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2014年2月16日追記

本書は問題のある訪問販売により作製されたものと推測されます。下記のプレスリリースが北海道庁より出ていますので、追記します。

『国鉄史という本の取材をしたい。 」などと目的を隠して消費者宅を訪問 し、高額な書籍の購入を勧誘してい た事業者に対し、業務の一部停止を命 じました。 』(PDF)


==
大著である。2kg以上ある。

本書は、国鉄に勤務した人々の文集といったものだ。…ということは入手した後で知った。
刊行は国鉄末期。同タイトルで地域別に分かれており、
・北海道
・東日本
・中部北陸
・関西
・九州
などがあるようだ。
また、発行元も、私が入手したのは「地方自治政経調査会」(富山県)だが、「地方人事調査会」(香川県)刊行のものもあるようだ。(「~ようだ」「~ようだ」というのは、ヤフオクでの出品情報からの推測から。他の地域分を買うつもりはない)

地域別に分かれているとはいっても、「国鉄全史」たる部分(「前付」と書かれている)は全冊共通で、カラー8ページ、モノクロ176ページ。どうも、他の書物からの転載のようだ。この部分、少なくとも写真はすべてそうだ。原版を製版したものではなく、複製である。そして「前付」に続いて「国鉄史」が展開する。本書はこうだ。
私が入手したこの本は関東編、中部編、東北・新潟編として、各鉄道管理局や現業機関の歴史が書かれている。「前付」+1248ページもある。

これらも、どうも各現場の内部資料、たとえば『新潟鉄道管理局三十年史』などの転載のようだ(その旨の記載がある)。まあ、資料としては誤転記がない限り、重宝するのかもしれない。写真は一部、「○○氏提供」とあるのでオリジナルのようだ。

そして、これがこの本の特徴であろう、現業のOBたちの業績紹介である。
これが約1000ページ分、ある。

氏名、住所、電話番号、元職、現職、生年月日、家族。そして「経歴」として、聞き書き的に、各人の紹介が書かれている。いかなる人生を歩んできたか、いかなる家族がいるか。

経歴は、大規模な現場の助役や小駅の駅長が最上級のようだが、ほとんどは駅職員、荷扱職員、検査掛、といった一現場職員である。

…史実の資料にはならない。おそらく全ページ読んでも発見はない。

巻末に「協賛」として氏名だけ掲載されていることからすると、…これは推測なのだが…このシリーズは、OBに「あなたの紹介記事を掲載する」と言って寄付を募り、寄せられた作文を元に、統一した視点で紹介記事を書いたものではないだろうか。リライトの仕事量は途方もないものと思う。さぞや苦労されたに違いない。

しかし、資料にはならない。残念な買い物だった。


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私が担当した本が、本日から書店に並んでいる。写真は神保町の書泉グランデ6階(許可を得て撮影)。

『駅Q』『列Q』。鉄道をテーマにしたクイズ本だが、たぶん、「これは楽しい!」と思ってもらえるはず。

いままで、鉄道クイズ本はありそうでなかった。作るのが難しかったのだと思う。問題を「Q:用語/A:その解説」とすれば、すぐにでも、だれにでも作れるのだが、そんなものが売れるわけがないと世の中の編集者は思っていたのだろう。私もそう思う。こんな本、誰か欲しいだろうか?

Q:キハ58に搭載されていたディーゼルエンジンの型式は?
A:DMH17H。(以下wikipeidaのコピペのような説明)

* * *

本書二冊は、『駅Q』の冨田さんが作成した問題をきっかけにして生まれた。こちらで多少の編集はしたが、最初から、問題は上記のようなテイストがいっさいなく、『駅名おもしろ大辞典』(夏攸吾著/日地出版)のような「楽しさ」に満ちあふれていた(意外なことに、冨田さんは同書をご存じなかった)。考えたこともないような観点で、「駅名」で遊んでいく。「駅名」であり「駅舎」や「駅の歴史」ではないことが、鉄道に詳しくない人も、あるいはものすごく詳しい人も楽しめる要素だと直感した。これはいける!

