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実家は「小学校前の文房具店兼駄菓子屋」だった。いまと違って子供たちもたくさんいた。10円を握りしめて何を買おうか10分も20分も迷っていく子供たちがたくさんいた。店番は母か祖母の仕事だったが、手を離せないときには私が出ていた。1980年頃、私が小学校中学年の頃の話だ。

大晦日も店を開けていた。午後を回ると、子供たちが来るようになる。掃除に飽きたか、邪魔になったか。けっこう駄菓子が売れる。それも夕方くらいまでで、午後7時くらいになると、もう誰も来なくなって2時間、という感じになるので「そろそろ閉めるか」といって店を閉めていた。


元日。
店は休みなのだけれど、午前中から玄関の呼び鈴が鳴る。子供たちだ。「今日は休みですか」。店が閉まってるんだから休みなんだよ!と言いたいところだけれど、鍵を開け、入れてあげる。お年玉をもらったからだろう、子供たちはちょっと贅沢に買い物をしていく。いつもは買えない、ポテトチップスなどの100円(当時)のお菓子を買ったりして。あとはおもちゃ。50円の飛行機や文房具。思えばその頃、駄菓子やおもちゃは100円以下のものがほとんどだった。300円のガンダムのプラモデルなどは、なかなか売れなかった。でも、毎日何十人もの子供たちが店に来て、10円、20円を相手に商売をして、もちろん大人もそれなりにものを買いに来ていた。商店街でもない、街の中にぽつりとある店が(副業としては)やっていける時代だった。


2013年になった。
このいまの状況を、30年後、「あのころはこうだった」と懐かしむ時が必ずくる。逆に、30年後がどうなっているかはちょっと想像ができないけれど、よい1年1年が重なればいいと思う。あらゆる人々の健康を願いつつ。

2013年1月1日
磯部祥行

 
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