録している。ただし、GPS測量では高さの値は緯度経度に比べてはるかに不正確で、また日本の地形図における「標高」は「海抜」を取っているため、本当に正確を期するならば緯度経度ほど簡単にはいかない。

海抜は、東京湾からその地点まで川を引き、東京湾が平均海面値になったときに水が来ている面、なので、地中に質量の大きな部分があればその面は歪むし、GPSはジオイドというそれとは異なる基準を用いている。しかもジオイドは測地系によって異なる。



などと書いてきて、これは、被災地では現実にこれから起きることなんだと気づく。ログを残していた築堤上の道路や高架橋が流される。まったく同じ場所に復旧しない場合は、そのログは永遠に再現できなくなる。石川さんが冗談めかして「いま歩いたログはいましか取れない、だからログを取ろうよ」みたいなことをおっしゃっていたが、そのとおりだ。

普通の人にはピンと来ないかもしれないけれど、ログを「写真」に置き換えて考えるとわかるだろう。写真は残されていても、なんの異常さもないし、誰もがやっていることだ。写真に撮った場所が、災害を含めてなくなってしまうなど、よくあることだ。それと同列に考えるならば、「ログを取ろうよ」というのは、不謹慎に楽しもうと呼びかけるわけでもなんでもない。


●地図の把握

「帰宅ログ」の話で、自分が日常移動している自宅と職場の位置関係すら把握していない人が多いのに驚く。興味がない、といえばそれまでだが、そうした人が、地図の話がしょっちゅう出てくる大山さんの読者だというあたりもまた興味深い。

などと言いながら、東京の南側、中央線より南側はきちんと把握はできていない。常に「練馬ナンバー」地域に住んできた弊害か。あてずっぽうに道路を歩いたら明後日の方向に出てしまうだろう。でも、だからこそ、地図を漫然と眺めるのが楽しい。「西武池袋線と新宿線は、所沢より向こうはこんなに平行しているのか」というのは、恥ずかしながらつい最近知った。


また、鉄道と、帰宅支援道路のあまりの乖離も驚いた。京王線とR20の親和性の高さも驚きだ。平行道路が内に等しい小田急沿線住民は、自分なりの把握をしておきましょう。



イベント中はいろいろ思いついたんだけれど、あまりに入力情報が膨大だったので断片化してしまった。思い出せないのはもったいないなあ。公式レポを見て思い出せばいいのだが。


余談。
鉄道と関係ないイベントで、鉄ではない人が「鉄ちゃん」をもちあげると会場は異様に沸く。プレゼンに不安のある方はぜひ取り入れてみてください。
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