ならば、単体ではなく、シリーズ化したい。そこで、栗原景さんに『列Q』を依頼した。列車名をメインに問題を考えていただいた。こうした設問にはユーモアが必要で、その点、ユニークな問題も散りばめられている。

問題の例は、amazonをご覧いただきたい。
駅Q
列Q

冨田さんは、「鉄道コム」のスタッフの方。仕事とはまったく別に個人で駅のデータベースを作り、そこから駅名の漢字を集計したり、駅の数をカウントしたりしていることから、本書ができた。


カバーデザインは、『タイポさんぽ』で知り合った松村大輔さん。イラストはライター・イラストレーターの川辺謙一さんにお願いした。すばらしいカバーになった。

(関連項目)
『鉄道をつくる人たち』(川辺謙一著/交通新聞社)
タイポさんぽ(藤本健太郎著/誠文堂新光社)
『タイポさんぽ』刊行記念トークイベント「タイポがたり」
川口メディアセブン「かわぐちタイポさんぽ」


『駅Q』『列Q』どちらも、解答できなくても読み物としてもおもしろいはず。ぜひ。各冊定価780円。


米屋こうじさんの写真集が発売された。ほぼ同時に銀座のキヤノンギャラリーで写真展が開催された。オープニングパーティーもぜひうかがいたかったが、どうしても都合が付かず、その後もアレで、なんとか最終日に写真展にうかがった。

(撮影自由でした)

大きなパネルが並ぶ会場。
米屋さんのお好きな、アジアの鉄道風景…いや、アジアの、と形容するのは適切ではないかもしれない、「鉄道がある風景」が、そこにあった。拝見して思ったのは、「どれだけ、鉄道の近くにいたのだろう?」ということだ。

とにかく、鉄道のそばにいる。夜明け前から夜更けまで鉄道を見つめている。間にご飯食べたりビール飲んだりしながら。そうすると、ふと、その瞬間が舞い降りてきて、自然とそこに絵ができていた…そんな印象の作品ばかり。それに出会うのもまた、写真家のワザだと思う。(念のために書くが、偶然いいシーンに出会ったからこそ作品できあがった、などというくだらない話をしているのではない)

作品の色は、赤と、真っ青。どちらも印刷では表現しづらいような色。緑はすこしくすんでいる。写っている人々の肌は、褐色だから赤の印象を強める。そして、太陽光線。もし、米屋さんと行くアジアツアーなんていうものがあったら、なんとか工面して参加したいものだ。私も、こういうシーンに立ち会いたい。もっとも、写真など撮らないかもしれない。写真は米屋さんにお任せして、この目で、見たい。



さて、写真集。制作の過程は米屋さんのブログにアップされている。

鉄道憧憬


感想は…写真展のパネルとは別物だということ。写真集は写真集だけの作品世界になっているということ。当然といえば当然のことなのだが。

全体に、ネガで撮ったプリントを原版にしたかのような軟らかい色調なのは、意外だった。会場で米屋さんがおっしゃっていたのだけれど、写真展の作品が掲載されているわけではない。おそらく、この色調の雰囲気とこのサイズで見るからこその作品のセレクトと思われる。ページをめくるたび、そこに現れる人たちの表情に、読み手の心はほぐれていく。これこそスナップと呼びたい。

外国製のポストカードは、良質のスナップが多いけれど、それに通じるものがある。1枚1枚が切り離せて、ポストカードみたいに、机上に飾ったり、壁に貼ったりできたらいいのに。

そういう造りなので(と私は勝手に思っている)、大きなパネルで展示されていたバングラディシュの写真は収録こそされているが、失礼ながら、こちらはパネルの色調と大きさに軍配を上げる。そして、そういうパネルもまた「ほしい」と思わせてしまうのだから、こわい。いままで写真展はそこそこ見てきたけれど、「ほしい」と思ったのは初めてかもしれない。どれもすてきだったけれど…P53のWay home from school、がほしい!



写真集は、ハードカバーで2310円。安い。ジュンク堂池袋店2階に旧知の店員さんがいるのでそこで買おうとして言ったところ、なんと最後の一冊で、ちょっと傷んでた。だから取り寄せてもらい、先日、やっと入手した。いまはジュンク堂にもちゃんと面陳されている。

こういう本が、こういう世界が商業的に受け入れられるとき、やっと、鉄道趣味が、「それと意識しない文化」になるのではないかと思う。常々思っていることだけれど、鉄道趣味誌は「楽しい」が、ない。憧れも、ない。知識しかない。タコツボ化がひどいと思っている。(鉄道)写真家がめざすものと、鉄道ファンがほしがるものが違ってしまっている。ほどよい文芸作品がいっさい存在せず、ラノベと文芸評論しかない、みたいな感じ。それじゃダメだろ。これは、メディア側の問題だと思っている。なんとかしたい。



米屋さんのパネル作品には、これから仙台、大阪、札幌で会える。絶対に行くべき。

米屋こうじ写真展:I Love Train ~アジアレイルライフ~
2013年5月23日(木) ~ 6月4日(火)キヤノンギャラリー仙台
2013年6月27日(木) ~ 7月3日(水)キヤノンギャラリー梅田
2013年7月25日(木) ~ 8月6日(火)キヤノンギャラリー札幌

作品のいくつかは、米屋さんのサイトにも掲載されている。
http://www.geocities.jp/yoneya231/


スマホですみません。米屋さん、最終日、多くの方々に囲まれてお忙しいところ、やっとお話しできました。。。



※2016年1月、『されど鉄道文字』を読んで改稿。下線部は『されど鉄道文字』で判明した、私の誤認だが、そのままにしてある。後述の(C)(D)(E)は私は分けるべきと思うし、それを同じ「スミ丸ゴシック」として記述してしまうことには反対する。それは『されど鉄道文字 駅名標から広がる世界』(中西あきこ著)で述べる。

「鉄道文字のおはなし」という記事があるのを知ったので、パラパラとチラ見してそれなりにページ数があったから買った。ところが、体系だった記述になっておらず、多くのミスリードを招きそうだ。

「スミ丸ゴシック」という言葉と「書体」の概念を知ったばかりの人が、なんでもかんでもそれにあてはめようとしている、という印象。国鉄の書体を策定した方へのインタビューもあるのだが、「なぜその書体が制定されることになったか」という話がいっさいない。国鉄の書体はおろか、世の中の書体を誰が作っているか、看板のペンキ文字を誰が書いているか、そういう前提の知識がない、特に若い読者は、この記事で大きな誤解をしてしまうだろう。基礎と俯瞰を織り交ぜながら記事は書かれるべきで、編集者は、それが不足していたら指摘し、再構成すべきだ。



国鉄は、いくつかのオリジナル書体を持っていた。官庁(ではなく「公共企業体」ではあるが)らしく、ゼロからすべて自分たちでまかなおうとしたからではないかと勝手に思っているのだが、たとえば国鉄時代にはこんな書体があったのは、鉄道を知る人なら漠然と知っていると思う。

(A)車両の文字表記書体(1)機関車の形式記号等 例)「C62」「EF65」「DD51」という書体
(B)車両の文字表記書体(2)客車・貨車の形式記号等 例)「クモハ101」「ワム80000」という書体
(C)現在「国鉄方向幕フォント」として知られる書体
(D)行灯色の駅名標やホーム上屋柱(現在のJR東海の駅名標の平仮名書体に近い)
(E)Π型の駅名標に使われていた書体(こちらのサイトの「神足」


・ほか
(縦書きホーロー看板の駅名標の書体には(C)(D)どちらもある)

上記のうち、(C)が1967年に最初に制定されたスミ丸ゴシック、(D)が後年追加された(新たに追記された?)スミ丸ゴシックである。「スミ丸ゴシック」または「スミ丸角ゴシック」というのは書体のセットの名称なので、これ以外のものをそう呼んではならないと思う。これらの書体にも図面があった。その図面は鉄道ジャーナルやRailMagazine等で何度も公開されており、広く知られている。

現在は各社独自に書体を規定しており、駅名表記も車体標記もバラバラである。

なお、国鉄だけでなく、郵政省も独自の書体を持っていたし、引き継いだ日本郵政も独自の書体を改めて定めている。出版社では、写植時代、大手版元は独自の書体を持っていた。書体とは、そういうものである。



さて、以下は過去に読んだ本と自身の経験による記述である。私の思い込みによる誤りもあるかもしれないので、それを含んでご覧いただきたいし、誤りがあればぜひご指摘およびご教示いただきたい。なにしろこの手の話題はとても少ない。いきおい独自研究になってしまう。

本書の記事が恐ろしいのは、なんでも「スミ丸ゴシック」だと考えてしまうことである。そして、(C)(D)を区別していない。また、端部が丸い文字はすべて「丸ゴシック」に分類してしまう。写研の書体である「ナール体」は、たしかに丸ゴシックの派生なのだが、これを単に「丸ゴシック」と称するのは書体の話の記事ならば、ありえない。ナールは、ゴシックの端部を丸めただけの書体ではなく、総合的にデザインされた、とても優れた書体である。いまでも道路標識で多用されている。
この駅名標の写真がいつの時代のものであるか、それがとても重要だと思うのだが、仮に国鉄時代だとしたら、私がキャプションをつけるなら「稀に写研書体の駅名標もあった。これはナール体といい…」。JR化以降なら「JR化以降、写研の標準的な書体を使用するようになった。これはナール体といい…」。

国鉄時代の駅名標は、地域ごとに非常に強い個性があった。地元の看板書きが書いたのではないかと思っているのだが、非常に大きな地域的な偏りがある。ごくごく一般的に言って、町の看板屋が書く文字といういうのは角を丸めた太い文字がほとんど。なのに、そうした個性溢れる文字をすべて上の(C)(D)でいう「スミ丸ゴシック」を基準にして語り、「それ以前は丸ゴシック」と結論づけるのは暴論に過ぎる。私が30年ほど前に撮った狭い地域での数十の駅名標の写真をご覧になっただけでも、いかに個性に富むか、またいかに偏りがあるかがわかるだろう。昭和50年代後半になっても、まだ(C)(D)とは別個に、看板書きが「スミ丸ゴシック」などおかまいなしに書いていたのである。

また、駅名標は適宜塗り替えられていて、昭和40年代は、さらに前の世代の駅名標が多々残っていた。より地域色が濃かった。図らずもそれを記録しているのが、『駅名おもしろ大辞典』(夏攸吾著/日地出版)である。筆文字の駅名標も多数掲載されている。



もし「デザイン」として国鉄文字をの記事を作るならば、JR東海の須田寛初代社長が制定に関わった、というあたりを掘り下げるべきだろう。それを現在に継承するJR東海の見解も聞くべきだろう。また、JR6社の駅名標の標準形式の意図とそのデザイン的な比較もあっていいだろう。書名は『鉄道デザインEX』なのだ。

それ以外にもいくつもネタはある。たとえば東京メトロが現在のサインに置き換えたときにはパンフレットを発行し、そこには書体まで細かく指定してあった。あるいはそれ以前の営団地下鉄の書体、4550というのだが、それだけで本まで出ている。(こちらの記事に詳しい。新設計書体〈ゴシック4550〉 — 営団地下鉄用に設計されたサイン書体の資料集

この記事は、鉄道各社が腐心してきた書体・サインの歴史を知らないライターが思い込みでさまざまなものを混同し、そのまま書いてしまったように思う。本書には、この記事に限らず「サイン」の写真が出てくるが、それがどういう意図で作られているかは書かれてない。例えば「エキのナカ巡り探検隊」という記事では、サインやデザインのキャプションは「なかなかしゃれている」「しゃれた街灯」「目を引く」「俗に『修悦体』と呼ばれる独自のフォントを発見」「なんともシンプルなサイン」…路上観察にすらなっていない。

非常に残念な記事であり、かつ、ここに書いてある記事を鵜呑みにしてなんでも「スミ丸ゴシック」と言い出す人が出ないことを祈るばかりだ。

スミ丸ゴシックについては、こちらのサイトが非常に詳しい。この方に書いていただけばいいのに。
スミ丸ゴシックに関する研究




以下、ついでに記す。

JR東日本は、JR化当時、駅名標の書体を「ゴナ」に定めた。写研の書体である。時が経ち、駅名が改称され、新駅が造られ、駅名標を変更する際には「ゴナ」に酷似したモリサワの「新ゴ」が使われるようになった。PCで扱えるのが後者で、前者は対応していない(だから出版物からほぼ駆逐された)。現在はそういう仕事環境なので、いきおい「ゴナのようなもの」を使ったのだろう。新ゴは「似ている」ということで写研から訴えられている。

ちょっとどの駅かの記憶がないが、そうした書き換えの狭間に、メイン書体がゴナ、隣駅表示が新ゴになっている駅名標を見たことがある。慣れてくると一発でわかる。とくに「か」「さ/き」「り」などが見分けやすい。ぜひ。
P2210564.JPG鉄道ファンの多くは、車両の「形」のファンで、乗ることが好きで、旅客運輸に関わる人の話が好き、だと思う。運転士や車掌のエピソードはみんなが聞きたがる し、よく雑誌の記事にもなっている。でも、それとはまったく違う部分で鉄道と関わっている人たちがいる。そして、彼らがいなければ、鉄道は成り立たない。本書は、そうした面のごく一部だけ、四つの仕事について紹介した本だ。

川辺さんのお名前は以前から(以前は川辺芭蕉さんと名乗っていた)存じており、記事を拝見した印象は、僭越ながらきちんとわかりやすく説こうとしているな、というものだった。上の2冊のほか、学研の本があと2冊、家にあるはずだがちょっと出てこない。私などはそれなりに突っ込んだところから書かれた方が嬉しいのだけれど、本書は交通新聞社新書ということもあり、おそらく小学生でも、すんなりと得心できるように、丁寧に、丁寧に書かれている。

丁寧というのは、その工事や部品が持つ「社会的な」意味、それに携わる人の姿、鉄道会社や製造会社が見据える未来について、きちんと説明してあるということだ。そして、各社の現場の人物や事務方の人物まで、それぞれが自分の言葉で話しているのが伝わってくる。これは取材力のたまものだろうと思う。また、さりげなく挿入された海外の鉄道との比較などは、実際に体験しないとでてこないもので、これは机上で完結する鉄道ライターでは無理なことだ。こういう、「この人ならでは」の記述ができる著者は貴重である。

このご時世なので、取材もなかなか難しいはずだ。取材対象がOKをくれない場合も多かろう。OKが出ても、あれは見るなこれは書くな、とくに大企業である鉄道会社や、受発注の関係である部品メーカーなどは検閲というか、厳しいと思う。それでも、ここに登場した東京メトロ、関東分岐器、旭硝子の販売会社・AGCファブリテックと「外製拠点」ビューテック、東洋電機は、賞賛に値すると思う。各社、かなり上級の役職の人が取材に対応している。そういう人を引っ張り出せるのも、過去から取材を重ねている川辺さんの力なのだと思う。

* * *

惜しむらくは、丁寧さのさじ加減が実に難しいため、本書が紹介しているのが四つの仕事に限られていることだ。読者としては、全10章となるくらいのボリューム感、あるいは対象業務のまとまり感があれば、なおよかっただろうと思う。例えば、車両の機器で5章、運転業務設備で5章、などというように。

もっともこれは、交通新聞社が、最初から「鉄道車両部品編」「鉄道建設編」「鉄道業務用機器編」のように考えて設定すべきものだと思う。私が企画担当者なら、企画段階からそうする。いや、交通新聞社なのだから、雑誌に連載して、それをまとめるようにする。そのほうが取材申請も通りやすいし、版元にも著者にも還元があるからだ。

不思議なのは、本書のような内容を、老舗鉄道誌は採り上げないことだ。最近は『J-Train』が現場のグループインタビューを毎号掲載しているので、私としてはそちらを賞賛したい。鉄道誌というのは読者の関心に迎合するだけではなく、読者の関心を深める牽引役としての役割も必要なはずだ。いま、それができている鉄道誌は、RFでもRJでもRMでもなく、Jトレということになるのだろう。

願わくば、この続編、続々編を刊行して欲しい。書籍のための取材というのはスパンの長さもあって難しいとは思うが、交通新聞社は、ぜひバックアップをして、実現してほしい。

* * *

本書で取材している地下鉄有楽町線の千川短絡線。今週から…かな、使われている。私は通勤で毎日通るのだけれど、まだ、短絡線を通る日と通らない日がある。通るたびに、本書の写真を思い出すことだろう。

続編、期待しています。
次回はぜひ電気(電機ではない)の仕事の話を。
 


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